【シネマ羅針盤】なぜ実写邦画は『シンデレラ』に勝てなかったか? 「番宣」の限界で新たな模索
ディズニーが実写化した『シンデレラ』が快進撃を続けている。4月25日(土)の全国封切り以来、5週連続で映画興行収入ランキング1位をキープし、すでに約356万人を動員。累計興行収入は45億円を突破した(5月24日までの数字)。
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『シンデレラ』がヒット街道をひた走る理由以上に興味深いのは、「なぜ実写邦画が、『シンデレラ』に勝てないのか?」という純粋な疑問だ。同時期に封切られた『寄生獣 完結編』、思わぬ好調ぶりが話題の『ビリギャル』、シニア世代からの支持を集める『駆込み女と駆出し男』、人気小説を映画化した『イニシエーション・ラブ』も、ランキング上では公開週を重ねる『シンデレラ』を首位から引きずり落とすことができなかった。
だからと言って、邦画低迷だと決めつけるのは早計だが、昨年『アナと雪の女王』が引き起こした“地殻変動”の後遺症から、邦画界全体が抜け出せていないのも事実。以前なら、普通にランキングの首位に立てたはずの作品が、“アナ雪旋風”を前に軒並み辛酸をなめてから、早1年が経とうとするのだから、関係者は頭が痛いかもしれない。映画ファンの嗜好や鑑賞パターンまで変えてしまった現象のインパクトはそれだけ大きかった。
そんななか、気になるのは映画の出演者が行う“番宣”の効果だ。番宣とは「番組宣伝」の意味だが、最近は「映画の番宣」という言い方がされ、バラエティ番組などで「そう言えば、○○さん、映画が公開されるそうですね」「そうなんですよ、今度の映画は…」というやりとりをよく見かけるはず。普段なかなか呼べない俳優や女優をゲスト出演させたい番組側との利害が一致した日本的なシステムは近年、映画宣伝の主流となった。
ただ、テレビ業界全体が視聴率低下に苦しむなか、必然的には番宣の効果が薄れるのは当然の流れ。視聴者にも番宣に対する飽きが生じ始めた。映画の映像を1秒でもテレビに流そうと奮闘する宣伝担当の努力には、頭が下がるが、番宣の限界を向けたいま、新たな模索が始まりつつある。しばらく『シンデレラ』の好調が続きそうだが、6月6日(土)に同日公開される『トゥモローランド』と『予告犯』の対決は注目の大一番だ。
《text:Ryo Uchida》
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