【シネマモード】『ニュースの真相』監督が語る、アメリカのジャーナリズム
2004年、米国の大統領選の最中に、勃発したブッシュ政権を揺るがすスクープと、それに翻弄された人々の姿を描いた映画『ニュースの真相』。
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――この事件に興味を持った理由は何だったのでしょう。
「私はライターになりたいと思って育ったんですが、長年、ジャーナリズムなのか映画なのか、どちらがいいのかと考えながら育ちました。というわけで、ジャーナリズムには非常に魅了されていて、ニュースの作り方とかその舞台裏についての映画が大好きだったんです。なので、自分もそういうものが作れたらいいなと思っていたことがひとつ。もうひとつは、メアリー・メイプスさんの本にとても感動したからなんです。テキサスに行き、彼女の家族に会って、かなりの長い時間を過ごし、いろいろな話をしました。彼女は非常に強い女性で、世界のいわば頂点に居て、そこから引きずり降ろされた。その間、彼女がいかにして耐えたかということは、とてもエモーショナルな話だと思いました。そんな物語性と、自分の興味のあるニュースの舞台裏と、その両方が描けると思い、この題材を選んだんです」。
――映画はジャーナリズムではないですが、本作からは、犠牲を払ってでも伝えるべきことがあるという信念に基づいた “ジャーナリズムの本質”、つまりは最近なかなか感じることのできない“報道の良心”のようなものを感じることができました。伝える者の気持ちをダイレクトに語るということは、報道番組ではできないこと。映画ならではの表現ですね。監督が目指したものもそれだったのでしょうか。
「まさにそうです! まず、最初に私が目指したゴールは、メアリーとダンのストーリーをなるべく正直に、誠実に正確に伝えるということ。彼らの旅路というものをしっかり伝えるということでした。私自身、ジャーナリズムというのは非常に気高い仕事だと思っているんです。非常にハードワークで、あまりお給料も良くない。特に最近はあらゆるものが大企業化していったり、政府が圧力を加えたりすることによって、ジャーナリストが何かを伝えるということがどんどん危険になっていると思うんです。だから、尚のこと彼らに尊敬の念を抱いているんです。真実を伝えるということこそ本当の偉大なジャーナリズム。ジャーナリストは、真実を伝えるために危険をいとわない、非常に高貴な仕事をしている人たちだと思っています」。
――今も、リスクを承知で真実を追おうとする健全なジャーナリズムは、アメリカに存在すると思いますか?
「そう信じています。ただ、ストーリーを、ニュースを伝えるのは難しくなっているし、真実を伝えようとするレポーターたちが、ネットワークや周囲のサポートを得にくくなっているとは思います。まさに『60ミニッツ』が健全なジャーナリズムだったと思うけれど、そういう調査報道番組はどんどん減ってきていて、もっとエンターテインメント性のあるニュース番組もどきが増えてきて、いわゆるハードなジャーナリズムは減ってきていると思います。それは、だんだんネットワークが企業化してきているというのが理由だと思いますね」。
――今回映画で描かれた騒動が会った後、メアリーはTV業界を、ダンは「60ミニッツII」を去りました。その後、TVジャーナリズムに変化はあったと感じますか?
「あったと思います。だからこそこの話を描きたいと思ったんです。多分ダン・ラザーが番組を降板するきっかけになったこの騒動が、インターネットが有名な人を引きずり下ろした最初の出来事だと思うんです。彼は30年以上番組を続けていて、人々に信頼されてきた人ですが、2週間足らずのあいだにいろんなことが起こって、ネットワークの支持が受けられなくなり、降板に至った。この事件によってインターネットで誰かが騒げば、有名な人でも引きずり降ろされてしまうということ、それによってもともとのニュースの趣旨が曖昧になるということが起きるようになった。現在の主流はツイッターですよね。10何年前のメアリーやダンがやっていた時代とは全く変わったと思います」。
アメリカのジャーナリズムを変えたスクープ騒動を、意欲的に描いたジェームス・ヴァンダービルト監督。デビュー作とは思えない、完成度の高い心理描写はもちろん、大物俳優たちの競演を見事に演出したその才能に、ぜひ注目して欲しい。
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