■「クィア・アイ」ってどんな番組?
本作は、2003年~2007年までアメリカで放送され、エミー賞も受賞した大人気リアリティ番組「Queer Eye for the Straight Guy」(原題)のリブート版。ファビュラスな(とっても素晴らしい)5人のゲイたち、通称“ファブ5”が、自分の人生を何とかしたい、モテたい、変わりたいという男性たちを大変身させていく番組。オリジナルでは大都市ニューヨークで、ゲイではないストレートの男性だけを対象にしてきたが、今回は舞台を南部のジョージア州に移し、カミングアウトを考えているゲイの男性も取り上げられている。
また、オリジナルのショーのテーマが“寛容”なら「僕らは“受容”を目指す」と“ファブ5”は語っており、トランプ政権下でますます進む分断を、実にさりげなく、すてきな形でいさめつつ、番組の依頼者のみならず視聴者たちにも生きるヒントを与えてくれる。
待望のシーズン2では、なんと男性だけでなく、女性の変身のお手伝いもすることになるという。
■それぞれがプロフェッショナル!魅力的な“ファブ5”
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こうした変身番組は日本でも数あれど、「クィア・アイ」がひと味違うところは、“ファブ5”が変えるのは外見だけではないこと。南部の太陽のような軽快な音楽に乗せて、依頼人が何を求めているのか、どんな自分になりたいのかを、彼らの住まいに突撃し(「何でも触るんだね」と言われるほど!)、ライフスタイルを徹底チェック。ライフストーリーや人生観にまで踏み込み、コミュニケーションの中から不安や心配事、望みを引き出す。しかも、「イケてる僕らの真似をすれば大丈夫!」といった前提では決してないことがポイント。選択の余地や決断の機会を依頼者に与えながら、内面からの変化をもたらしていく。いわば、心の持ち方や生き方の自己改革を後押ししてくれるのだ。
そんな“ファブ5”はそれぞれに得意分野があり、魅力と自信に満ちあふれている。観始めたら、彼らをすぐに好きになってしまうこと間違いなし!
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アントニ(料理&ワイン担当)
オリジナル版の料理担当者のパーソナルシェフを務めていたこともあるアントニ。普段キッチンに立ったことのない人でも手軽にできるような、新鮮な食材を使ったレシピを手ほどきする。短編映画で主演を務め、海外ドラマ「ブラックリスト」にも出演するなど俳優としての顔も。Tシャツのセンスが抜群。
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ボビー(インテリアデザイン担当)
ロサンゼルスを拠点に活躍する、実績あるインテリアデザイナーで、縁の下の力持ち的存在。依頼者たちのどうしようもないお部屋を機能的かつ、快適に大変身させる。テキサス生まれ、ミズーリ育ち。教会に通っていたころ、ゲイを否定的に語られたことから「僕をゲイにしないで」と泣きながら祈ったこともあったそう…。
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カラモ(カルチャー担当)
2004年、MTVのリアリティ番組「The Real World」(原題)フィラデルフィア版に、初めてのオープンゲイのアフリカ系男性として出演。数々の番組でホストとしても活躍しており、依頼者の懐に入っていく手腕はさすが。2人の子のパパ。彼が南部での黒人差別や白人警察官に対する思いを告白した回は、最も胸打つエピソードの1つ。
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ジョナサン(美容担当)
人気スタイリスト。どんなにヒゲ伸び放題のオジサマもセクシーに変身させる。コメディサイト「Funny or Die」で、人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」をゲイの視点から語る「Gay of Thrones」(原題)のコメンテイターを務めていることでも有名。フィギュアスケート好き。
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タン(ファッション担当)
英国生まれ、パキスタン系のファッションデザイナー。ファッションブランド「Kingdom and State」のデザインを担当している。ファッションにあまりお金をかけられない依頼者に、選びやすく、着回ししやすい洋服をチョイス。しかも、ほめ上手。「5年付き合った彼にフラれた。僕が身だしなみを整える努力を怠ったから」と告白し、依頼者の心を開かせた。
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■きっと分かり合える…名言が次々飛び出す変身へのプロセス
本作の舞台は、保守的な考えを持つ人が多いといわれるアメリカ南部。トランプ支持者の白人警官や、6人の子どもを持つ敬虔なクリスチャンもいる。まず印象的なのは、“ファブ5”の偏見との向き合い方だ。
本作による大変身がきっかけで、元妻と再婚したことが伝えられた第1回に登場したトムは、同性婚をしたパートナーがいると話したボビーに「君は夫? 妻?」と尋ねたことがある。すると「それは偏見!」「どちらが主導権を握るかなんて誰でも微妙。女性的か男性的か分けられるものじゃない」とジョナサンがきっぱり。
先日最終回を迎えた日本のドラマ「おっさんずラブ」でも同様に、春田と部長の結婚式では「どっちがウエディングドレスを着るの?」と聞かれていたが、「2人ともタキシードでいいじゃない」と幼馴染のちずが応じるシーンもあった。まさにそのとおりだ。
また、第3回では、カラモが運転中に白人警官に呼び止められ、一瞬、車内に緊張が走ったことがあった。実はその警官は依頼者コーリーの友人だったのだが、そのときのことをコーリーとカラモは後で話し合っている。「黒人を不当に扱う警官は全員じゃない。固定観念はよくないよね。許されないこと」とコーリーが率直に話すのを聞いて、カラモ自身も「偏見が払拭された」と打ち明ける。こうして、心を開いて語り合い、それぞれを尊重し合う彼らの姿は、いまのアメリカ、そして日本にも必要な“受容”そのもの。
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さらに、第4回では、父を亡くした後、支え合ってきた継母にカミングアウトしたいゲイの青年AJが登場する。いかにもゲイ“らしい”服装は避けてきたというAJに、彼らは自らの経験に則した言葉で語りかける。「性の問題は二の次。大事だけれども、自己表現の第一手段じゃない」というアントニに、「保守的な自分を無理して演じる必要はない」と語るタン。自分らしさを表現することに、臆病にならないでと伝えていく。「君のカミングアウトに誰かが勇気をもらえるんだ」と話す、同じアフリカ系のカラモの言葉も象徴的だ。
祝!シーズン1・第4回に登場したAJは同性パートナーと結婚したらしい!
“ファブ5”が語る言葉は決して押しつけがましいものではなく、いずれも自らの経験に裏打ちされたリアルなものであり、それによって彼らは依頼者の心の底にある思いに自ら気づかせていく。依頼者たちはそれぞれ喪失感や挫折、鬱屈した気持ちを抱えており、自分に正直に生きられないことに葛藤が生じている。そして、それが衣食住にも現れてしまっている。
特に第5回に登場した、結婚式での失敗を長年引きずり、6人の子どもの世話と仕事に追われていたボビーは、タンから「いままで見た中で一番悲しいクローゼット」、ジョナサンからも「1日3分だけでいいから自分に使ってみない?」と言われる始末。彼と彼の家の変貌ぶりはお見事で、最後には披露宴のやり直しも大成功!
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“ファブ5”は全員が全員、こうして相手の心情をくみ取り、気持ちを聞き出すことが本当にうまい。その陽気さもあってカウンセリング効果は絶大で、依頼者たちに自己肯定感や自尊心、プライドを取り戻させていく。
番組の最後には、すっかり生まれ変わった依頼者たちの新たな1歩を“ファブ5”がVTRで見守るのだが、自分自身を取り戻し、相手を受け入れ、自分を受け入れた彼らを見る5人も感動しきり。ときには涙を見せて喜ぶこともあり、それを見て視聴者も涙したり…。
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「クィア・アイ」を見た後は、こちらまで「今日は自炊してみよう」「部屋の模様替えをしよう」「思い切ってあの服を買ってみよう」「新しい仕事にチャレンジしてみよう」といつのまにか前向きな気持ちになっている。本作をこれからチェックする、という人も、彼ら“ファブ5”からこのポジティブパワーをもらってみては?
Netflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ」シーズン1は配信中、シーズン2は6月15日(金)より全世界同時オンラインストリーミング開始(各・全8回)。