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【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 「スプラッシュ」「WF」の特別上映作品紹介

10月25日(木)に開幕する東京国際映画祭の作品紹介、今回はふたつの部門内で「特別上映」される作品を紹介します。

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『21世紀の女の子』(c)21世紀の女の子製作委員会
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10月25日(木)に開幕する東京国際映画祭の作品紹介、今回はふたつの部門内で「特別上映」される作品を紹介します。

『21世紀の女の子』(オムニバス)


「日本映画スプラッシュ」部門で特別上映するのが、山戸結希監督が企画プロデュース、そして自らも監督として参加する短編オムニバス作品『21世紀の女の子』です。

昨年からの世界の流れを受け、今年のカンヌ映画祭では女性監督による作品数の少なさを指摘する動きがあったことは記憶に新しいところです。映画祭の作品選定業務において、監督の性別を意識して選定することはないのですが、もし女性監督が作品を製作しにくい環境があるとしたら、問題視すべきであることは言うまでもありません。山戸監督は強い問題意識を抱いて若手女性監督たちが約8分間の短編を手掛ける今回の企画を立ち上げ、強力なメンバーを揃えて作品を完成させました。僕もその姿勢に大いに刺激を受け、「特別上映」として応援し祝福することとなった次第です。

参加監督は14名(エンドクレジットのアニメーション監督を加えると15名)です。次代の日本映画を担う、実に多彩で魅力的な監督たちが揃いました。まさに気鋭の存在ばかり、壮観、圧巻です。以下、上映順に監督を紹介していきます。

・山中瑤子監督『回転てん子とどりーむ母ちゃん』
山中監督は『あみこ』が昨年のPFFで受賞し、今年のベルリン映画祭にも選出された存在です。『あみこ』は現在公開中で観客から驚きの声が上がり続けており、まさに次代を担う才能のひとりとして脚光を浴びています。

・加藤綾佳監督『粘膜』
加藤監督は『おんなのこきらい』(14)が「Moosic Lab(ムージック・ラボ)」で4つの賞を受賞して話題をさらいました。新作長編『いつも月夜に米の飯』も今年公開され、勢いに乗っています。

・金子由里奈監督『projection』
金子監督の短編『おいしいコーヒーの作り方』(16)が現在You Tubeで視聴可能です。長編作品はまだこれからのようですが、等身大の物語作りに期待が高まる存在です。

・枝優花監督『恋愛乾燥剤』
枝監督は早稲田大学の映画祭で受賞を重ね、「Moosic Lab2017」で観客賞を受賞した『少女邂逅』が今年劇場公開され、リピーター続出のスマッシュヒットが記憶に新しく、早くも次作を期待する声が聞かれる存在です。

・東佳苗監督『Out of fashion』
東監督は服飾デザイナーとして自身のブランドを立ち上げている才人。過去に手掛けた短編『My Doll Filter』はYou Tubeで見られます。異業種をつなげるセンスが刺激的です。

・井樫彩監督『君のシーツ』
井樫監督は東京学生映画祭に出品した中編『溶ける』(15)が大好評を博し、カンヌ映画祭の学生部門にも選出されました。初長編作品『真っ赤な星』が今年12月の劇場公開を控えるまさに気鋭の存在です。

・竹内里紗監督『Mirror』
竹内監督はTAMA NEW WAVE映画祭や田辺弁慶映画祭で受賞を重ね、特集上映が新宿テアトルで組まれたほどの実績者。新作長編『みつこと宇宙こぶ』が今年の5月に劇場公開され、勢いがあります。

・ふくだももこ監督『セフレとセックスレス』
ふくだ監督は日本映画大学で学び、卒制作品『グッバイ・マーザー』がゆうばり映画祭に選出。そして小説家としても評価される実績を持つ存在です。業態をまたぐ才能に注目です。

・安川有果監督『ミューズ』
安川監督は長編1作目『Dressing Up』(13)がTAMA NEW WAVE映画祭等で受賞し、15年には劇場公開を果たしています。昨年「SHINPA」企画『永遠の少女』を監督して東京国際映画祭にも参加、大いに盛り上げてくれました。

・首藤凜監督『I wanna be your cat』
首藤監督は『また一緒に寝ようね』(16)がPFFで受賞したのち、『なっちゃんはまだ新宿』がMoosic Lab2017で3つの賞を受賞、同作は昨年末に公開を果たし、注目の成長株です。

・夏都愛未監督『珊瑚樹』
夏都監督は三澤拓哉監督『3泊4日、5時の鐘』(15)に女優として参加、杉野希妃監督作品『雪女』(16)の現場でスタッフとして経験を積み、現在初長編監督『浜辺のゲーム』の完成が待たれる新しい才能です。

・坂本ユカリ監督『reborn』
坂本監督は『おばけ』(現在青山シアターで鑑賞可能)がMoosic Lab2014に参加して2賞を受賞、MVも多く手掛け、先月公開の『食べる女』にはアシスタント・プロデューサーとしても参加している期待の存在です。

・松本花奈監督『愛はどこにも消えない』
松本監督は大学在学中に製作した『脱脱脱脱17』がゆうばり映画祭で受賞、劇場公開の際にも大いに話題となりました。短編『過ぎて行け、延滞10代』で昨年の「SHINPA」企画にも参加、映画界の熱い注目を集める若手です。

・山戸結希監督『離ればなれの花々へ』
山戸監督は紹介に及ばないと思いますが、大学時代に作った作品で一躍脚光を浴びたのち、初の商業長編映画『溺れるナイフ』(16)で見事ヒットを飛ばし、現在若者の支持を最も集めている存在であると言って過言ではありません。新作長編を準備中との情報もありますが、最も次作が楽しみな映画監督でもあります。本プロジェクトに賭ける意気込みも荒く、映画界における存在感がさらに増していくことは間違いありません。本当に注目の存在です。

・玉川桜監督
人気イラストレーターであり、今作の「エンドロールアニメーション」を手掛けています。このブログに載せたメイン・イメージ画も玉川さんによるものです。

以上、参加監督の紹介でした。名前を知られるようになり始めた監督が多く、絶妙のタイミングでの招集という印象を受けます。今後期待したいと思っていた名前がことごとく参加している感じです。日本映画の動向に注目している方にとっては、取る物もとりあえず上映に参加しないといけないでしょう。エポックメイキング的な企画、そして上映になるはずです。ご期待下さい!


『家族のレシピ』(シンガポール・日本/エリック・クー監督)


『家族のレシピ』
さて、がらりと趣向を変えます。「ワールドフォーカス」部門内で「特別上映」するのが『家族のレシピ』です。こちらはシンガポールと日本の合作映画で、監督はシンガポール映画界の名匠、エリック・クーであります。

2005年の『一緒にいて』を当時の「アジアの風」部門で上映して以来、エリック・クー監督は東京国際映画祭との縁も深い存在で、2014年にはコンペの審査員も務めて頂きました。これまでのご縁を重視し、新作を「ワールドフォーカス」内の特別上映と位置付けることとしました。

さて、前作の『Wanton Mee』(16)は料理批評家を主人公にしていていましたが、新作もラーメンが重要な役割を果たします。どうして最近フード映画が続いているのか、是非監督が来日した際に聞いてみたいところです。

原題を「Ramen Teh」というのですが、この「ラーメン・テー」というのは「ラーメン亭」ではなく、日本のラーメンと、シンガポールの名物スープ料理「バクテー」を掛け合わせた新料理として劇中に登場する「ラーメン・テー」を指しています。日本のラーメン店で働く青年がシンガポールのソウルフードとの融合料理を考える中で「ラーメン・テー」にたどり着くという物語なのですが、邦題を「ラーメン・テー」にすると通じにくいかもしれないので、思い切って『家族のレシピ』にしたという配給会社の判断に映画宣伝の難しさを見る思いです(そして冷静な判断だと思います)。

それはともかくとして、本作はとても自然な形でシンガポールと日本が結びつき、理想的な合作映画であるとの思いを抱かされます。高崎で父親の経営するラーメン店を手伝う青年は、幼少時に亡くした母の思い出を追ってシンガポールに渡り、様々な出会いを経て、家族のルーツに接していきます。そして家族の物語を発見していく青年は、同時にチキンライスやバクテーにも出会い、観客も心と食欲を刺激されるのでした。

世界的な映画監督であるエリック・クーは、当然ながら日本の過去の歴史にも触れ、単なる海を越えた家族の物語に終わらせることはしません。その姿勢が作品に奥行きを与え、こちらも厳粛に相対しようという気になります。観客は青年に感情移入し、過去への折り合いを付けながら未来への期待を共に掴んでいくでしょう。心に爽やかな風がそよぐヒューマン・ドラマであります。

主演の青年役に、東京国際映画祭でも毎年何かとお世話になっている斎藤工さん。エリック・クー監督と斎藤さんが組んでいるのはワクワクします。監督齊藤工も楽しみですが、役者としても外国監督作品にたくさん出演してもらいたい存在です。そして青年が頼るシンガポール在住のフードブロガー役に松田聖子さん! 驚きのキャスティングですが、とてもナチュラルな演技で映画とシンガポールに溶け込んでいます。必見です!

そして、ラーメンもバクテーも、その他登場するフードの数々も、とっても美味しそうでお腹空くこと必至です。上映後に飛び込むべきラーメン屋さんやアジアンレストランの場所を事前にチェックしておくことをお勧めします!

《矢田部吉彦》

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