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【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day5

29日、月曜日。8時半起床、外に出ると美しい晴天。昨年は雨と台風に見舞われたことを思い出すと、今年の天気は本当に素晴らしい。

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『氷の季節』(c)2018 TIFF
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29日、月曜日。8時半起床、外に出ると美しい晴天。昨年は雨と台風に見舞われたことを思い出すと、今年の天気は本当に素晴らしい。

9時半に事務局入り、10時15分から「日本映画スプラッシュ」の『あの日々の話』の上映前舞台挨拶司会へ。玉田真也監督、山科圭太さん、近藤強さん、木下崇祥さん、野田慈伸さん、高田郁恵さん、菊池真琴さん、が登壇し、一言ご挨拶。劇団を主宰する玉田監督に、ご自分の戯曲の中から本作を映画作品にしようと思った理由を尋ねると、ひとつのシチュエーションでパワーランスが変わっていくような映画が好みで自作の中では本作がそれに一番近いから、とのお返事。これから映画を観るというタイミングで、これはとても入りやすいコメントだ。上映前の舞台挨拶コメントとしては最高。

舞台挨拶終わり、事務局に戻って所用をいくつか。11時半にランチ弁当が到着したとの連絡入り、取りに行く。麻婆丼! もう微笑みが止まらない。チンして頂いて、ちゃんと辛い! 力が湧く辛さ! 旨し!

12時に劇場に戻り、『あの日々の話』のQ&A司会で、玉田監督に作品について細かく伺う。演劇と映画の共通点や相違点にはとても興味を惹かれる。監督は芝居を付けることに専念し、撮影とカット割りはキャメラマンに任せたという作り方を採用し、通し稽古を数回繰り返す中でキャメラマンが絵を決めて行ったという。演劇版と同じ俳優が映画版に出演しており、全員が何度でも同じ芝居を繰り返すことが出来る域に達しているので撮影スピードも速くなったという説明も面白い。

演劇と映画や密室劇の撮り方という製作面の話も聞きたいし、内容となる大学生の生態の普遍性についても聞きたい。時間が足りない。パワーバランス転換の妙についても、もっと聞きたかった。山内ケンジ監督の『アット・ザ・テラス』はお好きですか?と尋ねると、「スタッフは参考にしていましたが、自分は見るのを忘れてしまいました」との答えで、意識したでも好きでないでもなく「忘れた」ととぼけるところに劇作家の矜持を垣間見たようで僕は心の中でニヤリ。玉田監督、興味の尽きない才能。映画監督としても演劇人としても追いかける決意を強くする。

そのままシネマズ内でスクリーンを移動し、12時55分からコンペの中国映画『詩人』のQ&A。これが最高の幸せに満ちた素晴らしい雰囲気のQ&Aになった! 前半戦のベスト雰囲気候補かも。

リウ・ハオ監督と、主演のソン・ジアさんが登壇。最初に質問された方の丁寧な姿勢に監督がまず姿勢を正し、そして2番目の(TIFFではお馴染みの)滋賀県から来て下さるお客さんが情熱的なパフォーマンス質問で劇場を大いに温めて下さり、もう監督とシン・ジアさんは大層感激され、僕もちょっとウルウルしてきてしまった。さらに、シン・ジアさんの大ファンで、上海からシン・ジアさんとこの映画を観るために来日したと語る妙齢のご夫婦が質問され、盛り上がりは最高潮に。こういう筋書きのないドラマチックなQ&Aが時おり訪れるから映画祭はたまらない。もっとも、作品の理解を助けるQ&Aというよりは、国際交流の場に近い。素晴らしい。

よかったなあ、と興奮を鎮め、今年から始めたプライベート・インタビューを行うべく14時にフィルム・カフェへ。

まず『テルアビブ・オン・ファイア』のサメ監督にじっくり話を聞く。パレスチナ出身でイスラエル国籍のサメ監督が映画監督になった経緯からはじめ、業界の現状や助成金の仕組み、そして何よりもパレシチナ人としてイスラエルで映画を製作することの難しさを包み隠さず話してくれて、僕は目から鱗がボロボロ落ち、曇っていた視界が一気に広がった気がした。かなり貴重な話をしてくれたので、オフレコかどうかを随時本人に確認しながら、近日中にまとめてアップしてみたい。

続いて『翳りゆく父』のガブリエラ監督とプロデューサーのロドリゴさんにブラジル映画界の現状を伺う。ブラジルでは大統領選挙が昨日行われ、その結果が映画業界に与える影響を憂慮している旨の話から始まり、インディペンデント映画業界の現状、そしてホラーテイストのドラマがブラジルのトレンドとなっていることについて、ガブリエラ監督と同志たちの繋がりに関してなど、これまた面白過ぎる。

映画祭に来日してもらって食事会で話をするのと、インタビューという形でじっくりと話を聞くのとでは、あまりに得られる情報量が違うことを今更ながらに発見して本当に情けない。しかし何事も遅すぎるということはないということで、身を削ってでもこれは継続していこう。

15時45分にインタビューを終え、16時からスプラッシュ部門の『僕のいない学校』の上映後Q&A司会へ。ここでプチ問題が発生。上映前の舞台挨拶では別の方に司会をお願いしていたのだけど、上映前の舞台挨拶が予定より12分おしてしまい、結果全体の進行が12分おし、従ってQ&Aの終了時刻も当初予定より12分遅れることになった。それ自体は大したことではないのだけど、5分刻みくらいで動いている僕個人のスケジュールとしては、12分遅れると次の司会に間に合わない。しかし今から交代を見つけることはできないし、何よりも僕が日原監督と話がしたい。同僚と相談し、僕が司会を始め、Q&A途中で同僚に司会を引き継ぐことにした。

見苦しい形になってしまい、日原監督と観客のみなさんにこの場を借りてお詫び致します。

『僕のいない学校』を見た人であれば、作った人と語りたい気持ちになるのは分かってもらえるはず。日原監督が自らの経験と危機感を注ぎ込んだ渾身の傑作だ。そして嶺豪一さんのキャラクターと演技に心酔する作品でもある。教育はビジネスなのか、さらに、映画は終わっていくのかというリアルな問いを重量級のボディブローのように叩き込んでくる作品だ。

日原監督の真摯なメッセージ(あるいは魂の叫び)でQ&Aはスタートし、主要人物のキャラクター作りや裏話を披露してくれる。明るい話題もあれば、シリアスな話題もある。両面を持つ作品なだけに、Q&Aも明るくなったりシリアスムードになったりするのが刺激的だ。映画は完成したけれども、日原監督の戦いはまだ始まったばかりだ。僕は全力で応援したい。

というわけで前述の交代オペレーションが実行され、Q&Aを中座してスクリーン移動して16時40分からコンペの『アマンダ』Q&A司会。ミカエル・アース監督は流れるように回答をする。アーティスト的な気難しさはなく、かといって親しみやすさを強調することもなく、本当に『アマンダ(原題)』の雰囲気のような静かな温かみを備えた人だ。アマンダのキャスティングや演技指導について多く語ってくれて、そしてテロに見舞われたパリを舞台とした理由、英国女優を起用した理由など。ステイシー・マーティンのフランス語が音楽的でいいのです、という答えが面白い。

『アマンダ(原題)』を見た人で監督の世界に魅了されない人はいないはず。来年の公開に向けてバズっていけるように盛り上げたい。と思いつつ、監督との付き合いが継続していくことを願うばかり。監督は明日帰国してしまうので、短期間でも来日してくれたことに深く感謝して、残念ながらお別れ。もうお別れの時間が来るなんて、永遠の時間にも思える映画祭は、実は一瞬の出来事でしかないのだ…。

続いて17時25分からスプラッシュ部門『海抜』の上映前舞台挨拶司会へ。高橋賢成監督、名取佳輝さん、阿部倫士さん、佐藤有紗さん、奥田誠也さんが登壇。高橋監督からのコメント受け、大学の卒業制作作品であるが商業映画と同じ作り方をしているので、そういう目で見てほしいと観客に伝えて上映へ。

事務局に戻ってパソコンに向かい、有名店(名前失念…)のから揚げ弁当を頂いて至福。

劇場に戻り、19時00分から『海抜』のQ&A。若さで注目を集める『海抜』だが、若いだけで注目を集められるわけがない。性暴行の非道さ、それに関わった人たちの狂った運命という主題の深刻さが客席に届いたことが感じられる。ビジュアルの鮮烈さを指摘する観客もいて、若い監督の才能を目撃した興奮が伝わってくる。

監督の志の高さもさることながら、序盤のレイプシーンに対する監督の心構えに関するコメントが興味深い。暴行シーンをダイレクトに見せないことを評価する一方で、実は描きたかったが大学からストップがかかったような事情があったのかという質問に対し、大学の介入は無いし、もともと直接的に描くつもりはなかったというのが監督の答え。むしろ、現場の熱に浮かれて自分が過剰な描写を求めようとしてしまったら、殴ってでも止めてくれと事前にスタッフに頼んでいたという。これぞ正しい学生らしさではないか。いや、この信念ひとつで、学生監督を超えているのが分かろうというものだ。高橋賢成、台風の目になるか!

19時半に終わり、急ぎ足でEXシアターへ移動し、19時40分からコンペの『翳りゆく父』のQ&A司会へ。これまたとても暖かく楽しいQ&Aになった! ガブリエル監督と観客のホラー映画談義という展開となり、同好の士たちが盛り上がって楽しい。ともかく、ゴーストやゾンビという単語を聞いたときの監督の嬉しそうな顔といったら! そして、本当にブラジルの新しい波は面白いので、昼のインタビューと合わせてまとめなおすつもり。

20時15分に上映終わり、ヒルズ内のバーに移動。20時半~22時半まで、スプラッシュ作品を中心にした日本映画監督とのプライベート的カジュアル交流飲み。アジア部門の審査員の山下監督も遊びに来てくれて嬉しい(スプラッシュ部門の審査員の入江監督にはさすがに声をかけられない)。みなさんと交流し、有意義な時間。僕はもちろんウーロン茶。

22時40分にEXシアターに移動し、23時にコンペのデンマーク作品『氷の季節』のQ&A司会へ。マイケル・ノアー監督も、フランスのミカエル・アース監督やイタリアのエドゥアルド・デ・アンジェリス監督などと並んで僕が数年前から招聘したかった監督のひとりだ。本日到着したばかりで、登壇2分前に初顔合わせ。

マイケル監督はハードな現実を見応えのある完成度の高い作品に仕上げる実力派監督で、おっかない人に違いないと想像していたのだけど、登場したのはやんちゃというか、茶目っ気のあるナイスな方でびっくり。安心しました、と壇上で挨拶すると、「よく言われるのですよね。ハードな映画を撮っているから普段は軽いのかもしれませんね」とのこと。プロデューサーの方2名が同行し、チームワークの良さが伺える。

Q&Aも盛り上がり、作品も大好評だったのだけど、詳細は後日。限界が近づいてきた…。あ、そういえば、フォトセッション時に監督たちが僕を一緒に写真に入るように誘ってきた。この仕事を初めて結構長くなるけど、これははじめて。断るのもいやらしいので、素直に入ることにした、というのがこの1枚。

Q&Aが終わり、立ち会ったサイン会が終わって0時。

それから、今年はゲストに忘れられない東京の一夜を経験してもらおうと、カラオケナイトが企画されていたので、顔を出す。やはり顔を出さないわけにいかない。0時半に会場到着。Q&A司会はいくらやっても平気だけど、カラオケナイト用の体力は温存していないので、到着したときにはぐったり。しかし、カラオケというのは本当に不思議な空間で、だんだんと元気になってくる。なんなんだこれは? ゲストもめちゃ盛り上がっているので、その多幸感が元気をくれるのかな?

僕はカラオケは2年に1回行くか行かないかくらいだけど、たまに来るとやっぱり楽しい。あの人があんな歌を!とちょっと書けないけど、意外な展開もあって盛り上がる。それにしてもウーロン茶でカラオケは経験がない。ああ、ビールが飲めたなら…。まあ、しょうがない。いろんな国の監督たちを盛り上げながら、僕は1曲だけオアシスのワンダーウォールを歌って、2時過ぎにフェイドアウト。

2時半に事務局に戻り、夕方と同じ焼き鳥弁当を飲み込み、4時半まで仕事して、さすがにもう無理。あがります!

《矢田部吉彦》

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