■最愛の夫を亡くした女王が出会ったのはインドの青年だった
ジュディが『Queen Victoria 至上の恋』に続き、20年ぶり2度目のヴィクトリア女王役を演じた本作。1887年、女王即位50周年記念式典で記念金貨の贈呈役に選ばれた若者アブドゥルは、英領インドからイギリスへとやってくる。最愛の夫と従僕を亡くし、長年心を閉ざしてきたヴィクトリア。そんな彼女が心を許したのは、王室のしきたりを無視し、真っ直ぐに自分へ微笑みかけてくるアブドゥルだった。
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身分も年齢をも超えた強い絆で結ばれていく2人だったが、周囲はそんな“君主と従者”の関係に猛反対。英国王室を揺るがす大騒動へと発展していく! 息子エドワード7世により、歴史から消された驚きの“真実”。いま1世紀もの時を経て、女王の晩年を輝かせた秘密が明かされるーー。
■ウエディングドレスの元祖となった女王
女王即位から3年後、同い年の知的なアルバートと運命的な出会いをし、一目惚れをしたヴィクトリア。結婚を決意した彼女は、当時男性からのプロポーズが当たり前だった時代にも関わらず、20歳で自らアルバート公にプロポーズ! 晴れて想いを叶えた彼女は、白のサテンに幅の広いレースの段飾りとオレンジの華の飾りをあしらい、まさに“純白”なウエディングドレスを着用する。現代では“無垢”なイメージとして純白のドレスが主に選ばれているが、それを当時の上流階級に流行らせたのはヴィクトリア女王だった。
さらには、新婦のサポート役であるブライズメイドのドレスもヴィクトリア自らスケッチするこだわりよう。そんな彼女は“ウエディングドレスの元祖”と評されている。さらに夫アルバート公に、ウエディングドレスに身を包んだ自身の自画像をプレゼントしたともいわれる。「淑女であれ」と声高にいわれた時代。ヴィクトリアは公務に就く者でありながら、情熱的な想いを忘れない、常に時代の先を行く女性だったのだ。
■最愛の夫の死の後、40年にわたり喪服を着用
ヴィクトリア女王は、最愛の夫アルバート公が亡くなると、約10年もの間、公の場から姿を消した。この間、市民の間でも喪服や喪章を着用するのが主流となっていく。その後、残りの生涯40年を喪服で過ごすヴィクトリア。本作でもその当時の女王や宮廷の女性たちの姿が映し出される。喪服を纏いながらも、品のある華やかさ・女性らしさを忘れないヴィクトリアはまた、喪服に合うジュエリーを発展させた人物ともいわれている。
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■衣装は第2の主役、その立役者はフリアーズ監督作の常連デザイナー!
衣装を担当したコンソラータ・ボイルは本作で第90回アカデミー賞にノミネート。フリアーズ監督作『クィーン』『マダム・フローレンス!夢みるふたり』でも2度にわたりアカデミー賞&英国アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされ、確固たる評価を得ている。
彼女が参加する作品は実話を基に描かれるものが多く、実際の出来事とフィクションをうまく織り交ぜる要素として衣装が大きな役割を果たしている。そして、役者たちの存在感をより説得力あるものにしているのも、彼女の衣装があってこそ。
本作で描かれる知られざる物語では、衣装について「想像を巡らせる」余地があったとボイルは語る。「歴史上の出来事はもちろん大切です。しかし、その裏に隠れていることも同様に大切なのです」。
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「ヴィクトリア女王は最初のうちは黒い服を着ていて非常に暗いです。しかし、アブドゥルとの関係が深まると、衣装もそれに応じて明るいものになり、襟を飾るカラーも軽いものに変わっていきます。ピークはフィレンツェに行った時。その後、疑念が忍び寄り、彼女の衣装は再び暗いものになってゆくのです」。本作のために用意された数百点にもわたるヴィクトリアの衣装は、彼女の心の変化を何よりも雄弁に語っている。
また、従者アブドゥルの衣装にも注目。イスラム教のターバンは着用しつつ、スコットランドへ出向かうときにはタータンを羽織ったり、西洋と東洋のそれぞれの要素を取り入れつつ、調和のとれた服を身に纏っている。そこには英国へのリスペクトを忘れずに、母国インドへの想いも感じられる。
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史実に忠実でありながらも、繊細にヴィクトリアの心情を映し出す鏡のような衣装は、本作の第2の主役! 美しい衣装の数々をスクリーンで確かめてみて。
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』は2019年1月25日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国にて公開。