【MOVIEブログ】2019ベルリン映画祭 Day5

2月11日、月曜日。今朝はちょっと起きるのに難儀したものの、何とか気合で6時半起床。

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"Ghost Town Anthology"(c) Lou Scamble 全 1 枚 拡大写真
2月11日、月曜日。今朝はちょっと起きるのに難儀したものの、何とか気合で6時半起床。バタバタと支度して朝食済ませて外へ出ると、うー、今朝も雨だ! 小雨程度ではあるけれど、どうにも気分は上がらない…。

雨のことは気にしないようにして、今朝は上映が8時半からなのでメイン会場に直行。コンペ部門に出品のカナダの異才ドゥニ・コテ監督新作“Ghost Town Anthology”(写真)。このブログの「コンペ予習編」では、ドゥニ・コテ監督のことをざっくりと自然派と紹介したけれど、本作は自然派を通り越して超自然派の領域に入り、ゴースト・タウンを舞台にしたゴースト・ストーリーだった!

ゴースト・タウンと呼んでしまうのはちょっと大げさで、人口200人余りのカナダの過疎の町が舞台。ある青年が事故死したことをきっかけに、彼の兄や母、そして町の人々が不思議な体験をしていく物語。この世とあの世が繋がる物語ではあるものの、決してホラーではなく(ホラー的な演出を過去の名作から援用してはいるものの)、なにげない日常のドラマ然としているタッチがとても心地良い。

見る人によってはハッタリが足りないというか、掴みどころがないように思ってしまうかもしれないけれど、ドゥニ・コテ作品を定期的に見ている身としては人間と生物を自然界において同列視するコテ監督の視点が極まった感もあって、とても興味深いものがある。僕は大変面白く拝見したけれど、さて世間の評価はどうだろうか? 鑑賞後に色々と考えたくなる余韻を残す秀作だと僕は評価したい。

しかし余韻を噛みしめるのは後回しにして、会場を出て別場所で明日の一般上映のチケットを数枚ゲット。

シネコン会場Cinestarに移動し、11時から「フォーラム」部門のフランス映画で“Just Don’t Think I’ll Scream”という作品へ。これはアート映画というよりは実験映画に分類され得るエッセイ映画だった。フランスの田舎に引きこもった監督が数か月で数百本の映画を見続けたとのことで、本作ではサイレント時代から70年代にかけてのそれら知られざる映画のフッテージを数秒ごとにコラージュし、そこに自らの日記的な思索をナレーションで被せていく。普段なかなか見るチャンスの無いタイプの作品なので、やはり「フォーラム」部門は刺激的だ。

上映終わって速攻で移動し、12時半から同じく「フォーラム」部門で“What We Left Unfinished”という作品へ。監督はアメリカ人の女性で、アフガニスタンの現代の映画史をふり返るドキュメンタリー。社会主義革命からソ連侵攻に至る80年代~90年代にアフガニスタンの映画は苦難の時代を過ごし、破壊されたフィルムが無数あれば未完に終わった撮影もたくさんある。関係者の証言を織り交ぜ、政治に翻弄されるアフガンの映画史が語られる…。失われた映画の記憶と記録は、どうしてここまで映画ファンの胸に突き刺さるのだろう。とても貴重な作品だ。

70分台の作品だったので、上映終了と同時に同じシネコンの別スクリーンにダッシュし、13時45分からまたまた「フォーラム」部門で“So Pretty”というアメリカ人監督による作品に滑り込む。N.Y.を舞台に、2組のモデル的に美しいゲイのカップルを巡る物語。N.Y.低予算インディーのテイストが嬉しい。

ちょっとキワモノ的な描写が無くはないので、慣れていない人は少し引くかもしれないけれど(途中退場者も少なからずいた)、僕も伊達にベルリンに20年近く通っているわけでないので、全く気にならない。むしろ、セミ・ドキュメンタリー的な演出や、音楽のカッコよさにとても惹かれるものがあった。これは思わぬ拾い物!

朝から連続4本鑑賞して大充実。しかしそうそう見てばかりもいられないので、マーケット会場に向かうべく外に出ると、晴れている! 久しぶりの青空だ! 一気にテンションが上がる!

というわけで15時半から18時半まで各社とミーティング。色々な意味で深刻な話に及んだミーティングもあり、うわあどうしよう、と今後の進め方を考える…。

ミーティングが終わり、少し時間が空いたので、モールの簡易中華屋さんで至福の中華。しかし満腹になり過ぎると上映鑑賞に支障を来すので、腹6分目くらいに抑えることを意識しながら、久しぶりのまともな食事を満喫(とはいえ滞在時間20分くらい)。

上映に戻り、見たのは19時半からの「パノラマ」部門で“Hellhole”というベルギー人監督による作品。フランスやベルギーでテロ事件が相次いだ数年前、ブラッセルはテロリストの温床であるという汚名を負ってしまい、そのことに忸怩たる思いを抱いた監督がブラッセルの現在の様相をフィクションの形で表現した作品だった。

主題はもちろん興味深いし、アルバ・ロルヴァケルのようなスター女優も出演しているし、十分に見る気にさせるのだけど、あまりにアプローチがアーティー過ぎたか…。必要以上に静かで抑えたトーンが多用され、これも実験映画の領域に踏み込む作品と言っていいかもしれない。いや、抽象化による普遍化を企図するのはもちろんありなので、こちらの思考の柔軟性を鍛えることが先決だ。

21時に上映終わり、メイン会場に移動して、本日6本目はコンペの“A Tale of Three Sisters”というトルコのエミン・アルペル監督新作へ。「予習ブログ」に書いたように、監督の前作『錯乱(Frenzy)』は都会を舞台にした社会派ドラマであったのに対し、今作は遥か山間の村に暮らす一家の3人姉妹の物語。社会派というよりは文芸ドラマの趣であるものの、それでも現代性は兼ね備えており、アルペル監督の懐の広さはやはり面白い。

ただ、今作はちょっと残念だったかな、というのが僕の感想。絶景的な自然を抱くロケーションは完璧で、ユーモアを備えた序盤は大傑作の予感すら漂った。しかしそこから会話が多くなり、いささかダイナミズムが失われてしまったことに加え、会話で言及される名前の数々が誰を指しているのか分かりにくく、気持ちよく物語に入らせてもらえなかったきらいがある。しかし音楽が秀逸で、映画の全体的な雰囲気はとてもいい。3人姉妹も美しい。再見したらさらに点数はアップしそうだ。

上映終わって0時。ホテルに戻り、ビールを少し飲みつつ(失礼)ブログを書き、そろそろ2時。やはり1日に6本見られると満足度が違う! 映画祭もそろそろ後半、がんばっていきましょう。

《矢田部吉彦》

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