『ブラック・スキャンダル』『ファーナス/訣別の朝』のスコット・クーパーがメガホンを取った本作の舞台は、1892年のアメリカ、産業革命によって急激な変化を遂げつつある西部の開拓地。先住民との戦争で武勲を上げた英雄で、刑務所の看守を務めている騎兵隊大尉ジョーは、かつての宿敵で、服役中のシャイアン族の長イエロー・ホークとその家族を部族の居留地へと送り返す任務を命じられる。イエロー・ホークはがんに冒され、余命わずか。
ネイティブアメリカンをいまも憎んでいるジョーは嫌々ながら、このミッションを引き受ける。ニューメキシコからコロラド、そしてモンタナへ。コマンチ族の蛮行によって家族を殺された女性ロザリーも加わり、一行は北を目指す。行く手に待ち受けるのは、ならず者たちの相次ぐ急襲。危険に満ちた旅をとおして、ジョーは気づく。イエロー・ホークと協力しないことには、生きてはいけない状況に置かれていることを…。
主人公ジョーには、『ザ・ファイター』でアカデミー賞助演男優賞を受賞し、『バイス』では同主演男優賞にノミネートされたことも記憶に新しいクリスチャン・ベイル。戦争の英雄でありながら、戦場で生じた深く暗い闇を心の中に抱え、ただ黙々と看守の仕事をこなす男の魂の救済を体現し、ストイックな個性を遺憾なく発揮。『ファーナス/訣別の朝』に続くクーパー監督と再タッグで熱演を見せる。

そして家族を失ったロザリーには、『ゴーン・ガール』でアカデミー賞にノミネートされたロザムンド・パイク。冒頭の家族惨殺のシークエンスで見せる必死のサバイバルも、家族を失ったことからくる錯乱も、その後の心の癒しの過程も説得力充分に演じて、実力派女優の力量を見せつけている。

また、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『ジェロニモ』や『アバター』などで知られるネイティブアメリカンの名優ウェス・ステューディがイエロー・ホークに扮し、超然とした存在感を発揮。さらに『3時10分、決断のとき』『ガルヴェストン』などの演技派ベン・フォスター、『君の名前で僕を呼んで』『ビューティフル・ボーイ』などで世界的若手スター俳優となったティモシー・シャラメらが、がっちりと脇を固める。

さらに、『世界にひとつのプレイブック』や『スポットライト 世紀のスクープ』などの傑作でカメラマンを務めた日本人撮影監督マサノブ・タカヤナギによる、雄大な自然をとらえた映像美も必見。荒野や平原、山々の遠景といったアメリカの原風景はもちろん騎馬戦や銃撃戦、夜襲などのアクションもダイナミックにとらえ、ビジュアルだけで多くを物語ってみせる。
ドラマも演出も演技も映像もハイレベルのクオリティ。それらが噛み合った本作は、『悪党に粛清を』『ある決闘 セントヘレナの掟』に続く、ウェスタン・ノワールの第3弾。引き続き注目していて。
『荒野の誓い』は9月6日(金)より新宿バルト9ほか全国にて公開。