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ユペール演じるフランキーは、自らの余命があまり長くないと知り、バケーションと称してポルトガルの世界遺産の町シントラに家族や親友を呼び寄せ、最愛の者たちの人生をいまのうちに少しだけ“演出”しようと目論んでいる。フランキーが強い信頼を寄せ、仕事関係で唯一の友人でもあるヘアメイクアップアーティストのアイリーン(マリサ・トメイ)もフランキーの誘いでこの町を訪れていた。

この場面は、シントラの深い森で彷徨うフランキーとアイリーンが劇的に再会を果たした直後のシーン。拠点も遠く離れ、5年以上フランキーと会っていなかったアイリーンはフランキーの病状のことは何も知らなかったが、アイリーンの目の前で倒れてしまったフランキーは、自分からは滅多に口にしない自分の身体のことを語り始める。
言葉を失うアイリーンに対して、「泣くのを見るのはつらいから、泣かないで」と笑顔を見せようとするフランキーだが、その目には涙が浮かぶ。しかし、フランキーを気遣うアイリーンの「ここ、どの辺り?」という言葉をきっかけに、すぐに“旅を楽しむ”ふたりに戻っていくのだ。悲しみを堪えて「共にいい時間を過ごしたい」というフランキーの願いをアイリーンも感じ取ったことがうかがえる印象的な場面となっている。
ユペールはフランキーについて「心の奥底でフランキーがなにより耐えられないと思っているのは、周りの人たちが泣くこと。それが彼女が苦痛から距離を置こうとするもうひとつの理由でもある。そして彼女は、逃げ道を見つけようとするどんなにささいな試みをも拒んでいる。逃げ道などないことを知っているから。言い換えると、治療の可能性を考えることの拒否が、彼女の症状の重さを明らかにしているといえるでしょうね」と、その心境を分析している。

そんなフランキーの“この旅における密かな目論見”には、信頼を寄せる親友アイリーンに関することも含まれているのだが、そのアイリーンもまた人生の岐路に立たされている。フランキーが親友にかける言葉にも注目だ。
『ポルトガル、夏の終わり』は8月14日(金) よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。