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親に売られて旅芸人になった主人公レミと、親方ヴィタリス、そしてどんなときも支えてくれる犬のカピ、明るくひょうきんな猿のジョリクール。多種多様なメンバーからなる名チーム。まるでレミの本当の家族のように温かく、時に厳しく、時に優しく、レミの成長を見守るかけがえのない存在でもある。
カピはヴィタリスの右腕のように状況を読み取り機敏に働き、見事な芸も披露。ジョリクールはお客さんの反応をみながらショーを盛り上げ、ムードを作り上げる。共に旅路を行く、人間と犬・猿の特別な関係性も注目のポイントとなっている。
犬のカピを演じたのはボーダーコリーのダークネス。普段はサーカスで活躍しているが、本作では監督の要望である「熟達の猟犬で素晴らしい曲芸師」という役柄を見事にこなしている。
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特に見どころは、親方ヴィタリスを演じるダニエル・オートゥイユと大道芸を披露するシーン。フラフープを飛び越える演出では、ダニエルからの「もっと穏やかに」という抽象的な指示にも、トレーナーの教えを介して応え、完成度の高い芸を披露する。
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とはいえ、繰り返しの多い映画の撮影では持続力が求められるため、厳しすぎると信頼が失われてしまう。そこで最高の関係性を築くためにダニエルが注力したのは、演技の後にはしっかりとダークネスを褒めること! 役者としてお互いを認め合い、最高の演技を披露するためには必要なことだ。
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また、主人公レミを演じたマロム・パキンとダークネスの共演も見逃せない。まるでレミの気持ちを読み解くかのように、レミが泣いている時にはそっと寄り添い、嬉しいときにはともに喜んでいる。
一方、猿のジョリクールを演じたのはオマキザルのティト。フランステレビ映画版の「家なき子」でも同じ役を演じている。監督はティトのタレント性を際立たせ、本作でのキャラクターを再構築した。
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レミ役のマロムが「肩に乗ってるだけの猿じゃないよ」と言い切るほど、ティトの演技力は確かなもの。現場ではティトが居心地よくいられることを意識していたというトレーナーの先導により、誰からも愛されるキャラクターだった様子。
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一番苦戦したのは帽子をかぶるシーン。どうしても被っていた帽子を投げてしまい、投げなかったのは「投げろ」と指示をしたときだけだったとか。指示を理解していて、ときには従わずに楽しんでいる余裕すら見受けられるティト。遊ぶように演技をするティトの振る舞いや、首を傾げてこちらをじっと見つめる仕草、ニコッと笑う表情など、その表現力の豊かさにも驚かされる。
『家なき子 希望の歌声』は11月20日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、109シネマズ 二子玉川ほか全国にて公開。