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変幻自在ファン・ジョンミンに迫る!ドラマ「ハッシュ」から最新映画『人質』まで

韓国映画を最近、見始めたという人も、“韓国を代表する俳優”といえば何人か思い浮かぶ顔があるかと思う。その中の1人には、間違いなくファン・ジョンミンがいるはずだ。

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「ハッシュ~沈黙注意報~」(c)JTBC STUDIOs
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韓国映画を最近、見始めたという人も、“韓国を代表する俳優”といえば何人か思い浮かぶ顔があるかと思う。その中の1人には、間違いなくファン・ジョンミンがいるはずだ。

日本から國村隼が参加した『哭声/コクソン』での祈祷師や『アシュラ』の悪徳市長、『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』での実在の対北工作員など、様々な映画で強烈な印象を放ってきたファン・ジョンミン。韓国では主演映画の累計観客動員が1億人を超えたため“1億俳優”と呼ばれ、日本では“怪演”俳優のイメージが強い彼が、8年ぶりに「ハッシュ~沈黙注意報~」(Amazon Prime Video配信中)でドラマに出演。役者として成長を続ける「少女時代」ユナと共演し、しがない新聞記者を演じて話題となっている。

さらに、“俳優ファン・ジョンミン”本人として出演するという『人質』(原題)なども日本公開が待たれており、2021年下半期も話題を振りまくに違いない、変幻自在のファン・ジョンミンに迫った。


演劇界から韓国映画界のトップ俳優へ


『アシュラ』 (C)2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved『アシュラ』より
1970年9月1日、慶尚南道昌原市(旧・馬山市)生まれ。ソウル芸術大学演劇科を卒業し、当初はミュージカルで活躍する。映画では『シュリ』(1999)の端役や『ワイキキ・ブラザーズ』(2001)を経て、『ロード・ムービー』(原題/2001)で青龍映画賞新人男優賞を受賞。

チョン・ドヨン共演『ユア・マイ・サンシャイン』(2005)で同・主演男優賞を受賞し、圧倒的存在感を見せた『新しき世界』(2013)で2度目の同賞に輝くと、『国際市場で逢いましょう』(2014)が国内動員1400万人超えとなる大ヒットとなり大鐘映画賞主演男優賞を受賞、続く『ベテラン』(2015)も1300万人を超える動員を記録し、『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)で再び大鐘賞主演男優賞に選ばれるなど、“1億俳優”と呼ばれるだけの人気と栄冠を得てきた。

『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(C) 2018 CJ ENM CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』より
また、2009年にはトップ女優と恋に落ちる「アクシデントカップル」でTVドラマに初出演、2012年には「パリの恋人」キム・ジョンウンと南北問題に翻弄される恋人を演じた壮大なラブロマンス「約束の恋人」に主演。さらに2015年には、三谷幸喜原作のミュージカル「オケピ!」韓国版に主演(Wキャスト)、三谷作品に魅了されたファン・ジョンミン自らが企画・演出も手がけている。


あまりにもヤバすぎるファン・ジョンミン


『アシュラ』 (C)2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
韓国ノワールにおいて、ほかに類を見ないインパクトと憑依的な演技力を見せつけるファン・ジョンミンのベストアクトに、『新しき世界』の華僑出身ヤクザ、チョンチョンを挙げる人は多いだろう。苦楽を共にした舎弟(イ・ジョンジェ)の正体を知りながらも“愛した”男が、狂気を剥き出しにする終盤のシーンは伝説的。

また、『甘い人生』(2005)で演じた、イ・ビョンホンを敵対視する口元に大きな傷のある暴力団のペク社長は「人生は甘くない」と最後まで憎たらしさを纏っていた。だが、まるでヤクザ者以上に強欲で容赦のない『アシュラ』の悪徳市長パク・ソンベにはどれもかなわないかもしれない。


頼りになる!ファン・ジョンミン


『ベテラン』(C)2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
刑事ドラマの監修を頼まれるほどのベテラン刑事ソ・ドチョルと彼の捜査チームが、大財閥の問題多き御曹司チョ・テオ(ユ・アイン)と壮絶な対決を繰り広げる『ベテラン』。明洞のような繁華街でのド派手カーチェイスに、路上の大乱闘シーンは圧巻で、庶民派刑事が“悪”を懲らしめる構図は後の『エクストリーム・ジョブ』『ガール・コップス』などにも踏襲されている。『生き残るための3つの取引』(2010)に続いてリュ・スンワン監督と組んだ快作。

また、修羅の世界だけではない。『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』(2015)では実在する登山家オム・ホンギルを熱演。兄貴(ヒョン)と呼びたくなる、頼りになる懐の深さや、極限の中で幾度も自分自身と闘ってきた経験値の体現は説得力たっぷり。

『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』 (c)2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
なお、最新ドラマ「ハッシュ~沈黙注意報~」では新聞記者を演じているが、『裏切りの陰謀』(2011)でも謎の爆発事件をきっかけに政治家や検事、メディアをもコントロールする“組織”を調べ始める記者イ・バンウ役に扮した。調査チームの仲間にはホン・サンス作品以前の初々しさも覗くキム・ミニ、「Sweet Homeー俺と世界の絶望ー」「キングダム」のキム・サンホも。何度も妨害に遭い「記者は無力なのか」と自問しながら、“小市民”のために奔走する。


苦悩する…ファン・ジョンミン


『生き残るための3つの取引』 (C) 2010 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved
警察大卒“ではない”たたき上げの刑事チェ・チョルギが、検事(リュ・スンボム)、建設会社社長(ユ・ヘジン)と三つ巴になり、出世のために正義を犠牲にしてドロ沼にはまっていく『生き残るための3つの取引』は、映画ファンからの支持も厚い1作。「ハッシュ~沈黙注意報~」ではユナ演じるインターン記者が振る舞う焼酎のビール割、爆弾酒も登場。チョルギを慕う刑事役でマ・ドンソクが出演しているのがポイント。

信頼していた上司の裏切りに、詐欺師とタッグを組んでリベンジを誓ったのが『華麗なるリベンジ』(2016)。3浪して大学に入り、4年司法浪人をして検事になったピョン・ジェウクは、口だけではなくつい手も出てしまう熱血漢ぶりを利用され、身に覚えのない殺人容疑で逮捕、収監される。

『華麗なるリベンジ』ポスタービジュアル (C)2016 SHOWBOX, MOONLIGHT FILM AND SANAI PICTURES CO., LTD ALL RIGHTS RESERVED.
リベンジする相手は次長検事から転身した政治家(イ・ソンミン)だ。口達者で頭が切れる詐欺師(カン・ドンウォン)と共に癒着まみれの巨悪に立ち向かう。刑務官や受刑者たちが抱える訴訟問題を解決してやることで刑務所内で力を得ていく点は痛快でもある。


愛に生きるファン・ジョンミン


『ユア・マイ・サンシャイン』メイン
検事や刑事、ヤクザ者ばかりではない、ファン・ジョンミンの朴訥とした雰囲気や親しみやすい笑顔が好き、という方も多いのでは? 実話を基にした『ユア・マイ・サンシャイン』ではHIVに感染した妻(チョン・ドヨン)を愛し抜く純朴な田舎の青年ソクチュンを演じ、韓国、そして韓流ブームの日本でも知られるきっかけとなった。物語の展開に合わせて15キロの増量と12キロの減量を行い、牧場で牛とお話するファン・ジョンミンに出会える。

一方、可愛らしいまでのロマンティック・コメディを繰り広げるのは、「アクシデントカップル」(2009)。地方の大学を卒業して郵便局員になった、恋に不器用で地味なク・ドンベクは、トップ女優ハン・ジス(キム・アジュン)のピンチを救ったことで6か月間の契約結婚生活をすることに。恋敵は、ソウル市長選を控える議員の息子であり新聞社常務(チュ・サンウク)で、真相を追う記者にも追いかけられる。立場の違う格差カップルの災難多き恋愛は王道ともいえ、ファン・ジョンミンの演技は視聴者に絶賛されたという。

また、ソウル市長選といえば、『ダンシング・クィーン』(2012)では立候補者に!? ゲイカップル(その1人を演じるのはマ・ドンソク)をはじめ困っている人を見捨てておけない、見て見ぬふりなどできない人権派弁護士として、「みんなが希望を感じる顔」として市長選に出馬することになった“ファン・ジョンミン”。そんな中、かつて「シンチョンのマドンナ」と呼ばれた妻の“オム・ジョンファ”(オム・ジョンファ)にも長年の夢だったダンスシンガーになれる一大チャンスが訪れる。


日本では2014年公開ながら『82年生まれ、キム・ジヨン』にも通じるフェミ映画の側面を持つ1作。なお、2人はオムニバス映画『オガムド~五感度~』の出演エピソードを拡大させた『愛の終わり、私のはじまり』(2013)でも共演している。


泣けるファン・ジョンミン


『国際市場で逢いましょう』 (c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
『国際市場で逢いましょう』は、朝鮮戦争で父と妹と生き別れ、西ドイツ(当時)に出稼ぎに行ったり、ベトナム戦争に民間技術者として赴いたりと苦労のつきない生涯を送ってきた主人公ドクスの人生絵巻。実在の著名人も時折登場しながら韓国現代史をふり返る、さながら韓国版『フォレスト・ガンプ』だ。家族の前ではけっして涙を見せない家長が、“男らしさ”の裏側を見せる。

そして、『工作 黒金星と呼ばれた男』では実在の工作員・黒金星に扮した。調子のいい実業家になりすまし、外貨の欲しい北朝鮮に潜入、対外交渉者(イ・ソンミン)と腹の奥を読み合う心理戦を濃密な会話劇で繰り広げる。撮影前に黒金星本人と対面したそうで、何を考えているのか読めない“工作員の目”を見事に表現。国家安全保衛部員(チュ・ジフン)からは疑いの目を向けられ、韓国側の総責任者(チョ・ジヌン)からも見放されかねない、ゾクゾクする緊迫の後に待っている展開は胸アツ。


8年ぶりのドラマ出演「ハッシュ」
熱い信念をもった記者たちが立ち向かうもの


「ハッシュ~沈黙注意報~」(c)JTBC STUDIOs
最近、韓国発ロマンティック・コメディがAmazon Prime Video配信作品に続々と加わる中で、異色の存在といえるのが「ハッシュ~沈黙注意報~」。ビジュアルからは、ファン・ジョンミン演じるやる気ゼロのベテラン記者ハン・ジュンヒョクと、「少女時代」ユナ演じる情熱的なインターン記者イ・ジスの表情が対照的で、コミカルなお仕事ドラマを予想させるものの、小説「沈黙注意報」(チョン・ジニョン)を原作にした社会派ヒューマンドラマだ。

実はジュンヒョクとジスには過去に因縁があることが明らかになるが、その事実はほんの序章。デジタルニュース部にいながらダラダラと過ごすジュンヒョクや、真意の見えないジスに初めは共感が湧きづらいかもしれなくとも、まずは2話まで見てほしい。

それぞれの人物描写、心情描写を丁寧に紡ぎながら、あるインターンの死をきっかけにして、『パラサイト 半地下の家族』でも描かれたような、大卒でも就職できない若者たちが派遣やアルバイトとして夢や意欲、労働力を搾取される現代韓国社会の実態を映し出す。「ご飯はペンよりも強し」と、ペンで真実を暴くことより、毎日食べていくことのほうが大事というジスのモットーには深くうなずかされるはず。

「ハッシュ~沈黙注意報~」(c)JTBC STUDIOs
ファン・ジョンミンがこれまで主演した『ベテラン』『華麗なるリベンジ』などでは巨悪を駆逐するため記者を利用するシーンがあったが、それはメディアの力を信じていればこそ。だが、本作の記者ジュンヒョクは“上”からの指示で記事を差し止められ、取材を制限されたりすることが日常茶飯事。都合の悪いニュースを別のニュースで塗りつぶし、世論さえ左右する、そんな巨大メディアの腐敗に内側から立ち向かっていくのがドラマの本筋となる。生き抜くために沈黙することは、正義なのか。沈黙を強いる者と沈黙から脱しようとする者の対峙が見どころとなっていく。

「少女時代」の不動のセンターで、いまや女優としても高く評価されるユナの熱量に、ファン・ジョンミン自身が心動かされているような場面も見受けられ、『華麗なるリベンジ』や『ヒマラヤ』でも傍らにいたキム・ウォネ、「太陽の末裔」「青春の記録」などのイ・スンジュン、「ソル薬局の息子たち」『幼い依頼人』のユソンら「H.U.S.H(ハッシュ)」と名づけられた記者仲間とのチームワークも見逃せない。また、「コムタン」「ユッケジャン」「ジャージャー麺」など、各話のタイトルとなる料理や食べ物がストーリーに関わっている。



待ち遠しい新作映画も


2020年8月に韓国で公開され、『KCIA 南山の部長たち』『新感染半島 ファイナル・ステージ』などと並んでコロナ禍のヒット作となった映画『ただ悪から救いたまえ』(原題/英題:Deliver Us from Evil)が待機する。

『新しき世界』 (C) 2012 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & SANAI PICTURES Co. Ltd. All Rights Reserved.『新しき世界』より
『新しき世界』の“ブラザー”、イ・ジョンジェと7年ぶりの共演。タイ、そして日本でもロケが行われた本作は、最後の請負殺人の任務を終えたものの、タイで娘を拉致される暗殺者をファン・ジョンミン、復讐のために彼を追う無慈悲な追撃者をイ・ジョンジェ、『それだけが、僕の世界』『ダンシング・クィーン』パク・ジョンミンがトランスジェンダーの女性役を演じ、池松壮亮主演『アジアの天使』のチェ・ヒソ、豊原功補、白竜らが出演している。

また、今夏に韓国公開の『人質』(原題)は、“俳優ファン・ジョンミン”がある日突然、誘拐されるリアリティ・アクションスリラー。ファン・ジョンミンがロープとガムテープで縛り上げられ、正体不明の犯人に囚われている、というビジュアルや予告編が本国で公開され、衝撃を呼んでいる。しかも、彼はその極限的状況から脱出を試みるらしい! 『生き残るための3つの取引』『ベテラン』と代表作を生みだしてきた映画制作会社と三度目のタッグというだけに期待が高まる。

ほかにも、「愛の不時着」で日本ファン急増のヒョンビンと共演した映画『交渉』(原題)は、コロナ禍で撮影が延期となったが、昨年無事にヨルダンでの撮影が終了した模様。『リトル・フォレスト 春夏秋冬』のイム・スルレ監督がメガホンをとり、中東で拉致された韓国人を救うために奮闘する物語を描く。

さらに、Netflix新シリーズ「スリナム」(原題)ではハ・ジョンウと初共演、ドラマ「刑務所のルールブック」『狩りの時間』のパク・ヘス、「賢い医師生活」「ミスター・サンシャイン」のユ・ヨンソクと共演し、『工作』(監督)『華麗なるリベンジ』(制作)のユン・ジョンビンが演出を手がける。

まだまだ挑戦を続けるファン・ジョンミンに、私たちはこれからも魅了されることになりそうだ。

※【更新】6月30日19:16 『ただ悪から救いたまえ』の作品について訂正・追記しました

《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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