実在の管弦楽団へのインスパイアから生まれ、世界中の映画祭で観客賞を受賞した映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』より、場面写真が解禁された。
本作のモデルとなったのは、現代クラシック音楽界を代表する巨匠指揮者ダニエル・バレンボイムと、彼の盟友の米文学者エドワード・サイードが、中東の障壁を打ち破ろうと1999年に設立した和平オーケストラ。ゲーテの著作のタイトルから「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」と名付けられたその楽団には、ふたりの故郷であるイスラエルとパレスチナ、アラブ諸国から若き音楽家たちが集い、「共存への架け橋」を理念に現在も世界中でツアーを行うなど活動を続けている。
敵対する民族の若者たちが集まっていたこの楽団では、政治論争ではなく音楽や文化についてできるだけ対話を促したいという想いから、日中のオーケストラのリハーサル以外に、夜にはワークショップやディスカッションを行なったそう。またプログラムの中では、対立するシリア人の少年とイスラエル人のチェロ奏者が隣り合わせになって譜面台を共有することもあったという。
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そんな活動についてバレンボイムは「彼らは同じ音を、同じ強弱で、同じボーイングで、同じ響きで、同じ表現で演奏しようとしていた」「彼らはもうおたがいを前と同じように見ることができなかった。共通の体験を分け合ったからだ。これこそが出会いの大切さだと僕は思う」と語っている。(2004「バレンボイム/サイード音楽と社会」みすず書房より)
もちろん本作でもそのスピリットは受け継がれており、オーケストラの楽団員たちは激しくぶつかり合いながらも、譜面台を共有しさまざまなワークショップに取り組んでいく。またこの度解禁された場面写真では、楽団員たちに熱心に指導する指揮者スポルクの姿や真剣な眼差しで演奏する若者たちの様子が切り取られており、作品の公開が待ち遠しい写真になっている。
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『クレッシェンド 音楽の架け橋』は2022年1月28日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。