《text:キャサリン/Catherine》
自身の過去と向き合い、スティーヴンを犠牲にしながらついに魂が安定し葦の楽園へと辿り着いたマーク。ただ、当然それでは物語が全く解決してないので終わるはずもなく、まだやり残したことがあり生きなければならないこと、何よりそれにはスティーヴンが必要不可欠であることから、葦の楽園から逆戻り。タウエレトの助けも得ながらスティーヴンと再会し、コンスの声に導かれ死後の世界から復活を果たす。
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意外とMCUでは今までない演出だったコンスとアメミットの大怪獣バトル、エジプト人初のスーパーヒーロー(レイラの戦闘力がやたら高かったのはこの伏線か)、オスカー・アイザックとオスカー・アイザックのブロマンスがしっかり実現したマークとスティーヴンの息の合ったアクション、そしてラストシーンでやっと登場した3人目の人格ジェイク・ロックリーなど…。第5話まで終わったところで、どうやってあと1話、しかもこれまでで一番短い時間内で終わらせるのか全く想像もつかない程に広がったストーリーだったが、なんとか6話で収めたというのがシーズン終わってみての印象。もはやMCUドラマにありがちな、掴みは良いけれど終わり方はかなり駆け足というのが定番になってきている感じもする。
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とはいえ、本作は何といってもMCU作品としてとてもユニークなことには変わりない。解離性同一性障害を患う主人公のサイコロジカルスリラー、エジプト題材のファンタジーアドベンチャーなど様々な要素が他の作品と一線を画しており、チャレンジングな作品になっていると思う。配信開始日はちょうど『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の公開日と重なったが、特段「ムーンナイト」では他作品とのクロスオーバーが描かれることが無かった。監督自身もVariety紙へのインタビューでクロスオーバーの必要はないと語っており、単独作品としてマーベルっぽくないダークな作品を目指したかったそうだ。そういった面でも新しいドラマだったように思う。
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オスカー・アイザック、イーサン・ホーク、メイ・キャラマウィら俳優陣の演技が特に素晴らしかった本作だが、シーズン2の製作は未定。コンスがジェイクの存在を知りながら、マーク/スティーヴンとの約束は守り、ふたりの預かり知らないところで引き続きジェイクを利用し暗躍するその後はぜひファンとして観てみたいところ。
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