シネマカフェの6月特集は「映画とゲーム」! 映画やドラマなど実写化がますます盛んなゲームに注目していく。本コラムでは、これまでのゲームの実写化作品や、映画・ゲームと関わりの深い作品をざっと振り返りつつ、今後公開&配信が期待されるタイトルを見ていこう。
ゲームの映画化といえば、パッと思いつくタイトルは何だろうか。筆者がまず頭に浮かんだ“ゲーム原作映画”の初体験は『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(93)。観賞したのは小学生だったが、子ども心に「なんだか不気味……」とおののいたことを覚えている。慣れ親しんだ明るいカラーのゲームとちょいホラー調の実写版ギャップが、軽くトラウマかもしれない。
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ちなみに、「スーパーマリオ」は2022年の年末にアニメ映画化予定。マリオ役にクリス・プラット、ピーチ姫役にアニャ・テイラー=ジョイ、ルイージ役にチャーリー・デイ、クッパ役にジャック・ブラックと、声優陣が非常に豪華だ。
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その次でいうと、アンジェリーナ・ジョリー主演の2001年の映画『トゥームレイダー』だろうか。日本でも興行収入約27億円とヒットを記録。のちに、アリシア・ヴィキャンデル主演でリブートもされた。90~00年代の映画でいうと、『マトリックス』は実写映画→アニメ→ゲーム等々メディアミックス展開を行い、それぞれをより身近なものへと変えていった。同時期の『ロード・オブ・ザ・リング』も、ゲーム版に力を入れていた印象がある。
そしてやはりこの作品の影響力は絶大。ゲームの実写化『バイオハザード』だ。ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の実写映画版は、第6作まで続くロングシリーズに。第1作は『トゥームレイダー』と同時期の作品でもあり、この辺りからゲーム×映画のカルチャーに拍車がかかっていった印象だ(プレイステーション2の発売が2000年というところも大きく関係しているだろう)。なお、ポール・W・S・アンダーソン監督は「モータルコンバット」「モンスターハンター」の実写映画化も手掛けており、ゲームとは縁が深い。
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なお、「バイオハザード」はカヤ・スコデラーリオが主演した映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』や、Netflixによる実写ドラマ版が7月14日に配信開始されるなど、コンスタントに新作が発表され続けている。アニメ版もシリーズ化しており、まだまだこの流れは続いていきそうだ。
そのほか、「アーケイン」『アサシン・クリード』『アンチャーテッド』『ソニック・ザ・ムービー』『ピクセル』「HALO」『名探偵ピカチュウ』『モータルコンバット』(21年版)等々、近年のゲーム原作の映画・ドラマは本当に数が多い。
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また、ゲームと映画の距離もどんどん近づいていき、Netflix等のスタジオがゲーム分野に進出したりと動きも活発に。スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』は小説原作だが、「ゲーム世界をVR体験する」内容に即して、ゲームのキャラクターが大量に登場。ライアン・レイノルズ主演の『フリー・ガイ』はゲームのモブキャラを主人公にした物語で、こちらもゲーム関連作といえる。ディズニーアニメ『シュガー・ラッシュ』もその系譜にあるだろう。
そして、近年で言えば小島秀夫監督によるゲーム「DEATH STRANDING」も重要な1本。本作にはノーマン・リーダス、レア・セドゥ、マッツ・ミケルセン、ギレルモ・デル・トロ監督等々、世界的に有名な俳優・監督が集結。パフォーマンス・キャプチャーによって本人がゲーム内に登場したかのようなリアリティが付加されており、大いに話題を集めた(ちなみに小島監督の「メタルギア」は、オスカー・アイザック主演で実写化が進んでいるという)。
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さかのぼると、ゲーム「鬼武者」シリーズは金城武やジャン・レノを起用し、製作時には死没していた松田優作を「蘇らせて」おり、こうした動きはより活発化していくのかもしれない。「デスストランディング」でも、リンゼイ・ワグナーが若き日の姿で登場している。
そして、忘れてはならないのが大ヒットゲーム「Marvel’s Spider-Man」。本作は、プレイヤーがスパイダーマンとなってN.Y.の街を自由にスイングでき、「まるで映画みたい!」とハマる人が続出。トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールド、トム・ホランド版で『スパイダーマン』ファンになった映画好きも引き込んだ。本作はシリーズ化され、2023年発売予定の「Marvel’s Spider-Man2」では満を持してヴェノムが登場する見込み。さらに、「Marvel’s Wolverine」も待機中。こちらは『X-MEN』シリーズのウルヴァリンを主人公にした単独ゲームだが、初映像の解禁時には「これは『LOGAN/ローガン』だ!」との声が頻出し、映画とのクロスオーバーも期待される。
また、映画ファンからも熱い視線を浴びている新作ゲームでいうと、『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズの世界を体験できるオープンワールドゲーム「ホグワーツ・レガシー」が挙げられる。こちらは、1800年代のホグワーツが舞台。1900年代が舞台の『ファンタスティック・ビースト』よりもはるか昔の物語となり、どのようなリンクがあるのかは気になるところだ。
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このように、様々な広がりを見せるゲームと映画の関係性だが、今後、実写化されていく見込みのタイトルもビッグプロジェクトが並ぶ。「ゴッド・オブ・ウォー」はAmazon Prime Video、「Horizon Zero Dawn」はNetflixで進行中。レーシングゲームの「グランツーリスモ」や「The Last Of Us」「マインクラフト」まで! 「The Last Of Us」は「マンダロリアン」のペドロ・パスカルと「ゲーム・オブ・スローンズ」のベラ・ラムジーが出演。「マインクラフト」は『アクアマン』のジェイソン・モモア主演とうわさされている。そのほか「サイレントヒル」の新作や、日本のゲーム「零 zero」実写化の話も。
また、テレビゲームではないものの、「ストレンジャー・シングス」シーズン4 Vol.1の劇中に登場した「ダンジョンズ&ドラゴンズ」はクリス・パイン&ミシェル・ロドリゲス主演で実写映画化予定(これまでにも映画化はされているため、リブートの扱いといえるだろう)。あのボードゲーム「モノポリー」実写化の話もあり、今後もゲーム原作の作品は量産体制に入っていきそうだ。アジア圏でも『返校 言葉が消えた日』はゲーム原作。「アイマス(THE IDOLM@STER)」が韓国で「THE IDOLM@STER.KR」としてドラマ化されたりもした。
となると、今後「ELDEN RING」や「Ghost of Tsushima」、あるいは「ウマ娘 プリティーダービー」といった人気コンテンツが実写化されても(できるかは置いておいて)、不思議ではない状況といえるかもしれない。
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なお、6月3日にはプレイステーションの情報番組「State of Play」が放送され、新作情報が続々と解禁に。宇宙の刑務所を舞台にしたサバイバルホラー「The Callisto Protocol」(12月3日発売)、季節の移り変わりを自転車に乗って旅をしながら体感する「Season: A Letter to the Future」(今秋発売)といった映画ファンにも刺さりそうなグラフィック×ストーリーの新作ゲームが今後もひしめいている。
ちなみに、ロボットが暮らす世界で猫になって探検する「Stray」(7月19日発売)は、Annapurna Interactive(アンナプルナ・インタラクティブ)によるもの。そう、『her/世界でひとつの彼女』『20センチュリー・ウーマン』等の製作で知られるアンナプルナ・ピクチャーズが運営するゲーム会社なのだ。このように、映画とゲームはなお一層密接な関係となっていくことだろう。今後、どのような展開を見せていくか追いかけてゆくのも、映画のひとつの楽しみ方といえそうだ。