ベルリン国際映画祭やサンダンス国際映画祭に出品されたドキュメンタリー映画作家キティ・グリーンによる最新作『アシスタント』。この度、顔のない人形を用いた作品の数々で知られる3DCGアーティスト・POOL目線で作成されたポスター<ジェーン・ドゥ>バージョンと、主人公ジェーンの職場でのひと幕を切り取った本編映像が解禁された。
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今回解禁となった<ジェーン・ドゥ>バージョンは、本作のポスタービジュアルをPOOLがリメイクしたもの。「ジェーン・ドゥ」とは“名前のない人” “身元不明人”という意味があり、「オザークへようこそ」のジュリア・ガーナーが演じた主人公・ジェーンの名前の由来になっている。
“What can we do?(わたしたちはどうする?)”とコピーが添えられ、会社で働くことで“自分の顔がなくなっていく”ジェーンの心の叫びが聞こえてくるような、ヒリヒリするポスターが完成した。
また、本編映像は、“自分の正義”を貫こうとしたジェーンの姿を切り取っている。浮気を疑っている上司の妻からの電話に対して、適当なウソでその場を凌ぐことをアドバイスする先輩スタッフ。しかし、「ウソはイヤ」とジェーンは反論、正直な事実を伝えるも、結果、相手を怒らせてしまう――。
その場に流れる、気まずい空気。だが、そもそもなぜ、自分が電話応対させられたのか? なぜ上司の不倫に、自分が嫌な思いをしなければならないのか? これが社会というもの、と思いつつも、まだ全てを飲み込むことのできないジェーンの複雑な表情がなんとも言えない気持ちにさせるシーンとなっている。
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新卒で入社した会社を苛烈なパワハラで退社した経験を持つ芥川賞作家・津村記久子は「この作品は、理不尽の細部を静かに描き尽くすことで、慣習に支えられた暴力の様態を告発することに成功している」とコメント。
クリエイティブな仕事に憧れながらも“普通の人”である自分と葛藤する姿が共感を呼んだ「まじめな会社員」などを手掛ける漫画家・冬野梅子は「黙っていれば中立? 見過ごすことが出世の鍵? 面倒に関わらないことが出世の鍵? この1日に“何も起こってない”かのように見える人もいるのかも」とイラストの中に思いを込める。
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北村みなみもイラストとともに「きっと今日もどこかで、この映画と同じことが起こっている。レンガを一本抜けば崩れてしまうこの社会で、自分ができることはなんだろう」と問いかける。
矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)は「職場の酷い環境に耐える主人公は、一度も名前を呼ばれることが無い。彼女は実在の被害者たちを象徴する匿名の存在なのだと気付いて戦慄する」とコメント、「無数の声を体現するジュリア・ガーナーが、無表情のまま沈黙を叫びへと変え、世界を変える。演出が主題に完璧に合致した現代必見の1本だ」と賛辞を贈っている。
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『アシスタント』は6月16日(金)より新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開。