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【インタビュー】グレタ・ガーウィグ監督、『バービー』で表現したかった「人間のもろさや変化」

女性の自立を描いた作品で評価が高いグレタ・ガーウィグ監督に、“バービーを撮る”ということについて話を聞いた。

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グレタ・ガーウィグ監督『バービー』
グレタ・ガーウィグ監督『バービー』 全 15 枚
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1959年に生まれ、世界で最も有名なファッションドール“バーバラ・ミリセント・ロバーツ”、愛称バービー。デビュー以来、多くの人々を魅了してきたのは、彼女がファッショナブルだったからだけではなく、多くの人々にとってアイコニックな存在だったから。

64年にわたり、女性を取り巻く社会環境の変化を体現し、多様性を映し出してきたバービー。さまざまな可能性を秘めた彼女の物語が、誕生65周年を前に実写化された。

メガフォンを執ったのは『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などを手がけたグレタ・ガーウィグ。女性の自立を描いた作品で評価が高いガーウィグ監督に、“バービーを撮る”ということについて話を聞いた。

バービーの変化を通して「人間のもろさや変わっていく部分を逆に祝福したい」


――バービーのイメージを壊さず、その魅力を掘り下げ、現代性を与えるに当たり、最も意識したのはどんなことでしょうか。

バービーが64年間存在し続けているということです。そこをどう捉えるかが、ひとつの挑戦でした。1959年に生まれて、バービーには今まで色々なバージョンがありました。そんなバービーが持つ意味というのは、時代によって違います。ブランド自体が、そのときどきの時代や文化に発信したものも変化してきた。時代に先んじているというときもあれば、ちょっと時代に遅れたこともあったと思う。その64年間のいろいろあった歴史にまず踏み込むことで、バービーとは何なのかという答えを自分の中で出さなければいけないと思い、そこから制作を始めました。

――バービーに感情が芽生えていく様子はとても感動的でした。バービーの変化を描く上ではどんなことを意識したのでしょうか。

バービーは静物、動かないものです。人形ですからね。だからこそ、手の届かない完璧な存在でもある。一方で、私たち人間には体があって衰えていく。ある意味で壊れていくわけです。でも、バービーの映画を撮るにあたっては、人間のその部分をどうにかして祝福する方法はないかと考えました。バービーの経験する目覚め、変化というものを見せることによって、人間のもろさや変わっていく部分を逆に祝福したいと。それはバービーが今まで象徴してきたものと逆ですよね。でも、実写版を撮るにあたっては、そういう表現をしたいと思いました。

表現の可能性を感じるために「映画といつも向き合っている」


――バービーが体現する女性の目覚めという視点からすると、歴史の中でファッションから女性の自立をサポートした「CHANEL(シャネル)」を衣装として際立たせたことは、とても意味のある演出だと感じました。

まさにその通りです。いろいろなデザイナーにインスピレーションを与えてきたバービー。多くのファッションデザイナーと話をしてみると、子供の頃、バービーのために作った服が人生で最初のデザインだったという話をよく聞きます。

主演のマーゴット・ロビーは、もともと「CHANEL」と仕事をしていました。今回のコスチューム・デザイナーであるジャクリーヌ・デュランは、クリスティン・スチュワートが主演の『スペンサー』で、メゾンとコラボレーションをしていたんです。彼女は、「CHANEL」のアーカイブ担当者と仕事をした経験があり、クリスティンのための多くのルックはそのアーカイブを参考にしながらデザインしています。今回、素晴らしいと感じたのは、バービーの歴史と「CHANEL」の歴史という両方を衣装作りによって持ち込めたこと。それはやはり、マーゴットとジャクリーヌ、2人の存在があってこそでした。

――本作では、様々な名作が引用されていますね。男性優位社会の価値観を表するものとして、『ゴッド・ファーザー』や『ロッキー』なども登場しています。

私はシネフィルなんです。いつも映画を観ています。私にとって1番のインスピレーション源は映画。自分が映画制作において、視野が狭くなってしまったり、表現の可能性をもっと追求したりしたくなったときに映画館に行くんです。そうすると、必ず自分が解放される。自由になることができるんです。映画って何でもありなんだと改めて感じることができる。素晴らしいフィルムメーカーの才能、素晴らしい作品を観ることによって、クリエイティブ・マインドが再びオープンになって開けていくんですよね。

映画作りに関して、正しい道なんてあるわけじゃないし、道もひとつじゃない。もちろん作品にはある種の品格と、それから美しさを与えたいし、優れたものにしたいとは思うけれど、そのための道のりは本当に沢山あるんだと、映画を観るとしみじみ思い出せる。常に表現の可能性を感じるためにも、映画といつも向き合っているんです。


《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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