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【レビュー】マーベル新戦略は吉と出た!ドラマ「エコー」は「マーベル・スポットライト」の光だ

1月10日よりディズニープラスで全5話一挙配信された「エコー」が予想外の面白さ! 予習・復習を必要としない「マーベル・スポットライト」第1弾にふさわしい快作であった。

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「エコー」(c)2023 Marvel
「エコー」(c)2023 Marvel 全 18 枚
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1月10日よりディズニープラスで全5話一挙配信された「エコー」が予想外の面白さで、テレビ画面にかじりつき、久々に一気見してしまった。

正直なところ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』後はスーパーヒーローものに食傷気味になっていき、MCUの一連のドラマ作品に関しては、今後の作品で前後の展開が分からなくならないよう“修行”しているような心境で再生していた。映画やドラマ鑑賞というのは、本来なら余暇のご褒美的な存在なのにおかしな話である。しかし今回の「エコー」は、今までMCUを追ってきた甲斐があったことを感じると共に、久々に今後のMCUの展開にもワクワクさせられた。つまり私は、マーベルが打ち出した新たな戦略にまんまとハマったのである。

昨年11月、「マーベル・スポットライト」が展開されていくことが公式より発表された。プロデューサーのブラッド・ウィンダーバウム曰く、同プロジェクトは「より地に足の着いた、キャラクター主導のストーリーをスクリーンに届けるためのプラットフォーム」。名称は1971年から1981年にかけて出版されたコミックアンソロジーシリーズに由来しており、これまでのMCUのような予習・復習を必要としないものになるという。その皮切りとなったのが「エコー」であり、実際に復習しておかないと物語が理解できなかったかというと、イエスでもありノーでもあった。

本作の主人公は、ニューヨークの犯罪王ウィルソン・フィスク(通称:キングピン/ヴィンセント・ドノフリオ)の愛弟子マヤ・ロペス(アラクア・コックス)。幼少期に交通事故で母を亡くしたことで、父と一緒にニューヨークに移住し、父亡き後はキングピンの右腕になった人物だ。彼女は片足が義足で聴覚障害も抱えているが、優れた観察力・身体能力の持ち主である。初登場作は、ドラマ「ホークアイ」。クリント・バートン(=ホークアイ/ジェレミー・レナー)が自暴自棄になって犯罪者たちを成敗しまくっていた“ローニン時代”、彼に父を殺されたことから、クリントの命を狙っていた。しかしその黒幕がキングピンだったことを知り、「ホークアイ」最終話にてキングピンに反旗を翻す。

「エコー」第1話では、そんな彼女の出自からキングピンとの決別までを25分ほどにまとめて紹介している。両親を失う辛い経験をした上、親代わりの人物からも裏切られていた、ということは明確に伝わるのだが、ホークアイ、キングピン、デアデビルへの知識が皆無だと、物語に入り込みづらいのではないかと感じた。これらのキャラクターを知らずとも先に進めるが、知っているとより楽しくなるはず。作品視聴までいかずとも、事前に最低限の知識を抑えておくことを勧めたい。

※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。


さて、おさらいを経て物語が本格的に始まるのは、第1話の約30分後から。大物犯罪者に刃向かってから5か月後、懸賞首となったマヤは大怪我を負い、20年ぶりに故郷オクラホマ・タマハへ舞い戻る。叔父ヘンリー(チャスク・スペンサー)の助けを借りて怪我の治療をし、いとこのビスケッツ(コディ・ライトニング)の協力で物資を調達すると、“目には目を、歯には歯を”の精神で報復を画策。表向き、ヘンリーはアイススケート場の経営者だが、マヤの父同様キングピンの汚れ仕事の請負人であり、「フィスク運輸」の流通も手伝っている。マヤはそれを利用し、キングピンの勢力へ戦争を仕掛けようとする。しかしその行動は、疎遠になっていたいとこのボニー(デバリー・ジェイコブス)や絶縁状態だった祖母チュラ(タントゥー・カーディナル)など、家族を巻き込む事態へと陥っていく――。

本作の鍵となるのは、ご先祖さまの存在だ。舞台となるオクラホマ州タマハは現実世界においてもチョクトー国家であり、マヤはそのチョクトー族の末裔という設定。各エピソードのタイトルには彼女の先祖たちの名前が付いており、それぞれの物語も描かれる。家族を洞窟から助けたチョクトー人の始祖チャファから始まり、北米最古のフィールドスポーツ「チョクトー・スティックボール」で一族を守るため勝利に導いたロワク、軽騎兵隊のピンチを救った隊長の娘トゥクロ、そしてマヤの母でヒーラーのタロアまで。また、マヤは故郷に戻ってから先祖たちのビジョンが見えるようになり、危機的状況に陥ると手のひらに渦巻き模様の光が現れ、その場を乗り切れるようになる。

ざっと思い返す限り、今までのMCUヒーローたちは、現実世界ではありえない超人的な力を持っているか、武器や不思議なアイテムを使いこなす能力を含め驚異的な身体能力を持っている、というのが大半だったが、その点でマヤは一風異なる。

彼女が持っている”ご先祖さまからの力“は、我々の日常生活においてもあり得ると思わせるものだからだ。故人が夢に出てきて警告してくれた、第六感が働いて危機一髪を逃れた……などの体験記は、古今東西問わず昔からよく聞くものだ。マヤの視点においては、ビジョンや手のひらの光が見えても、もしかしたらそれらは、本当は他人(視聴者)からは見えないものなのかもしれない。そんなスピリチュアルな事象について想像を膨らませることができ、これまでのドラマよりも身近な物語に感じさせた。

「世界や宇宙を救う!」と大風呂敷を広げず、マヤと血縁家族マヤとキングピンの関係性に焦点を絞っていたのも功を成している。キングピンはマヤが父を亡くして荒れていた頃、自身の父も12歳の頃に殺されたと話し、「怒りの感情を建設的に使えるように仕事を」と、マヤに居場所と目的を与える。だが実際は心理的に操っており、2人の間には常に暴力が介在していた。幼少期のエピソードが対照的で、マヤが鳥をパチンコで撃ち落とした際に母タロアは優しくマヤを注意した上で鳥の治癒にあたる。一方キングピンは、聴覚障害が原因でマヤを冷たくあしらったアイスクリーム屋のおやじをボコボコに懲らしめる。どちらもマヤへの愛情が根底にある行動だが、キングピンは「暴力こそ答えである」と歪んだ考え方をマヤに植え付けていた。マヤが無自覚なうちに有毒な環境下に置かれ、その洗脳が解けていく過程や、その上で彼女が出した“答え”に心を揺さぶられる。

また、物語を支えるアクションシーンも素晴らしかった。黒レザージャケットに黒ブーツという出で立ちでバイクを乗り回すのはもちろん、俊敏で柔軟な肉体でキレのある足技を繰り出し、様々な武器を使いこなし、むしろ武器を自作するのはお手のもの。マヤのスキルは「ホークアイ」の時点でも目を見張ったが、本作では様々なシチュエーションでそのアクロバティックな姿を堪能できる。列車に行楽施設、チョクトー族の伝統的なお祭りの会場など、ロケーションもユニーク。ちなみに第1話、デアデビル(マット・マードック/チャーリー・コックス)との肉弾戦はハイライトの一つで、このシーンを早々と展開したのも「エコー」の良いところ。中後半までカメオ出演を引っ張らなかったことで、「いつデアデビルが出てくるのだろう」という、本筋とは別のところへ意識が飛ぶこともなく、その後のマヤの物語に集中することができた。

集中という点では、音が果たす役割も大きかった。ここぞというシーンでマヤと同じく音の聴こえない世界となるのだが、特筆すべきは彼女が初めて人を殺めた時。スピードアップする鼓動に、相手の首の骨が折れる鈍い音が重なり、その一瞬で殺人マシンとして覚醒してしまったことが明らかとなり、鳥肌が立った。以降も、緩急つけて訪れる静寂が、盛り上げに一役買っている。と言いつつ、ロブ・ゾンビをBGMに敵を一網打尽するマヤは最高にカッコよかった!

(c) 2024 Marvel

「エコー」はディズニープラスにて独占配信中。


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《山根由佳》

山根由佳

執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。

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