『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』の約100年前、〈ジェダイ黄金期〉という新たな時代を舞台にしたオリジナルドラマシリーズ「スター・ウォーズ:アコライト」最終・第8話が配信。多くの謎と、考察をうながす興味深い余白を残しながら、ひとまず物語は幕を閉じた。
「イカゲーム」で世界的俳優となった韓国出身のイ・ジョンジェが全編英語セリフで挑んだマスター・ソルは、信じられない形で去り(でもどこかで予期していたような…)、アイコニックなジェダイとして「スター・ウォーズ」史にその名を刻んだ。また、「スター・ウォーズ」で“おなじみのジェダイ・マスター”のカメオ出演は、その喪失で沈んだ心を高揚させるには十分だった。
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イ・ジョンジェが事前に、「これまでの映画やオリジナルドラマの世界観はそのままに、また違った物語で印象も異なる『スター・ウォーズ』作品かつ特別なプロジェクト」と語っていた「アコライト」。
確かに今作では、ジェダイ・オーダーは“権力を持つ巨大組織”であり他者の感情をコントロールする、カルトのようだという指摘が外部からなされ、保身を言い訳にした正当化や共謀と隠蔽、強い感情を抱えたまま自分らしく生きることは“ジェダイ失格”であること、また、訓練と称して子を奪われる立場からの視点といった、これまでにないジェダイの一面が描かれた。
主人公のメイとオーシャ(アマンドラ・ステンバーグの二役)は、ダークサイドへ堕ちたジェダイ、アナキン・スカイウォカーと同様に強力なフォースによって命を創り出された双子(と呼んでいいのか)だったが、物語の始まりとは真逆の立場になってしまった。
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ジェダイに恨みを持つ謎の暗殺者として登場したメイは、元はオーシャのものだった白い整備服姿で、記憶をなくしてジェダイ・オーダーに保護され、かつてオーダーを追放された孤独なメカニックのオーシャは、ザ・ストレンジャー(マニー・ハシント)と2人一組で黒の衣装を纏い、彼のアコライト(従者)になった。
今作のクリエーター、レスリー・ヘッドランドは「Collider」で、この衣装の違いは光と闇を示し大きな意味を持つことを明かしている。
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さらに、ライトセーバーの発光している刃の部分<カイバー・クリスタル>の、「出血」(bleeding)と呼ばれる赤色への変化を初めて映像で見せたシーンはシリーズを最も象徴するものとなった。
ジェダイにとってカイバー・クリスタルは、例えるなら「ハリー・ポッター」の魔法使いと杖の関係性のようなもの。ジェダイ・オーダーに入った子どもたちは訓練の過程で、自分だけの課題を克服しカイバー・クリスタルを“見つける”。
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だが、Disneyのサイト「スター・ウォーズの内部機密:ライトセーバー」やハイ・リパブリック時代の小説などによれば、ダークサイドに堕ちた者がライトセーバーを持つ者から盗んだり、あるいは殺したりしてセーバーを手に入れると、持ち主の変わったセーバーのクリスタルは使用者とのつながりを失って「血を流す」のだという。
ソルのライトセーバーを最初に奪ったのはメイだったが、母マザー・アニセアをソルが殺めたと知ったオーシャが憎しみと怒りを滾らせて復讐したことで、そのセーバーのクリスタルが血の涙を流すかのように、ダークサイドに染まってしまったのだ。
しかも、あのダース・ベイダーの常套手段、“フォース・チョーク”で首をじわじわと絞めつけていく残酷さ…。ピップ・ドロイドと無邪気に会話していたころのオーシャは、もう消えてしまった。
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その前のシーンでは、マスター・ソルvs.ザ・ストレンジャー、メイvs.オーシャによる、スローモーションを効果的に使った黒澤映画もびっくりのアクションシーンに魅せられていただけに、ソルの死はかなり衝撃的だった。
ただ、演じるイ・ジョンジェも、アマンドラも、マニーもキレッキレ、今作のライトセーバーバトルやフォースのアクションはオリジナルドラマシリーズの中でも屈指の出来といえるのではないだろうか。
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そして、ソルはずっと「正しいことをした」「最善の道を選んだ」と繰り返してきたが、ブレンドクでの真実をもはや知る者はなく、メイの記憶を利用してマスター・ヴァーネストラ(レベッカ・ヘンダーソン)はソルを異端者であり、一連の事件の首謀者として処理する。
確かにソルは異端だった。戦闘ではどこまでも冷静で才気にあふれるが、あんなふうに元弟子をハグするマスターはこれまでに見たことがない。この愛着という感情の真っ直ぐさと、若干の居心地の悪さは、感情演技に長けたイ・ジョンジェが演じたことで説得力を持った。
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「ジェダイ失格」といわれた元弟子がかつての師匠を倒して、セーバーをBleeding(出血)させるなんて…まさしくシスの通過儀礼。
ザ・ストレンジャーとオーシャを影から見ていた謎の人物も、パルパティーン皇帝ことダース・シディアスの師、ダース・プレイガスではないかと噂されている。「スター・ウォーズ ダース・プレイガス」(角川文庫刊)のイラストともそっくりだ。
最強といわれるヴァーネストラのライトウィップが第6話のあれだけとは物足りない上に、せっかくのマスター・ヨーダ(後頭部だけながら)にも会えたのだ。シーズン2でも、スピンオフでもいいので、何らかの続編を私は期待したい。
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