「世界陸上、現地で観ておけばよかった…!」アニメ映画『ひゃくえむ。』を、音響の異なる4つの映画館で観た結果、そんな感想に行き着いた。同じ作品なのに、音が変わるだけで“泣く場所”まで変わってしまったのだ。そんな、映画館ごとの違いを詳細に描いたレポ漫画が、映画ファンの間で熱い視線を集めている。

投稿したのは、『ひゃくえむ。』ファンのひとり、味噌銀さん。複数の映画館で鑑賞しようと思った背景には、作品単体への興味だけでなく、映画館という空間そのものへの愛着があった。もともと同じ原作者による『チ。』が好きだったことが最初のきっかけではあるが、劇場を巡る鑑賞スタイルはこの作品に限ったものではないという。『トップガン マーヴェリック』や『キングダム』シリーズ、『THE FIRST SLAM DUNK』など、これまでも音響やスクリーンの違いを意識しながら、さまざまな劇場で映画を観てきた。
「スクリーンや音響が変わるだけで、同じ作品でも受け取り方がまったく違ってくる。その違いを体験するのが好きなんです」
とくに大きかったのは、『THE FIRST SLAM DUNK』を複数の劇場で観た経験。音響に強いこだわりを持って制作された同作を通して、劇場設備が感情体験に与える影響を強く実感したという。
『ひゃくえむ。』もまた、音響面へのこだわりが語られていた作品だ。さらに、背景美術が手描きであることも話題になっており、「視覚と聴覚の両面で“劇場向き”の作品だと感じた」と語る。
「通常上映の音や画質だけで観てしまうのは、少しもったいない気がしました。せっかくなら、劇場ごとの違いを体験してみたいと思ったんです」
こうして、音と映像の違いを確かめるように、複数の映画館を巡る鑑賞が始まった。なかでも強く印象に残っているのが、グランドシネマサンシャイン池袋の「BESTIA」での鑑賞だそう。
「音圧という点では、いちばん感情を揺さぶられました。『決めるのは僕…』の鼓動音から楽曲に切り替わる瞬間、身体ごと持っていかれるような感覚で―。気づいたら泣いていました」
漫画では、その体験を「音の洪水に圧倒された」と表現。BESTIAでは、音そのものが感情を押し流すように物語へ引き込んでくる体験があった。



『ひゃくえむ。』を劇場で観終えたあと、味噌銀さんの頭に浮かんだのは、少し意外な後悔だった。
「走る音を“その場で感じたい”という気持ちが強くなって、『世界陸上、現地で観ておけばよかった…!』と思ってしまいました」
それほどまでに、音響を通して伝わってきた走る感覚や臨場感がリアルだったという。映画の中の疾走感が、現実の体験と重なり合うような瞬間だった。
特におすすめしたい映画館は…?
今回鑑賞した4館とは別に、「個人的におすすめしたい映画館」として味噌銀さんが挙げてくれたのが、グランドシネマサンシャインのシアター12、IMAXだ。エスカレーターで12階へ上がる途中に目に入る天井のLED、シアターに足を踏み入れた瞬間に感じる圧倒的なスクリーンサイズ。上映前から気持ちが高まっていく、その一連の体験も含めて、IMAXならではの魅力だという。
「あのワクワク感は、なかなか他では味わえないと思います。『ひゃくえむ。』をここで観てみたいと思う方も多いのではないでしょうか」
同作の主人公・トガシはトップアスリートだが、その内面はスポーツに限らず、何かに真剣に打ち込み、壁にぶつかった経験のある人なら誰でも共感できるものだと味噌銀さんは語る。現在はNetflixでの配信も始まっているが、それでも「映画館」での鑑賞をすすめるのには理由がある。

「エンドロールが終わる頃には、ほんの少し前に進めるような気持ちになれる作品です。映画館という“映画以外のことができない空間”で作品と向き合うことで、より深く没入できるはず。足を運べる方には、ぜひ劇場で観てほしいですね」


