『スキャンダル』でチ・チャンウクが最も苦しんだのは、大胆なシーンでもロマンスでもなかったのかもしれない。チョン・ジウ監督とともに“チョウォン”という人物を作り上げていく、その過程だった。
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チョウォンは、これまでさまざまな作品で描かれてきたタイプのキャラクターでもある。『スキャンダル』の原作映画はフランス小説『危険な関係』をもとにしており、同小説は世界各国で何度も映像化されてきた。
それでもチ・チャンウクは、以前から一度演じてみたい役だったという。

「最初は“2人の女性を愛する男”というところから考え始めました。とても複雑な人物なので、挑戦する価値があると思いました」
当然、過去に同様の役を演じてきた俳優たちと比較されることも覚悟していた。
「比較されるのは仕方がない。それならチョン・ジウ監督だけの、そしてチ・チャンウクだけのチョウォンを作ればいいと思いました」
撮影前には、これまでの作品でも指折りというほど監督と多くの話を重ねた。台本を読み、人物や作品について議論した。
ところがチ・チャンウクは笑いながら、「事前に話したことが実際に反映された割合は、ほぼ0%に近かったです」と明かした。現場では、監督がひとつの“正解”をはっきり提示するというより、さまざまな演技を繰り返させることが多かったという。
ある演技を見せても「それもいい」、別の方法を試しても「それもいい」。繰り返していくうちに、チ・チャンウク自身も、自分が何をしているのか簡単には説明できない瞬間が訪れた。
ただ、そこから自宅で考えてきたものとも、現場で最初に感じたものとも違う“何か”が生まれることがあった。チ・チャンウクは、監督が意図的に俳優をそうした状態へ導いていたのではないかと振り返る。
では、そんな明確な答えを与えない演出に苦しさはなかったのか。チ・チャンウクは即答した。

「苦しかったし、難しかったし、大変でした。つらくて苦しかったです」
さらに撮影が進むと、監督から自分の演技をモニターで確認しないよう求められた。2人は撮影の合間や終了後に何度も話し合い、その作品に適した方法を探した末、チ・チャンウク自身がモニターを見ない形にたどり着いたという。
本人はその感覚を、「目を閉じて誰かの手を握って歩くようなもの」と表現する。相手が安全な道へ導いてくれると頭では分かっている。それでも、自分では先が見えない。だから怖い。
「その人を完全に信じなければならない不安感がありました。今回の撮影は、それに似ていました」
あまりの苦労ぶりに、「監督と仲が悪くなったのでは?」と冗談交じりに質問されると、チ・チャンウクは「まったくありません」と即座に否定した。

むしろ逆だったという。
「この作品を通して、チョン・ジウ監督をもっと尊敬するようになりました」
これまで経験したことのない、粘り強く独特な演出方法。その中に身を置けたこと自体が、俳優として大きな経験になった。チ・チャンウクは、監督が目指していたものについてこう推測した。
揺れ続けるチョウォンの心、どこへ向かうのか本人にも分からない感情。それを俳優自身が先回りして判断し、整理した形で演じてしまわないこと。だからこそ、チ・チャンウク自身にも“答え”を持たせなかったのではないか、と。
苦しく、怖く、時には自分が何をしているのかさえ分からなくなる。その過程こそが、これまでとは違う“チ・チャンウクのチョウォン”を生み出したのかもしれない。(最終回につづく)
(記事提供=OSEN)
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