第97回アカデミー賞(長編ドキュメンタリー賞)受賞作『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』のイスラエル監督チームによるドキュメンタリー『NAZA ナザ』の本編映像が解禁された。
9月のヴェネチア国際映画祭で急遽プレミア上映された本作は、史上最長となる25分間のスタンディングオベーションを浴びて審査員特別賞を受賞。ガザ攻撃に直接関与した軍関係者による衝撃的な告発は、イスラエル国内のみならず世界中で激しい論争を巻き起こしている。
本作は、イスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハームとラヘル・ショールがイスラエル軍の兵士や諜報員24名に極秘インタビューを行い、ガザで行われている民間人虐殺について「どのような指令を受けたのか?」「何をしたのか?」と証言を引き出していくドキュメンタリー。

ガザ地区の監視や遠隔攻撃に直接関与した経験を持つ証言者たちは、イスラエル当局に特定されれば報復を受ける危険があるため、匿名でインタビューに応え、その声や姿形には最新技術によるデジタル処理が施されている。
今回解禁となった本編映像には、民間人への攻撃に関与した兵士による、あまりにショッキングな証言が収められている。
高層ビルが建ち並ぶテルアビブの屋上で、人目につかない暗闇の中、監督のユヴァル・アブラハームと証言者が向かい合う。彼はイスラエル軍の兵士であり、ガザでパレスチナ人に対する遠隔攻撃に関与したという。
「ゲームだった」という耳を疑うような言葉から始まり、ガザの人々が食料を求めて橋を渡り、配給所へ向かうところを狙撃手が狙っていたという事例を淡々と語っていく。
画面越しにその光景を見ていたと語る彼の言葉からは、心を痛める様子は窺えず、「ひとりの人間が命を奪われている」という感覚はすでに麻痺していることが伝わってくる。それほどに、イスラエル軍の兵士たちは、感情を無にして任務を遂行できるようにシステムによって“慣らされている”のだ。
本作では、紙に手で図を描きながら説明するという原始的な方法を用いて、証言を促していく。その方法を選んだ理由について、監督ふたりは次のように語っている。
「他者を殺害するには、相手の人間性から目を逸らす必要があります。相手を数字や統計、あるいは画面上の『点』として捉えたり、ヘブライ語の軍事用語で『付随的被害(巻き添え被害)』を意味する婉曲表現『NAZA』として位置づけたりすることは、その人から人間性を奪うためにしていることです。兵士たちに手で描いてもらうことで、その仕組みに関する重要な知見が得られるだけでなく、遠隔地からの大量殺戮に関与した個人が犠牲者をどのように捉え、そして表現するのかという、加害者の視線についての洞察も得られると考えたのです」。
また、公開初日の10月24日(土)、シアター・イメージフォーラムでは、1回目(11:15の回)の上映後に、本作の監督ユヴァル・アブラハームとラヘル・ショール、製作総指揮を務めた『関心領域』監督のジョナサン・グレイザー、プロデューサーら計5名による、ロンドンでの質疑応答イベントの映像が特別上映されることが決定。
10月15日に実施されたばかりのこの質疑応答イベントでは、映画制作の経緯や撮影背景、監督たちの決意をはじめ、イスラエル政府から激しい非難を浴びる彼らが現在どのような状況に置かれているのかなどについて、自身の口から語られている。
刻一刻と変化する本作の状況を日本でもリアルタイムで知ることができるようにと、急遽上映が決定した本作。現時点では、本映像はオンラインなどで公開される予定はないという。
『NAZA ナザ』は10月24日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開。




