幸せっていったい何?
チルチルとミチルで知られる童話「青い鳥」。昔から語り継がれてきた、この物語にあるように、幸せは意外にも身近にあるもの。そんなことは百も承知ははずなのに、なぜ、現代人は幸福探しをするのでしょう。映画『しあわせはどこにある』の主人公ヘクターは、精神科医。美しい恋人クララと、ロンドンの素敵なフラットで完璧と思える暮らしを送っています。毎日、患者たちの悩みと向き合いアドバイスを送るうち、彼らが一向に幸せになることなく自分の元に通い続けていることにイラ立ち、ふと疑問を感じてしまいます。実はヘクター自身も、クララとの不満はないものの単調すぎる生活に行き詰まりを感じていました。そして、こう思うのです。自分にとって、幸せっていったい何なのだろうか。それもわからないのに、患者たちを治療することなどできない、と。そこで、幸せ探しの旅に出ることを思い立ちます。イギリスから、中国、チベット、アフリカ、そして元恋人が暮らすアメリカへ--。誰かが思う幸せではなく、“自分らしい幸せ”を手探りしていくのです。
日常から距離を置いて深呼吸
主人公を演じるサイモン・ペッグは、物語の冒頭で、生真面目で神経質そうなヘクターを見事に演じています。毎日、儀式のように同じことを同じ時間に繰り返し、真面目にきちんと過ぎるほどきちんと単調な日々を送っていくヘクター。それを支えるロザムンド・パイク演じるクララは雑事を完璧にこなし、恋人というよりは優秀なアシスタント。にこやかでコミカルですがどこか張り詰めています。二人の生活はパーフェクトだけれど、日々に潤いを与える面白味のようなものがなくちょっと息が詰まりそう。ヘクターが日常から離れてみようと直感で決めたのは当然かもしれません。そんな彼が旅を通して、実にさまざまな人と出会い、新しい価値観と出会ううちに、少しずつ自然に自分を開いていくのです。きっとそれこそ、幸せへの道。もし、今幸せが見えないなら、日常から距離を置いて深呼吸をすることで、見えなかったものを見つめようとするのは幸せへの近道と言えるのでしょう。
“幸せ”の体幹を鍛える
例え、「あなたは十分に幸せじゃないか」と誰かに言われても、本人が体感していなければ意味がありません。ならば、見切り発車ながらもまずは動いてみるのもひとつの策。そして、幸せを見つけやすくするための“体幹”を鍛えるのです。ヘクターがやっていたのは、まさにこれ。異文化に触れ、日頃は出会わない人と出会い、過去の自分を見つめ、何を一番大切にしたいか問い直す。それによって幸せの体幹が鍛えられれば、ちょっとしたことで幸せを感じることができるはず。例えば、美味しそうなお料理ができた!とわくわくしたり、素敵な服を買った! 可愛い靴を見つけた! ご飯が美味しい! 花が咲いた! お天気がいい!とちょっとしたことで嬉しくなったり。そんなささやかな喜びや興奮の積み重ねが、人生を豊かにしているのですから。
方法は何でも良い…幸せ体質に改善する
探すということは、“今は手元にない”という前提で動いているということ。もし、あなたが“ない”と思っているなら、ないのは幸せではなく、幸せを探す能力やコツのようなものなのかもしれません。だとしたら、ヘクターと同様に必要なのは、幸せを探すことではなく、幸せを見つける能力を身につけること。彼は旅を通して、そこに近づいていきますが、方法は何でもいい。自分を幸せ体質に改善するための大切な手がかりを教えてくれる『しあわせはどこにある』は、現代版大人のための「青い鳥」なのかもしれません。
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