『ホステージ』ブルース・ウィリス来日記者会見
『シックス・センス』以来、6年ぶりとなる来日を果たしたブルース・ウィリス。今回は原作に惚れ込み、自ら映画化権を獲得したという『ホステージ』を引っさげての登場だ。久しぶりの来日とあって大勢の報道陣が詰めかけた記者会見の壇上に現れ、懐かしい笑顔とともに作品への意気込みを語った。
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「コンニチハ。みなさんお元気ですか? 今回東京に戻って来られたことを大変嬉しく思っています」と日本語を交えた挨拶から始まった記者会見。『ホステージ』の原作はベスト・スリラーにも選ばれた傑作サスペンスだが、映画と本では異なるエンディングとなっている。その理由についてブルースは「本としては素晴らしいエンディングですが、映画として面白いエンディングにしたいと思ったのです。また原作の悪役は単なるマフィアですが、映画ではよりミステリアスにしようとマスクをつけました。これによってより面白いキャラクターが悪役として出来上がったと思います」と自ら見どころを教えてくれた。
アクション・スターの印象が強いブルースだが、実はアクション映画への出演はしばらく控えていたという。しかしそれは真剣にアクションに取り組む彼ならではの選択でもあった。「アクションというジャンル自体の改革が必要かと思ったのです。『ホステージ』は、私が誰かを救う、という観客が分かりきったブルース・ウィリス映画にはしたくありませんでした。これは単なるアクション映画ではなく、“ファミリー”というテーマがあります。自分の家族を守るために、ひとりの男がどこまでやれるか、果たしてそれがどのような結果となるか、という点を描きたかったのです」。
“ホステージ”とは「人質事件」のこと。もし映画と同じシチュエイションに巻き込まれたら…?との質問には、慎重に言葉を選びながらこう答えた。「まず、そのような状況には絶対直面したくないと思っています。撮影を通じて実際に交渉人として活躍されている方とお会いしたのですが、つくづく思うことは、警察の関係者、また緊急事態に出動される方々の映画は作られなければならないということです。なぜなら彼らは大変危険な中で、命を懸けて働いています。それにも関わらず給料もあまり良くないという現状もあります。彼らの仕事の素晴らしさに焦点を当てて映画をつくるということは、とても大切なことだと思っています。作品ごとに新しい職業を得て、新しい経験を得られることが映画の楽しさですよね。でも現実で唯一私が経験する交渉といえば、3人の娘と今日の洋服はどうしようか、ということくらいです(笑)」。
本作ではその実の娘との共演も果たしたブルース。「あのシーンは、原作にはないシーンなのです。脚本段階ではそれほどエモーショナルには描かれていなかったし、スタッフもそれほど期待していなかったと思うのですが、娘とのシーンということで私自身がひどく感情的になってしまいました。当時、娘のルーマは15歳で、映画の中ではすれ違ってしまった父娘を演じましたが、実際はとても仲が良いんです。なので今回はとても楽しく共演できました」と感想を語った。
複雑な長編を見事に2時間の映画に集約した脚本家のダグ・リチャードソンは、ブルースの次作(2006年夏公開予定)『ダイ・ハード4.0』も手がけている。彼との仕事については「彼の特徴としては、なんの変哲もないけれど人と人とが心を通わすシーンの感情表現が上手いということと、それとは反対の大がかりなシーンも上手く仕上げるという点があります。『ダイ・ハード4.0』で我々が目標としていることは、最初の3作品を観てない人でも十分に楽しめる、エキサイティングなものにしようということです。そして私が一番好きな『ダイ・ハード』くらい面白いものにしたいと思っています」
相変わらずシャープな体型をキープしているブルース・ウィリスは、50歳になった今もメジャーからインディペンデント映画まで幅広く活躍中である。そのラインナップには『ザ・リング2』でハリウッドに進出した中田秀夫監督との仕事も含まれているとか。気になる作品は『THE TOURIST』というもので、『リング』とはまた違ったホラーだという。「私は俳優という仕事がとても好きです。先日共演したサーディン・キングスレーからは次の言葉をもらいました。“俳優とはグラディエイターと同じである。つまり前の作品がどれくらい成功しても、またどのくらい失敗しても、次の作品では観客を楽しませなければいけない、勝たなければいけない。それこそがチャレンジだ”と。そして私は今そのチャレンジをとても楽しくやっています。みなさんは楽しく仕事されていますか?」。最後は会場に向かって質問を投げかけ、笑いを誘った。
「今日はたくさんの方々が来てくださって本当にありがとうございました。ドウモアリガトウ!」と終始紳士的なサービスを忘れなかったブルース・ウィリス。彼のアクション復帰作『ホステージ』は今後のアクション映画を語る上で重要な1作となるに違いない。
《シネマカフェ編集部》
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