『コーヒー&シガレッツ』レビュー
「喫茶店でコーヒーを飲む」。この何気ないシーンが実は映画にとってはとんでもない魔物なのです。なにせ人物がテーブルについて座っているだけでたいした動きがない。下手をすればどうしようもなく退屈なシーンになりかねません。だから全編がそれで構成された映画と聞いて、さすがに無謀な試みではないかと不安にもなりました。しかしそこはジャームッシュ、確かに人々がコーヒーを飲みながらだらだらと喋っているだけなのに不思議と飽きさせず、気がつくとすっかりその空気に巻き込まれてしまっていました。
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
「至福のリラックスムービー」というキャッチコピーがついていますが、観た実感としてはむしろ緊張しました。なぜならそこで交わされている会話から話し手たちのきわどい人間関係が浮かび上がってくるからです。それでいてじめじめした感じにはならず後味はきわめてドライ。何気ないひと言の裏に人間関係の微妙なパワーバランスをうかがわせる手際の鮮やかさは、よくできた上質なコントのようで、思わず座布団1枚をあげたくなりました。
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