『ぼくを葬(おく)る』レビュー
素直でいることはとても困難だ。それでも可能な限り本音でいたいと思うのは、それが通じたときに感じる幸福感が他に代え難いものだから。もし自分が周囲の人々に正直になれず死を迎えるとしたら、残る悔いは如何ほどだろうか。 本作は約80分で描かれる、ある男性の死に際。「生存率は5%以下」と余命を宣告された主人公を演じるのはフランスを代表する若手俳優、メルヴィル・プポーである。すべてを捨て去ってしまいたいと思うほどの絶望、本当に失ってしまったとき内側に残るのは狂気、死を意識してなお打ち明けられない本当の愛…。痩せ細っていく身体と鋭い眼光にはいつも寂しさがあって、それが彼自身を物語る。ゲイカルチャーなど分かり難い文化の上で語られているが、死を意識した人間のうつろいや家族への思いには共感できる感情が見て取れる。
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そしてラストシーンの風景は清々しいほど素直で純粋だ。この物語は生や死を難解に見つめる作品ではなく、正直になれないひとりの人間のドラマだったのだと、彼の死体を見てやっと気付いた。
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