世界の映画館 vol.02 台北
今さら、あえて言う必要もないが、どんな物にもタイトルは重要である。例えば同じ写真でもタイトルをつけるだけで、イメージが全然、変わってしまう。
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だからこそ映画の邦題にはメチャクチャ興味がある。たいていは配給の担当者達が「エイッ!」ってつけているのだろうが、邦題をつける職人がいたら、一度、インタビューをさせていただきたいくらいである。
数年前にショーン・コネリーの『小説家を見つけたら』という映画があったのを覚えているだろうか。原題は『Finding Forester』。直訳したら「フォレスターを見つけたら」なのか「フォレスターを探して」になる。ちなみにフォレスターとは、処女作でピユーリッツアー賞を受賞した後、二度と作品を出版しなかったショーン・コネリー演じる伝説的な作家。この邦題がいいか?悪いかはきっと賛否両論があるだろうが、僕はこの映画を見ると台北の映画館で見たポスターを思い出すのである。
邦題よりもっと面白いのが中国語のタイトルである。漢字オンリー。漢字という文字は1文字で空気感を変えてしまう。台湾だから、厳密に言えば、台湾語なのだろうが、同じ漢字には違いない。その漢字を見ると、どんな映画なのか自分なりに想像してしまうことが楽しい。
『小説家を見つけたら』の台湾タイトルは『心霊訪客』。もし、写真がなければ、ホラー映画と言われても納得してしまうし、「アダムスファミリー」や「キョンシー」のようなコメディだよと言われれば、そう思えてしまう。きっと小説家としての心は既に霊のような状態になっていたショーン・コネリーの元に、訪れた客によって、新しい展開に向かうお話と考えれば納得してしまう。
もっと、すごいのは、邦題では英語をそのままカタカナにした『ミッション:インポッシブル』。台湾のタイトルは、なんと『不可能的任務』。見ただけで納得である。不可能的な任務をこなすトム・クルーズ! 不可能じゃなく不可能的というのが笑える。こうして台北の映画館の前で、様々なことを想像しながら、ニヤニヤするのが楽しかったりするのである。
ちなみに、映画とは関係ないが、台北の街でこんな鞄を見つけた。タイトルを間違えちゃったりするとこんな面白いことになるのである。「元祖!ドラえもん本舗のどらやき」って何だ! でも、ちょっと食べてみたい気もする。
《text:Ishiko》
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