『カポーティ』レビュー
トルーマン・カポーティ。彼の名前は知らなくても『ティファニーで朝食を』の原作者といえばその偉大さが分かるだろう。若くして文壇デビューを飾り、名声をほしいままにしただけあって、プライベートもかなりハデだったようだ。単にスキャンダラスの象徴という意味ではない。社交的でユーモアや表現力にあふれ、周囲を惹きつけてやまない魅力あふれるキャラクターが随所で垣間見える。
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しかし本当の彼は、孤独な幼少期を体験し、心に深いキズを負ったナイーブな男だったのだ。立場の弱い相手に自分の姿を投影し過ぎるところもあり、同性愛者ゆえに公私混同のふるまいをして友人からのおとがめがあったりもした。
この作品で描かれている「冷血」という小説で、カポーティは殺人犯のペリーに特別な感情を抱いていたことは間違いない。単なる取材の対象から心の奥底で分かり合いたいと思うように変わっていった様子は、カポーティの感情の起伏から見て取れる。
実際の事件を小説化する"ノンフィクション・ノベル"という新たなジャンルに挑んだ天才のプレッシャーは想像を絶するもので、あの独特の白い顔を見ていると、その才能が燃え尽きて灰になってしまったかのようにも思えた。
《text:Shin Kumagai》
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