2007年前半、注目の日本映画 vol.2 『神童』で拍車がかかる?クラシックブーム
ここ数年、続いている空前のクラシックブーム。コミックに引き続き、ドラマ、アニメーションと絶好調の「のだめカンタービレ」をきっかけに、敷居の高いと思われていたクラシック音楽に興味を持った人も多いとか。そして、もうひとつ、日本のエンタテインメント業界からクラシックブームに拍車をかけそうな作品が誕生しました。それが、さそうあきらの漫画を原作に持つ『神童』。
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海外では、当たり前のように作られているクラシック音楽映画。でも、日本ではこの作品が、“初の本格クラシック映画”なのだそう。とはいえ、難しいことは何もなく、“高尚”なクラシック界に生きる人たちも生身の人間であることをしっかり教えてくれるので、人間ドラマを手がかりに、堅苦しい思いをすることなく、音楽を純粋に楽しみ受け入れることができるのです。流れる楽曲は、べートーヴェン、メンデルスゾーン、ショパン、シューベルト、モーツァルトと、そうそうたるものばかり。ただ、誰のどの作品かなどは素人にはどうでもいい。ただ、シーンを彩る美しい旋律に心奪われるのです。
主人公は、“神童”と呼ばれるティーンのピアニスト。ただでさえ危うい年頃なのに、恵まれた才能をもてあましてアイデンティティが確立できずにいます。「なぜ皆は私にピアノを弾かせたがるの? どうして弾かなきゃいけないの?」と。そんなことを考え続ける天才少女は、やがて落ちこぼれの音大浪人生に出会い、必然とも思える“理由”を手繰り寄せていくのです。
この作品を観ていてよく理解できたのは、才能あるピアニストにとって、ピアノは弾くものではなく、“音楽になる装置”なんだということ。「演奏」を超えて、自分自身が音楽そのものになることが、良い音楽家の証ということなのかもしれません(私には計り知れない世界ですが…)。
そんなことに気づかせてくれた『神童』には、『シャイン』に通じるものも。1996年のアカデミー賞主演男優賞に輝いた(作品賞にもノミネートされた!)オーストラリア映画。数奇な運命をたどった実在する天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いたドラマです。彼の演奏を生で聴いたことがありますが、ブツブツと独り言をいい、独特のタッチで曲を繰り出す。その時に披露された彼の演奏は、テクニック的には完璧でも何でもなかったかもしれません。でも、体をゆらし、とにかく楽しそうでした。そして、今思うに、彼はそのとき、まさに音楽そのものだったのです。
そんなことも思い出させてくれ、音楽家の本質について納得させてくれた『神童』。成海璃子、松山ケンイチという若手の演技も初々しく、鑑賞後の後味もとても爽やか。日本から世界へ羽ばたいている若手演奏家たちの素晴らしい演奏も堪能できるので、「ちょっとクラシックが気になっている」という人、「これから世界を目指す」という演奏家の卵たちにもおすすめですよ。
《シネマカフェ編集部》
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