「陰のあるナイーヴなギンコ役にはオダギリジョーさんが浮かんだ」大友克洋監督『蟲師』インタビュー
“世界のオオトモ”は貪欲だ。『AKIRA』『スチームボーイ』など、全世界で多くのクリエイターに影響を与え続ける大友克洋監督。彼の最新作が『蟲師』だ。
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原作は350万部以上を売り上げる同名人気コミック。幽霊や妖怪といった目に見えない“もののけ”の類とされる蟲が引き起こす様々な現象を、蟲師・ギンコの目を通して描き出すファンタジックな世界観が魅力だ。日本を代表するクリエイターとして、確固たる地位を築いている監督だが、他の作家が手がけた作品を映画化することに抵抗はなかったのか。
「いろいろな人の感覚や才能と一緒に仕事をするのは楽しい。他人が作ったものが嫌いだと、結局自分ひとりでマンガを描いていればいいだけになる。様々な刺激を受けることで自分の発想もどんどん広がっていく気がするんですね。別に自分を教育するつもりでやってるワケじゃないですが(笑)」
注目のキャストは、今の日本映画をけん引する顔ぶればかり。
「マンガのキャラクターを実写でやるとなると、かなり肉付けして人を造形しなければならない。前もってシミュレーションするんです。例えばギンコは肌が弱いのかなとか、直射日光はキツいかなとか。あのビジュアルが明治時代に山間部を歩くというのは不思議なことなので、それをいかに普通に見せるかを考えて、なんとなく陰のある存在ということでオダギリさんが浮かんだんです。ガチガチに強いというよりナイーヴな感じがうまく出せたのでは。大森南朋さんが演じた虹郎とギンコの関係は、『明日に向って撃て!』のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードみたいにしたかった。ぬい役は、蟲師はかなり山の中を移動するから、アスリート的な要素も持ちつつ(笑)、ただ綺麗なだけではなくたくましさというか、洗練されたフィジカルさを持っているということで江角マキコさんにお願いしました。蒼井優さんは撮影当時まだ20歳前で、アメリカに写真集を撮りに行く時だったらしく『日焼けしないでよ』なんて言ってましたね(笑)」
ファンにとって大友監督といえば、やはりアニメーションのイメージが強いはず。今回も実写でありながら効果的なCG映像がふんだんに盛り込まれ、“大友カラー”と言えるような映像美が堪能できる。「実写はほとんどが思いがけないシーンの連続。だからプランを完璧に練って現場に行くと、結果が全然違うということが多いんです。アニメだって、人の手が加わることでどんどん変わっていく。その変化が面白いと思えないと、この仕事を続けるのは難しいですね。もっと作品に関わりたい、もっといろいろと作り出したいという気持ちがあるからやり続けているんだと思う。人と交わったことで、これまでとは違う自分の面が出てくるのが好きです」
いまだに変わっていく自分にワクワクするという大友監督。そのワクワクを追い求めて完成した『蟲師』は、新しい“オオトモワールド”の幕開けになるかもしれない。
《text:Shin Kumagai》
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