人はみんなつながっている『バベル』役所広司、菊地凛子、二階堂智、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督記者会見
メキシコ・モロッコ・東京、世界3ヶ国を舞台に人類の希望と絶望を描いた衝撃のヒューマンドラマ、『バベル』。ブラッド・ピット主演、菊地凛子アカデミー賞ノミネート、3大陸にわたる壮大なロケ…と早くから注目を集めている本作の監督を務めるのは、『21グラム』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。3月7日(水)、来日した監督と日本キャストの役所広司、菊地凛子、二階堂智を迎え記者会見が行われた。
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2000年の東京国際映画祭、2004年の『21グラム』公開時に続いて、3度目の来日となるイニャリトゥ監督。「日本に初めて来たのは2000年。『アモーレス・ペロス』は東京国際映画祭でグランプリを受賞したので忘れられない思い出となりました(笑)。2004年に再び来日した時はちょうど『バベル』のアイディアを考えていた頃。来日中に障害を持った少女の世話をしていた老人や、若いろう唖者に出会い、それが本作を思いつくきっかけにもなりました。東京は故郷のメキシコ・シティにも似ていますが、この雑然とした都会で感じる孤独は、とてもつらいと思ったんです」
そのイニャリトゥ監督が、東京編に抜擢したのは、『SAYURI』ですでに活躍の場をハリウッドに広げ、海外でも評価の高い役所さん。「たくさんの戦争映画を観ていますが、これほど銃声で痛みを感じたのは初めての経験。映画の中では銃弾によって悲しい物語が各国で繰り広げられますが、最終的には人々に希望を与えてくれると思う」と本作がこれだけ世界中で賞賛されている理由について分析した。
体当たり演技で見事アカデミー賞ノミネートを果たした菊地さんは、もともと監督の大ファンだったそうで、「監督はとても情熱的で、美しい言葉を使う。家族のように接してくれて、お互い信用していたので、とてもやりやすかったです」と絶賛。共演の二階堂さんも、「包みこんでくれるような監督でした。現場の空気の作り方がアーティスティックで、いい緊張感がありました」と付け加えた。
モロッコ、メキシコロケの後、最後に撮影が行われたのが東京。しかし、唯一都会が舞台であるにも関わらず撮影許可がなかなか下りず、早朝の高速道路で人工的に渋滞を作ったり、ゲリラ的に撮影を敢行せざるを得なかったことを明かしてくれた。「日曜の朝7時、1分くらい渋滞をつくっただけなのに、20分後には警察に追われる身になっていました。それが東京で撮影した最初のシーンで、先が思いやられましたが、その後は楽しむようになりました。学生映画を作っているようなノリで、マスクを被ったり、メキシコのゲリラの気分でした」と監督は笑った。
『バベル』というタイトルは、旧約聖書に登場する、言葉をバラバラにされた“バベルの街”のエピソードに由来するが、本作はコミュニケーションの難しさをテーマとしながら、深いところでは人間はみんなつながっていることを私たちに訴えかける。最後に、監督の日本撮影を振り返ってのメッセージで会見は締めくくられた。「『バベル』の物語と同じように、私は日本語も手話もできません。通訳を通しながら撮影をしましたが、でも言葉ではなく、手を握ったり微笑んだり、それらが非常に重要でした。問題は言語ではなく、自らが自分たちの中に障壁をつくってしまっているんだと体感できた、素晴らしい経験でした」
話題作『バベル』は4月28日(土)より日本公開される。
《photo:utamaru》
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