「仕事を選ぶときの第一の決め手は監督」リュディヴィーヌ・サニエ『情痴 アヴァンチュール』インタビュー
危険な恋になると感じつつも惹かれてしまう女性──『情痴 アヴァンチュール』でリュディヴィーヌ・サニエが演じたガブリエルはまさにそれ。天使のような愛らしさと、すべてを知り尽くした魔性をあわせ持ったその姿は、同性から見ても美しいと思ってしまうほど。『焼け石に水』('00)、『8人の女たち』('02)、『スイミング・プール』('03)など、フランソワ・オゾンの秘蔵っ子として着実に成長を遂げているサニエに、この映画の魅力を訊いた。
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スリープ・ウォーカー(夢遊病者)でトラウマを抱えた女性・ガブリエルと、彼女の秘密に魅了されていく青年・ジュリアンとの危険な恋を描いている本作。
「シナリオを読み始めたときは、弱くてもろい女性だと思ったの。でも、読み終えたときには、とても強い女性だと感じたわ。自分を入れていた籠や悪循環を取り払って自由を手にしている、実はとても強い女性なの」と語る。また、そんな難しい役を演じるにあたって夢遊病のリサーチはもちろん、ある役作りをしたのだという。
「自分でもコントロールできないものを出せたらいいと思って──わざと睡眠時間を削って自分を疲れさせることにしたのよ。それによって精神的にとても疲労した状態になれたわ。緊張感を持って演じることができたの」
立て続いたオゾン監督作の出演後、ハリウッド進出作の『ピーター・パン』('04)でティンカー・ベルを演じていることもあり、ガブリエル役で見せるその妖艶さに驚く人も多いだろう。フランスから世界へと羽ばたいた後に『情痴 アヴァンチュール』を選んだ理由をこう語る。
「私が仕事を選ぶときの第一の決め手は監督。その次にストーリーね。もちろん、演じるキャラクターに共感が持てるかどうかも大切よ。グザヴィエ・ジャノリ監督は自分の身を投げ出すような情熱のある監督なの!」
本作が長編2作目となる新鋭若手監督ではあるが、ジェラール・ドパルデューを主演に据えた3作目『Quand J'etais Chanteur』がカンヌ国際映画祭のコンペティションにノミネートされるなどその注目度は高い。そして、ガブリエル役はこれまでに演じたことのない女性でもあるという。
「『ピーター・パン』のような明るいファンタジー映画の後だからこそガブリエルのような女性を演じてみたいと思ったの。彼女がいるのは暗黒の世界なのよ。人間の深層心理を描いた作品で新しい役を演じてみたかった。それから、私の知らない視点で描かれているということ、フィルム・ノワールというやったことのないジャンルだったことも決め手だったわ」と、男と女が共に生きていくことの難しさを鋭く描いている点も気に入っていると語ってくれた。
また、本作で共演したジュリアン役のニコラ・デュヴォシェルとの間に愛娘をもうけているサニエ。「今回、母親の演技をしたことで子供が欲しいと思うようになったの」と、ガブリエル役が私生活にも大きな影響を与えたと話す。残念ながらすでにニコラとは破局しているが、いかにサニエが演じたガブリエルという女性が、危険な魅力に満ちていたのかという証と言えるだろう。現在、28歳という女盛りの年齢に達したサニエ。彼女が今後どんな作品を選んでいくのか本当に楽しみだ。最後に今後仕事をしてみたい監督を訊ねると──「小津監督、ヒッチコック、キューブリック…もうみんな亡くなってしまっているのよ」と巨匠の名前がズラリ。…ということは今回、彼女のお眼鏡にかなったグザヴィエ・ジャノリ監督は要チェック!
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