「ブッチャーよりもツォツィの方に理解出来るものがあった」プレスリー・チュエニヤハエ『ツォツィ』インタビュー
“ツォツィ”とは、「不良、チンピラ」を意味する南アフリカのスラング。南アフリカ最大の都市・ヨハネスブルクのスラム街を舞台に、“ツォツィ”と呼ばれる一人の少年が、ある赤ん坊と出会うことで自分の人生を見つめ直し、暴力と窃盗に明け暮れる日々から抜け出していく物語『ツォツィ』。2006年にアフリカ映画初のアカデミー賞外国語映画賞受賞という快挙を成し遂げた本作の主演、プレスリー・チュエニヤハエに話を聞いた。
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演劇中心に活動を続けていたプレスリーにとって、『ツォツィ』は初の映画出演作。「複雑な内面を持つキャラクターに興味を持っていた」というプレスリー。最初はツォツィの仲間で残忍な性格のブッチャー役でオーディションを受けたそうだ。
「でも自分にとってはツォツィの方が心惹かれるキャラクターで、ブッチャーよりもツォツィの方に理解出来るものがあったんです。だから監督にツォツィ役のオーディションを受けさせてほしいと頼んだんです」。こうしてプレスリーはツォツィを演じることとなった。プレスリー自身もキャラクター同様、治安の悪い地域で育ったそうだが、この経験が「この役を演じるにあたって非常に役に立った」という。
キャラクターを作っていく上では、監督の演出も大きな助けになった。「監督は、ツォツィが突然良い人になったりとか、何かがきっかけで突然、同情をよせられるようになったり、観ていてすぐに分かる、まさにこのタイミングで彼は目覚めたんだと分かるような作品にはしたくないと話してくれました。ツォツィは、作品の最初と最後では明らかに違うけど、それは少しずつ変わっていく心の旅でもあるのだと。ですが、脚本通りの撮影ではなかったので彼の心の動きを掴むのが難しかった。監督は常に私の側にいて、たとえば、このシーンのツォツィはこういう気持ちになっていて状況はこんなことになっているから、と詳しく説明してくれました。それがとても役に立ちました。それがなかったらもっと難しかったと思います」
劇中の“ツォツィ”の生活は、今の南アフリカの現実に近いというプレスリー。現状を改善するために、考えていることがあるそうだ。
「サッカーのワールドカップが南アフリカで開かれますよね。こうしたイベントの時には、通りでいろんなパフォーマンスをするというのが、南アフリカの伝統なんです。だからこの時期に、子供たちの演劇グループみたいなものを作って、いわゆるストリート・シアターみたいなものをやりたいと考えています。通りでたむろしている子供たちはお金がほしいという以上に、人に認められたい、評価されたいという気持ちがすごく強いんです。そういう意味でも、僕が考えているグループは、みんなに認ような、そういうチャンスになるんじゃないでしょうか。だからこういう機会をどんどん増やしていきたいと思っています」
「何か暴力を受けていたり、問題を抱えている少年というのは、自分を責めてしまったりなどして、気持ちが内側に向いてしまっていて、自己表現できないことが多いんですよね。ツォツィも自己表現したいのに、言葉でできないがゆえに暴力に走ったんだと思っています。この作品はツォツィの心理を深く掘り下げてリアルに表現していると思います」
アパルトヘイトが終焉して10数年。南アフリカの現実は今も厳しいが、プレスリーの活動が、ツォツィのように人生に希望を見いだせるものになることを願おう。
《シネマカフェ編集部》
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