ジュードが自身に一番近いキャラクターを演じた『こわれゆく世界の中で』レビュー
上質で大人の愛を鋭く描くことに長けたアンソニー・ミンゲラ監督は、これまでにも『イングリッシュ・ペイシェント』、『コールド マウンテン』という哀切で美しいラブストーリーを送り出してきた。今回、彼が『こわれゆく世界の中で』のテーマの中心に据えたのは“破壊”から生まれる“真実の愛”。近代都市に生まれ変わろうと破壊と再生が共存するロンドンの街を舞台に、ひとりの男とふたりの女の人生をリンクさせ、愛とは何かを描いていく。
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大人のための愛の物語と言える本作にキャスティングされたのは、『ホリデイ』、『オール・ザ・キングスメン』など出演作が立て続くジュード・ロウ。ジュリエット・ビノシュ、ロビン・ライト・ペンという熟女オーラを浴びることで今までとは一味違う悩める男・ウィルを「僕自身に最も近い」という言葉通り、等身大に演じている。
物語はウィルをとりまく2組の家族の間にあるそれぞれの心の壁の崩壊と修復──ウィルが長年一緒に暮らしている恋人のリヴと彼女の娘ビー、ウィルの建築事務所に窃盗に入った少年・ミロとその母親のアミラ。子供が抱える障害、その母親が抱える悩み、2つの家族と2人の女性の間で揺れ動くひとりの男の心の旅が綴られる。
そして、ラストに待っているのは様々なダメージを乗り越えて得られる人間の心の強さと美しさ。じんわりと心に響いてくる何とも深い感動に酔いしれることだろう。また、ミンゲラ監督と言えば、映画音楽界の重鎮、ガブリエル・ヤレドとのコンビで幾度もアカデミー賞にからむ作品を次々と作り出すなど、音楽へのこだわりはひとかたならぬことで有名。今回はなんと90年代のUKをはじめ世界のクラブシーンを塗り替えてきたアンダーワールドとヤレドがタッグを組んでいる。というわけで音楽も要チェックなのである。
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