「この地上で幸福な人に一人でもいいから会ってみたい」監督語る『ここに幸あり』
仕事と時間に追われた毎日から一転、突然訪れる“人生の休暇”の中で発見される、真の意味での豊かさや喜びを描いた『ここに幸あり』。『月曜日に乾杯!』、『素敵な歌と船はゆく』など、ユーモア溢れる温かい眼差しで人生讃歌を描き、多くの日本人を魅了してきたオタール・イオセリアーニ監督が、このたび本作を引っさげて来日し、9月22日(土)に会見を行った。
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まずは作品のテーマについて「この中で取り扱っているのは、(人間と)権力との関係ですが、結局私はどの映画でもいつも同じことを語っています。私は“人間がこの不幸な社会の中でどのようなものであるか”という人間存在の分析を行っています」と語る監督。本作の主人公・ヴァンサンは、職も金も住む家も何もかも失くした代わりに、忘れかけていた自由と人間の温もりという幸せを手にするが、監督にとっての“幸せ”とは? 「世界の果てにある日本へやって来て、グルジアという私の国のことを全く知らないみなさんが、この映画で私の提案する世界観を少しでも理解してもらったと思えたら、幸せかもしれません」。
ちなみに、主人公のヴァンサンを演じたセヴラン・ブランシェは、本作が初めての映画出演。過去の作品でもしばしば、素人を起用してきた監督は、その理由をこう語る。「人間はみな生まれつき自然に俳優ですが、職業としてプロの俳優になる人は危険です。彼らは人間としての個性を消そうとします。ノーマルに生きていない、常に演じ続けているのです。ですから、私はノーマルな人々と仕事をするのが好きです。人間各々の中にはアーティスト的な部分が隠れていますから、少しだけ演技指導さえすればよいのです」。
なお、本作の鑑賞に際して「字幕を読んではいけません」と念を押す監督。「スクリーンに映っているものだけで(内容が)分からなかったとしたら、それは失敗作です。字幕を読んでいたとしたら、字幕を読んでる間は映像を見ていないことになります。それはとても残念です。ですから、スクリーンの中で起きていることだけを見てください。全てお分かりいただけると約束します」と、確たる自信を見せながら、映像から伝わるものの力を訴えた。お金でも名誉でもなく、人間にとって本当の“幸”とは? 『ここに幸あり』は11月下旬より恵比寿ガーデンシネマほか全国にて順次公開。
《シネマカフェ編集部》
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