秋の夜長、人恋しくなったときに──vol.3 心の隙間とどう向き合う?
連日のようにメディアで放送されている悲しい事件や事故。突然、愛する者を失った人々の悲しみは、想像もできません。ところが、そんなデリケートな心理を描写することに挑んだ作品が。ジョディ・フォスター主演の『ブレイブ ワン』です。
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結婚まであと少し。幸せいっぱいの時期に、婚約者の命を暴力によって奪われ、自らも重傷を負った女性が主人公。大切な人を失ったことでできてしまった心の隙間、事件によって受けたダメージ、暴力への嫌悪と恐怖を抱えながら、自ら暴力的な生活へ飲み込まれていくという、日本でも議論を呼びそうな作品です。
暴力で傷ついた人間が、暴力を拠り所にしていく姿に、賛否両論集まりそうですが、これは一種の「踏み絵」のような作品かもしれません。自分は人権派だと思い込んでいても、街で人々を脅かす悪人たちがジョディ演じる主人公にやり込められていく姿に、心のどこかでスカッと爽快感を感じてしまうかもしれませんし、逆に自分は過激だと思っていても、不快に思うかもしれません。
もちろん、罪を犯した人間は法で裁く=罪を犯していても法で守られる権利がある、というのが正論なのですが、被害者の心理としてはそれでは済まないものがあるのも事実です。しかも、法を破った人間を法で守らなければならないため、どこかで被害者にしわ寄せがいくなど、綻びがないわけではない。そんな被害者心理をできる範囲で想像してみるにつけ、この映画はきれいごとではとても片付けられないのだと深く考えさせられるのです。
最終的に、主人公はまっとうな人生に戻っていくことができるか否かが焦点となるのですが、そのときに重要となるのが、婚約者を失ったという残酷な事実とどう向き合うかということ。会いたいのに会えない…。そんなどうしようもない人恋しさと人間はどう向き合い、それをどう乗り越えていくのか。出会いもあれば必ず別れもある人生において、これは永遠の課題なのかもしれません。
監督はニール・ジョーダン。製作総指揮も務めるジョディの説得もあり、珍しく自らの手による脚本以外でメガホンを取っています。丁寧な心理描写に定評のある彼だからこそ可能だったデリケートな出来栄え。社会に提起する問題も多い本作は、娯楽作ながら観るのに心の痛みを伴いますが、それでも、観る価値があるということをあえて強調しておきたいと思います。
ラストには一筋の光が差し込みますが、それにも賛否両論が集まるかもしれません。さあ、あなたはどう考えるでしょうか?
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