【東京国際映画祭レポートvol.32】子供の目線で綴られた『思い出の西幹道』
『パープル・バタフライ』のロウ・イエ監督の美術監督として知られる、リー・チーシアン監督の長編2作目『思い出の西幹道』(仮題)。コンペティション部門での上映後にティーチンが行われ、チーシアン監督と主演と務めたシェン・チアニー、脚本を手がけたリー・ウェイが出席した。
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「1994年に本作の構想が立ち、それから10年以上、心のなかでこの企画を温めていました」と言うチーシアン監督。ウェイを見ながら「その当時大学生だった彼女に『自分が書いたものがあるんだけど、見てくれないか』と誘って、この物語を一晩かけて話したんです。すると彼女は涙を流しながら聞いてくれて。それを機に、共に脚本を執筆し始めました」と語った。チーシアン監督とウェイは、実は夫婦という間柄。「寒い日は魔法瓶とコップだけをを持って、共に石のベンチに座り、ずっと書いたこともありましたね」とふり返った。
本作の舞台は、文化大革命の影がまだ色濃く残る1978年の中国北部。「人々が世の中がこれからどうなっていくのか分からないと、不安を抱える状況のもと、ある地方の小さな町を仮定して描こうと思いました。そしてその時代の人々の運命であるとか、孤独、愛を求める気持ちを描きたいと思いました」と、作品への思いをチーシアン監督は語る。さらに「引きや長回しの映像を入れたのは、私自身の子供の頃の記憶と関係があります。私は自分の子供時代や今までの人生をふり返って、これまでの道のりを描きたいと思いました。加えて、先入観のないきれいな子供の目から見た、大人の世界を描きたいと思いました。そのためにどう撮影すればいいのかを考えたとき、動物ドキュメンタリーで映される動物のような、自然の中に人間を小さく置いた映像、そのような客観的な描き方が良いと思ったんです」とカメラワークについて語ってくれた。
そして、本作の中で見事な踊りと擦弦楽器・二胡の音色を披露してくれたチアニー。「学院に入る前に新体操をやっていましたので、踊りの基礎は分かっていました。二胡も、以前中国楽器の出し物をやったことがありまして、2か月間集中訓練を受けたことがありました」と、苦労は少なかったようだ。今も中央戯劇学院に通う学生で、本作で映画初出演を果たした彼女。「だいたいこういう感じで」と言う監督の演出に対しては、「言葉で説明できないものを、感覚として理解できました。その時の役の、本当の気持ちを出しました」と答えくれた。「芸術映画に出れるということで、とても期待していました。純粋に出てみたかったので、嬉しかったです」と言う彼女の活躍には今後も注目したい。
長い年月をかけて完成させた本作について「インクがだんだん印刷物になっていって、この映画ができたように感じます」とチーシアン監督が語る『思い出の西幹道 (仮題)』。チャン・イーモウの傑作『あの子を探して』を凌ぐ作品と評価が高いだけに、コンペティション結果をお楽しみに!
「東京国際映画祭特集」
http://blog.cinemacafe.net/tiff2007/
《シネマカフェ編集部》
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