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「2人の関係を曖昧に見せたかった」加瀬亮が語る『オリヲン座からの招待状』

先日開催された東京国際映画祭でも特別招待作品として上映され好評を博した『オリヲン座からの招待状』。先代館主・松蔵が亡くなり、残された美しい妻・トヨと共に映画館・オリヲン座を守っていこうとする留吉。“先代の妻を寝取った”と陰口を叩かれながらも、オリヲン座を守り、トヨを支え続ける彼を演じた加瀬亮に話を聞いた。

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『オリヲン座からの招待状』 加瀬亮 photo:Yoshio Kumagai
『オリヲン座からの招待状』 加瀬亮 photo:Yoshio Kumagai 全 3 枚
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先日開催された東京国際映画祭でも特別招待作品として上映され好評を博した『オリヲン座からの招待状』。先代館主・松蔵が亡くなり、残された美しい妻・トヨと共に映画館・オリヲン座を守っていこうとする留吉。“先代の妻を寝取った”と陰口を叩かれながらも、オリヲン座を守り、トヨを支え続ける彼を演じた加瀬亮に話を聞いた。

何かが大きく動くというよりも、映画に登場する映画館・オリヲン座のようにひっそりと、そして穏やかに2人の男女の心の動きが描かれている本作。
「物語は静かだけど分かりやすいし、オーソドックスだったので、中途半端に演じるように気をつけました。台本を読んだときにやっぱり、少しキレイ過ぎる話だなと思ったんです。監督はプラトニックなこと、キレイなことをやりたいとおっしゃっていたんですが、なかなか、それを素直に受け入れられなくて。どう演じたらいいんだろうと考えたときに、“プラトニックといっても、あんなにキレイな人が横にいたら、いろいろ葛藤があったんじゃないか”って考えたんですよね。男だったら当然思うこととかを全部生かして、はっきりした表現をあまりしないようにというか…。別にキレイな行動をしたからといって、それとは裏腹な気持ちを持っていてもいいわけだし、そういう意味で、いろいろな感情を持ったまま、中途半端に演じていいんじゃないか、みたいなところはすごく気をつけました」。

その“プラトニック”という部分は、原作とは違うんじゃないかと加瀬さんは言う。
「原作はプラトニックじゃなかったという感触があったんです。だから、どうやったらプラトニックになるんだろうと考えたときに、先代役の宇崎(竜童)さんとの関係を自分の中に大きな重しとして置きました。あとはもう、自分の中で葛藤を繰り返していくっていうことでいいんじゃないかなと考え直したというか…」。

「こんな男にはあまり会ったことがない」と笑う加瀬さんだが、ここで生きてくるのが“時代”だった。
「やはり僕らは豊かな時代に育っているから、欲があるんですよね。でも、あの(昭和30年代の)時代を“こじき同然だった”というセリフもあわせて考えると、もしかしたら本当に温かい布団とご飯があれば満足していたかもしれない。今の自分たちより我慢のレベルが高いだろうし…と考えていったら、いろいろ納得できたんです。最初はやっぱり自分と照らし合わせちゃうから、“こんな良いヤツいないだろ”みたいな。ちょっと斜めから入っていってしまいました(笑)」。

現場では撮影が中断されることもしばしばだったそうだ。
「静かな映画に見えるんですけど、登場人物の心の中はすごく激しく動いているんですよね。だから静かなシーンほど、監督やプロデューサーも含めてこうしたらいい、ああしたらいい、といったような話し合いがあったような気がします。一番分かりやすいのが蚊帳の蛍のシーンです。あそこも原作とは違う動きなんですよ。いろんな動きを試していく中であの形が見つかった。初めて2人の距離が見つかったっていうか…。僕にとって、一番象徴的でした」。

その微妙な距離感を出すために、トヨ役の宮沢(りえ)さんと事前に話をしたのかと思いきや「特にはしていません」と言う。
「現場に入ってテストの段階で台本通りにやってみて、違和感があれば、そこからまた動きを変えたり、その時にちょっと話したりはしました。僕としては、撮影が終わった後の打ち上げよりも、撮影に入る前の“打ち入り”の方が効果的だと思っているんですけど、ほとんどないんです。僕は何か迷ったりすると友達を集めて、“こういう場合はどう思う?”とか、いろいろ聞いたりするんですよ。やっぱり人と意見を交わすことで発見することってすごくあるから、現場でもそういう時間が持てるといいですね」。

「面白いドラマがあればテレビももちろんやりたいと思いますけど、映画の現場で育ってきたので、やっぱりそこがなじみやすいんですよね。声をかけてくださる方もほとんど映画の方ですし、あまり自分でどうなるもんでもないな、と思っています」と言う加瀬さん。先日、犬童一心監督作品の撮影を終え、現在はミシェル・ゴンドリーの『TOKYO!』を撮影中。「期待しています」と声をかけた時の照れくさそうな笑顔が印象的だった。

《photo:Yoshio Kumagai》

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