「マリアンヌは素晴らしい女性」アンジェリーナ・ジョリーが語る『マイティ・ハート』
そもそもの始まりは、ブラッド・ピットが1冊の本を手に取ったことだった。「マイティ・ハート 新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死」──アンジェリーナ・ジョリー主演の『マイティ・ハート/愛と絆』の原作である。私生活でもブラッドのパートナーであるアンジェリーナ・ジョリーが、その著者であり、パール氏の妻であるマリアンヌ・パールを演じている。
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アンジェリーナは、本作への出演以前からマリアンヌと知り合いだった。
「初めは一緒に子供を遊ばせるだけだったの。数年前に出会ったんだけど、お互いシングルマザー同士だったから、『じゃあ、子供たちを連れてどこかに行きましょうよ』って。そういう関係から始まったし、これからもそれは変わりないわ。この作品は、私にとって非常に重要な作品で、しかもとても大切な友人を演じるってすごく不思議な感じ。まして、彼女の最も辛い時期を世間に伝え、私も愛して止まない小さな男の子(マリアンヌの息子・アダム)が将来この作品を観るのだから。でも、つまるところ私はこの映画をとても誇りに思うし、これが一番大事なことだけど、マリアンヌと友達になれてとても幸運だったと思っているわ」。
マリアンヌが妊娠5か月のときに、ダニエルが誘拐される。体調的にも心情的にも微妙な時期のマリアンヌを演じるにあたって、自身の妊娠・出産の経験が役立ったそうだ。
「もし妊娠の経験がなかったら、すごく大袈裟に演じてしまったり、妊婦がとらないような行動をとってしまうと思うの。妊婦である彼女がどうやってあの状況を切り抜けたかを思うと、それは想像を絶したわ。身重であるのは大変なことで、後半の数か月はストレスを減らし、睡眠とかもたくさんとらないといけないのに。でもマリアンヌは自分を哀れんだりしない。ダニエルが二度と家に戻らないかもしれないと考えることを自分自身に許さなかったに違いないわ」。
「何より、私はシャイロを出産したばかりで、特別な時期だったし、ブラッドとも特別な時期を過ごしていたから、役作りの過程でとても感情移入したの。赤ちゃんが産まれて、その子を飽きることなく眺めて、部屋の反対側にはその子の父親がいて…。そんな状況を誰かに取り上げられるとしたら、ものすごく頭に来るわ」。
「こんなことは初めてよ。仕事には真剣に取り組むけど、気張らない方なの。夜、眠れないなんて初めて」とマリアンヌを演じることに不安を感じていたと言う。
「撮影前夜はこんなことになったらどうしよう、あんなことになったらどうしようと焼きもきしっぱなし。とても尊敬しているマリアンヌを自分が演じられると考えているのが、申し訳なく思えたわ。人の心を動かすことなんてできないんじゃないかって。でも、彼女の誠意に大いに助けられたわ。それに、たとえ彼女を演じるのに私が相応しくなかったとしても、私自身の心に迷いがなく“やってみたい”と思ったから、運命の巡り合わせだと感じたの」。
国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) の親善大使を務めるなどチャリティ活動にも力を入れているアンジェリーナは本作の持つメッセージをこう語る。
「いまの世の中は人を簡単に判断しすぎるし、恐れを抱きすぎる。私たちは世界でいろいろなことが起こっているって理解するために、心を開く必要があるわ。急いで物事を判断すべきでない。人種や宗教で、人々を一様に判断すべきでは絶対にないの。ダニエル殺害を知ったほんの数日後に、マリアンヌはみんなの前でこう言うの。『私はパキスタンを愛しています。ダニエルのほかに10人の人が亡くなっているけれど、その人たちはみんなパキスタン人でした。つまりパキスタンの人たちも私たちと同様に苦しい思いをしているのです』。マリアンヌは本当に素晴らしい女性よ」。
© Getty Images/AFLO
《シネマカフェ編集部》
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