“探偵”にはちょっと足りない(?)竹内結子『チーム・バチスタ』で“しまった!”
東城大学付属病院では心臓手術、“バチスタ手術”の専門集団「チーム・バチスタ」が驚異的な成功率を誇っていた。しかし、3例続けて術中死が発生。病院は、この件について内部調査することを決定した。調査員として選ばれたのは、メスを持てない、外科手術の知識もない心療内科医の田口公子。果たして調査は順調に進むのか、そして、結末は? 海堂尊の同名ベストセラーの映画化『チーム・バチスタの栄光』で田口を演じた竹内結子に話を聞いた。
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田口公子という人は、医者の象徴である白衣を着ているにもかかわらず、どこかしら“医者”という枠組から外れているような女性。そうした外見と中身のギャップが大きい役に挑戦したことについて竹内さんは、「“女医”という、かっこいいイメージを投げ捨てることが課題だった」と言う。
「女医さんって素敵じゃないですか? 白衣を着て廊下をカツカツ歩くようなイメージがあったんです。でも、ツンツルテンのパンツとスリッポンみたいなサンダルで過ごしている公子を見て、なぜこういうキャラクターになってしまったのかと(笑)。監督と初めてお会いしたときに『一緒に田口を作っていきましょう』とおっしゃっていただいたので、『よろしくお願いします』と言って、撮影初日になったんです。でも直前になってものすごく悩んじゃったんです。“お医者さんってことは、それなりにしっかりしている人なんじゃないのかな”って。最初の撮影が、院長先生に呼ばれて院長室に行くシーンだったんですね。“まずは、深く考えずに、ただその場にいてみよう”と思って、普通にてくてく歩いていたら、それが監督のツボにはまったらしくて(笑)。『口がちょっと開いているくらい。それでいきましょう』と。『ここから軌道修正してくださるんじゃないんですか!?』って思ってたのに、『そのままで』って(笑)。いま思えば、あれが全ての始まりだった気がします」。
脚本では特にキャラクターの説明はなかった。
「セリフもないし、“外来から歩いていく田口、院長室”というト書きだけ。その道のりで、どんな人とすれ違って、どんな態度で接していくかという描写が全くなかったんですよ。だからこそ、まずは考えすぎずにって思ったのに…。“しまった!!”って(笑)。もしかしたら、もっとかっこいい女性になったかもしれないとも思ったんですが、最後まで観ると、こういう田口公子でよかったんですよね。だって机の上を見ると、ソフトボールをしている自分の写真が右と左に1枚ずつあって、本棚には“かっこいい女になるための条件”という本があるんですよ。自分(田口)の机をまじまじと眺めながら、“どういう人になりたいんだろ?”と、不思議な気分でした。ちょっといじめたくなるような感じでちょうどよかったのかな(笑)」。
そんな田口と、阿部寛演じる白鳥との掛け合いも魅力の一つである本作。撮影現場では「阿部さんと2人でずっと悩んでいた」と、田口=竹内さんの悩みは尽きなかった。
「私たち2人は、この作品をコメディだと思っていて、“チーム・バチスタ”の人たちは医療ミステリーだと思っていて。そこですでにかみ合っていないのに、白鳥と田口のセリフの掛け合いも、監督の指示で演じていくうちに、掛け合いにならなくなっていくんですよ…。『なんでこんなに会話にならないんだろう』というくらいのかみ合わなさ加減で、“こういうキャラクターなんだな”と実感する日々でした」。
調査を依頼されながらも、どこか頼りなく、驚くような視点で「チーム・バチスタ」の面々を見ている田口。サスペンス部分でありながら、“探偵”としてはあまりにも足りないのだ。
「田口を演じていて『向上心って何だろう』って思いました。田口は、いろんな人と会っていろんな話を聞いているのに、重要なポイントを見逃しすぎているような気がするんです。田口が『私なりに一生懸命やった』と思って提出した報告書を、白鳥先生に『ぺらっぺらだ!』ってやられてすごくショックでした。『仕事を一生懸命することって何だろう』と、ちょっと切なくなったんですよね。そういう意味で言えば、私自身のもどかしさと切り離すのが難しかったんです。忘れよう忘れようとする作業でした。どうしても意識が事件のヒントとなるようなところに行ってしまったり、本当に何気ない一言なんだけど、そこに反応してしまったり。監督が細かく『そうじゃなくて、こうしてください』とおっしゃっていたのは、私のそういう部分を落とすための作業だったんだと思います」。
観客の目線に一番近いところにいる田口公子を演じた竹内さん。悩みながらも魅力的なキャラクターに仕上がった。ところで田口は、最後には「かっこいい女」になれたのか? ぜひ劇場で確かめてほしい。
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