松田翔太「学校の先生に観て、語り合ってほしい」 命の重さ描く『イキガミ』公開
その紙が届いた者に残された時間は、24時間——。国家繁栄維持法という名の下に、死亡予告証=“逝紙(イキガミ)”を手渡された若者と彼らを見守る者たちが過ごす最後の時間を描いた『イキガミ』。連載開始以来、多くの共感を呼んだ同名マンガを映画化した本作が、9月27日(土)に公開初日を迎え、満員御礼の初回上映後に、主演の松田翔太をはじめ塚本高史、成海璃子、金井勇太、佐野和真、そして待望の映画化を果たした瀧本智行監督による舞台挨拶が行われた。
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“イキガミ”を配達する国家公務員・藤本賢吾役で、国家と自身の感情の間から生まれる葛藤を表現した松田さんは、プライベートの時間も役に入り込み、精神的に辛い思いをしたのだとか。この日も神妙な面持ちで「みなさんには、ひとりひとりが個性を示して、自分なりの生き方を恥じないでほしいと思います。社会が個人の価値観を決めていくのではなく、個人の価値観を大切にしていけば社会は変わっていくと思います」と観客に語りかけ、この映画にかける並々ならぬ思いをうかがわせた。
兄にイキガミが届く盲目の少女・飯塚さくらを演じた成海さんも、「とにかくリアルに、自分の感情にうそなく演じることが出来ました。みなさんが自身の中で『生きること』と『死ぬこと』について考えていただけたらと思います」と命の重さを伝えるコメント。兄・さとしを演じた山田孝之さんの印象を尋ねると、「あまり喋れなかったのですが、ずっと山田さんのことを見てました。“命を削ってる”感じがしてすごくいいなと思いました」と尊敬の眼差しで語った。
この日は残念ながら登壇出来なかった山田さん、風吹ジュンさんからはコメントが到着。山田さんからは「僕が一番伝えたいのは、当たり前とされるものが本当に正しいのか、自分なりに考えること。いろんな“当たり前”について考えるきっかけとなる映画になれば幸せです。あと、翔太くんと塚本くんと金井くんがかっこいいのと、璃子ちゃんがかわいいのと、佐野くんが危ないのが見どころです」との言葉が寄せられた。
尊敬する俳優の山田さんから一人だけ“危ない”と言われてしまった佐野さんは、「ぼくも“かっこいい”に入れてもらいたかったですね」と寂しげ。本作では普段の爽やかな印象から一転、母親に復讐を誓う引きこもりの青年・滝沢直樹を演じた。「この作品を初めて観たときにすごく泣きました」と作品の素晴らしさを伝えた。
キャストひとりひとりの本作への思い入れの強さがその表情から伝わってきた舞台挨拶。念願の公開を迎えた瀧本監督は、「新しい総理大臣は漫画好きを公言しているので、ぜひこの映画を観ていただいて、この国の舵取りを間違えないでいただけたらと思います。いつ辞めるか分かりませんが(笑)」と“国家繁栄維持法”が現実に成立しないことを祈った。
作品のテーマからもやや重い空気が流れる中、息の合ったコンビで笑いを誘ったのは、ストリートミュージシャン「コマツナ」を演じた塚本さんと金井さんの2人。森尾秀和役の塚本さんは「この映画を観て自分の大切な人を思い描き、もう少し大切にしようとか思っていただければ」と挨拶。この日は相方役の金井さんとの感動のコンビ再結成のはずだったが、「2人で歌ったのは一日だけですからね。俺らは『コマツナ』なのか? いや、野菜です(笑)」と自問自答。一方、「コマツナ」から一人だけスカウトされるも、デビュー直後にイキガミを受ける田辺翼を演じた金井さんは、腑に落ちない点を告白。「なぜスカウトが来るのが僕なんだ? どう考えても塚本さんだろと思っていたのですが、あそこだけ気持ちが入りませんでした…」と言うと、すかさず「それじゃ、俺死んじゃうだろ」と塚本さんのツッコミが入り、会場の笑いを誘った。劇中では、そんな金井さんの歌声も聴けるので、要チェック!
最後に、司会者から「もしも自分の一番大切な人にイキガミが届いたらどうする?」との質問が投げかけられると、全員が「本人のやりたいことを尊重し、手伝う」とのこと。ちなみに一番大切な人=奥さまという監督は「別の人といたいと言われたら、そのときはフェイドアウトします…」だそう。
松田さんが「『今日自分はどうして生きているんだろう』、『明日はどうやって生きていこう』と少しでも感じていただけたら嬉しい」と語る『イキガミ』は、全国東宝系にて公開中。
《シネマカフェ編集部》
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