トニー・レオン「監督も僕も、孔明のように生きたいけど出来ないタイプ(苦笑)」
天下統一を掲げる曹操軍に、劉備と孫権の連合軍が挑んだ、「三国志」におけるハイライトと言える「赤壁の戦い」をジョン・ウーが完全映画化! 豪華キャストを集結させ、製作費100億円をかけて描き出される中国歴史絵巻『レッドクリフ Part I』が11月1日(土)より公開される。本作で、劉備・孫権軍の指揮を執る智将・周瑜を演じたトニー・レオンに話を聞いた。
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撮影現場でのトニーのスタイル。心に秘める“静かな革命”
劇中、周瑜は劉備軍の天才軍師・孔明と友情を育んでいく。役作りの上でトニーが考えた周瑜像、そして孔明像は興味深い。
「まず監督から言われたのが、みなさんがよく知っている、史実に脚色の入った小説の『三国志演義』ではなく、あくまでも三国時代の史実に基づいてこの映画を撮るということ。そこで三国時代や周瑜に関する資料を集めたのですが、実はあまり多くの資料が残されていないんです。撮影に入るまでの時間が非常に短かったこともあり、現場に入って撮影をしながら役を徐々に作っていきました。そういう意味ではウォン・カーウァイの現場によく似ていますね。周瑜という人物は、何をするにもまず第一に周囲のことを考えるタイプの男です。道徳的な観念が強く、国のこと、部下のこと、妻のことなど様々な思いを背負っています。もうひとりの主人公で金城(武)さんが演じた孔明とは対照的です。孔明は常に自由で何かに捉われるということがありません。オシャレでユーモアがあって…。これはあくまで僕の考えですが、孔明は監督にとっての理想の人物像なのではないでしょうか。でも、現実には監督は周瑜なんですね(笑)。現場ではキャストやスタッフを気遣い、作品に対して全責任を負っている。監督は『こうありたい』という思いを孔明に投影したのではないでしょうか」。
現場での監督やスタッフとのやり取りでも、トニーと金城さんの役へのアプローチは対照的だったようだ。
「金城さんは本当にいろいろなアイディアを持っていて、何かを思いつくと監督と話をして、それを役に取り入れていくんです。実際に映画の中の孔明には、金城さん自身の様々なアイディアが反映されています。一方で私は、今回の現場に限らず監督に対して自分から何か提案するということはほとんどしません。もちろん自分なりの考えを持って役を作っていきますが、現場では監督の『こうしてほしい』という要望に100%近づけるように集中します。これは、デビュー当初にTVの仕事をやっていた頃からのスタイルです。理由は、もちろん俳優なら誰しも、自分なりに『こうやりたい』という思いは持っていると思いますが、当然ながらデビューしたての頃にそれを強く押し出すことは出来ません。そこで私は、静かに自分なりの考えを役に溶け込ませていくという、小さな“革命”を始めることにしたんです。何と言っても映画は監督のものです。だから監督の目指す方向に沿った形で何かが出来れば、と考えています」。
「日本の監督なら、岩井俊二監督、黒沢清監督と仕事がしてみたい」
個性的な登場人物たちが魅力的な本作。先ほど“ジョン・ウー=周瑜”説を唱えたが、自身に一番近いのは一体どのキャラクターなのだろうか?
「僕もやっぱり周瑜です(笑)。孔明に憧れ、彼みたいに自由に生きたいと思ってるのですが、『あぁ、しんどいな』と思いながらも周瑜を演じてしまうわけです(苦笑)。この映画の中で言うなら曹操も演じてみたい人物ですね。モラルなど一切関係なく、他人のことを省みずに目的のためには手段を選ばない、という人物像は非常に興味深いです」。
ジョン・ウーに、ウォン・カーウァイ、アン・リー、ホウ・シャオシェンなどこれまで仕事をしてきた巨匠たちの名を挙げ「彼らとの出会いによって多大な影響を受け、役者として大きな変化を遂げることが出来た」と語るトニー。今後、ハリウッドや日本の監督と仕事をする可能性は?
「一番の障害となるのは言葉でしょうが、それが乗り越えられるなら、喜んで各国の監督たちと仕事がしたいと思っています。日本の監督なら以前から岩井俊二監督の作品は大好きで、よく観ています。それから、最近では黒沢清監督ですね。『トウキョウソナタ』はカンヌ国際映画祭でも公開されていましたが、素晴らしい作品でした。将来、機会があればぜひ一緒にお仕事したいですね」。
終始、さわやかな笑顔でインタビューに答えてくれたトニー。今回の「Part I」に続き来年公開される「Part II」、そして日本の監督とのコラボレーションにも期待したい。
《シネマカフェ編集部》
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