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【アカデミー賞秒読み】変革の先駆者の内面をショーン・ペンが体現した『ミルク』

自由の国で「CHANGE」を合言葉に初の黒人大統領候補が選挙戦を勝ち抜き、見事勝利を収める30年前、一人の政治家が職務中に、かつて彼と同じ職にあった男の凶弾に倒れた。『ミルク』は同性愛者への差別や迫害が現在とは比べものにならないほど激しかった1970年代に、ゲイであることを公表してアメリカで初の公職に就いたハーヴィー・ミルクの最後の8年間を描いている。

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『ミルク』 -(C) 2008 Focus Features. All Rights Reserved.
『ミルク』 -(C) 2008 Focus Features. All Rights Reserved. 全 3 枚
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自由の国で「CHANGE」を合言葉に初の黒人大統領候補が選挙戦を勝ち抜き、見事勝利を収める30年前、一人の政治家が職務中に、かつて彼と同じ職にあった男の凶弾に倒れた。『ミルク』は同性愛者への差別や迫害が現在とは比べものにならないほど激しかった1970年代に、ゲイであることを公表してアメリカで初の公職に就いたハーヴィー・ミルクの最後の8年間を描いている。

映画は、ミルクたちによる同性愛者の公民権を巡る戦いを追いながらも、単なる政治ドラマにとどまらない。『マイ・プライベート・アイダホ』、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』などで、過去に傷を抱えた主人公たちの心の内面、周囲の人間とのつながりを見事に描き出してきたガス・ヴァン・サントの作品とあって、ハーヴィーが感じている恐怖や内面の弱さ、選挙戦に忙殺される中で恋人との間に少しずつ生じる溝など、人間ドラマの部分が丁寧に綴られる。

本作で2度目のオスカーを狙うショーン・ペンが、ユーモアと人間味あふれるハーヴィーを魅力的に演じている。ハーヴィーが、集会での演説の冒頭の挨拶として「I recruit you!(君たちを勧誘したい)」と若者たちに呼びかけるときに浮かべる、遊園地のアトラクションを前にした子供のような笑顔はただ、美しい。

脇を固める共演陣も、ペンの監督作『イントゥ・ザ・ワイルド』に主演したエミール・ハーシュ、本作でオスカー助演男優賞にノミネートされたジョシュ・ブローリンなど実力派が顔を揃えている。その瞳に孤独を湛えたハーヴィーの若き恋人役のディエゴ・ルナも素晴らしいが、個人的に最も印象に残ったのは、蜜月ののちにやがてハーヴィーのもとを去る元恋人を演じたジェームズ・フランコ。最後の夜明けを迎えたハーヴィーがかつての恋人と電話越しに交わす言葉が、優しく静かに観る者の心に染み込んでくる。

第81回アカデミー賞特集
http://www.cinemacafe.net/fes/academy2009/

《シネマカフェ編集部》

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