輝く! 男たちの競演 vol.3 “表現者”2人が奏でる協和音『路上のソリスト』
少し前の話になりますが、第81回アカデミー賞、度肝を抜かれました。何って、助演男優賞でのロバート・ダウニーJr.の『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でのノミネート。かなりブラックユーモアが効いたコメディなのですが、そもそも普通ならばアカデミーがノミネートを考えるような映画ではないのです。別に、バカにしているわけではありません。正直言って、嫌いじゃありません。でも、ご覧になった人なら分かるはず。不謹慎とユーモアのギリギリの線を行ったり来たり。下ネタ、差別ネタ満載で、ある意味では、笑いで世の中の理不尽をぶっ飛ばそうという気概に満ちているのです。
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
ただでさえ、コメディでのノミネートが難しいのはご承知の通り。しかも、オゲレツ系コメディ作品で見せた演技でノミネートされるとは、本当に例外中の例外です。いかにロバート・ダウニーJr.の演技がすごいものであったお分かりでしょう。弘法筆を選ばず、ですね。
最近の彼の出演作は、バラエティに富んでいますが、トップ俳優に返り咲いた感もあります。新作『路上のソリスト』もなかなか。共演しているのが、あの変幻自在な器用男ジェイミー・フォックスとくれば、一見の価値アリなのは言うまでもありません。
この物語は、実話に基づいたヒューマンドラマ。貧しい境遇にも負けず、大好きなチェロを学ぶため、ジュリアード音楽院にも通い、一度は将来を嘱望されたにもかかわらず、心の病に侵されて路上生活者となった男をフォックスが演じています。対するは、その男と出会い、深く関わっていくことで、自分自身と、そして人と関わっていくことを見つめ直すようになるジャーナスト。ロバートが扮しています。
コメディも、シリアスも“どーんと来い”な二人が生み出すハーモニーは絶妙。人を助けようとしながらも、結果的にコントロールしそうになってしまうジャーナリストの挫折と、表現者なのに自分を見失ったチェリストのもどかしさと失望が、絶妙なコントラストをもって胸に迫ってきます。記者と音楽家が近づいたかに見えて、また離れていくそんな様子をも、見事に“不協和音”として奏でているあたりにも唸らされます。
実話を映画化したこと、実在の人物たちを演じることの責任と覚悟を感じさせる迫真の演技も、さすが。きっと満足できるはずですよ。
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