世界の映画館vol.34〜アジアの旅〜 中国・成都、筆談で映画チケットを買う
成都は1,000万人都市である。たいてい、これくらいの大きな都市だと外国人の数も多い気がする。あくまでイメージにすぎないのだが…。そして、本当にイメージにすぎなかった。日曜日の昼間の成都繁華街は、お祭りかと思うほどの人であふれているのだが、全て中国人である。半日近く街の写真を撮りながら、ぶらついていたのだが、見かけた欧米人は4名だった。
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
シネコンタイプの映画館も同じく4つ見かけた。どの映画館も中国映画とハリウッド映画のどちらも上映している。映画の作品によって値段も違う。ハリウッド映画が高く、中国映画が安いというわけでもないようで、ならば客の入りによってなのかどうか、このあたりは不明である。ともかく僕が観たときは15元(約225円)から20元程度(約300円)に分かれていた。
僕は中国のコメディ映画を観ることにする。きっとこの受付も英語は通じないだろう。ここ数日、成都を歩いてきて身についた感覚である。僕が何かを頼むときは全て筆談で行っていた。例えば食堂では「麻婆豆腐」と漢字で書いて注文している。ちなみに麻婆豆腐は成都発祥の料理である。ご飯を一緒に欲しい場合、「ウィズ ライス」と英語で言っても通じない。「白飯」と書いて追加注文するのだ。日本人は漢字に慣れ親しんでいるのでまだ何とかなるが、これは欧米人にとっては辛い。それがこの街で外国人を見かけない大きな理由の一つなのかもしれない。
日本にない漢字を使った映画のタイトルをメモ帳にそのまま書き写し、その横に「6:10」と映画の始まる時間を書いて窓口で出す。指定席のようだが、どこでもいい。しかし、受付の女性は丁寧に僕に中国語で問いかけている。
「どこの席がいい?」
とでも言っているのだろうが、「前」と「後」の中国語の発音さえ僕にはわからないのだ。これも筆談で「前」などと書けばいいのだが、そうすると更に次の質問がやってきそうな気がする。直接、パソコンの座席表示画面に触れることができればいいが、刑務所の面会室のようなガラス越しの受付ではそれもできない。
「どこでもいい。ど・こ・で・も・い・い」
あくまで筆談ではなく、日本語で言い、何とかチケットを手に入れた。
200名程度の劇場内では無料映画が始まっていた。チベット民族に関する政府が製作したドキュメンタリー映画のようである。成都と言えばラサに近いので、きっとチベット民族に対する意識も高い地域だと思う。成都に住む中国人たちが、この映画をどう観ているのだろうか気になったのだが、そうは言っても、チケットの買い方さえまともにできない僕では取材しようもない。結局、周囲に座っている中国人の様子を見ているだけである。それなりにシリアスな顔をして興味深く観ていた。まぁ、その後に、コメディ映画を観ているときの表情に比べれば…といった話なので、あまり信用性はないのだけれど。
《photo / text:ishiko》
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