『必死剣鳥刺し』 関めぐみ×村上淳インタビュー 異彩を放つ“悪”と“存在感”の正体は——?
時代小説の妙手、藤沢周平の作品群の中でも、ファンの間で高い人気を誇る「隠し剣」シリーズの中の一篇を平山秀幸監督の手で映画化した『必死剣鳥刺し』。武士道、己、仁義宿命——様々な “荷物”を背負った一人の剣客の姿が現代に生きる我々に“生”を訴えかけるが、物語の中で全ての事件の“元凶”として存在するのが海坂藩主・右京太夫と彼の愛妾であり、その立場を利用して政道へと介入しようとする連子(れんこ)。これを演じるのは様々な作品での“怪演”が光る村上淳と、ドラマに、映画に存在感を放つ関めぐみ。2人に話を聞いた。
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関さんにとっては時代劇初挑戦となった本作。まずは所作の稽古から始まった。
関:時代劇ということで、楽しみではありました。ただ、想像以上に大変だろうな、と思えればまだ楽だったかもしれませんが、全く想像すら出来ない状態でした。所作の勉強については、やはりやってみて初めて分かるという部分が多かったです。『あぁ、綺麗に歩くというのはこんなに汗をかくほど大変なことだったんだ』とか(笑)。
村上:間違ったことしたら先生に、扇子でペチっと叩かれて…というわけではないんですけど(笑)。ただ、正しい所作で動きつつ、芝居で個性をしっかりとつけるというのは難しかったですね。『姿勢、姿勢』って気にしてると監督から『本番!』って声が飛んでくるわけですよ。同時に自分の中から『姿勢ばかり気にしてちゃ芝居はできねぇぜ』って声が聞こえてきて(笑)」。
関:村上さんの扇子さばきがすごいんですよ(笑)。
政道にあれこれと口出しをする連子とそれを唯々諾々と受け入れる右京太夫。2人のやり取りにはどこか、軽妙さと残酷さが同居するように感じられるが、どのように関係性を築いていったのだろうか?
村上:僕は、何か大きな動きを作るというよりも、まずは連子ありき。関係性という意味では関さんの比重がすごく大きかった。
関:連子が右京太夫のそばにいるのは『好きだから離れられない』なんて理由ではなく、“権力”という強さを持っているから。自分には動かす力はないけど、動かせる力のある人がそばにいる。だから自分もあれこれと考えよう——そんな風に思っていたんじゃないかなと考えていました。
冷酷非情ながらも、“悪意”というよりは素で思ったとおりのことを口にし、実行させる。この連子の凄まじさ…いや、女優・関めぐみが持つこの強烈な存在感とは一体何なのか?
関:…(苦笑)。私、お芝居に関しては、あまり考えて行動するタイプではなくて、“芝居を作る”という感覚はないんです。せりふを覚えて、なぜそうなったのかを考えて、口に出して言ってみる。そこで違うと思ったら変えてみる、という感じです。今回の連子に関しては、監督がサロメ(※聖書に登場する女性)が理想と仰っていて、本を贈ってくださったんです。読んでみて、『これか!』と思うと恐ろしかったのですが、ただ、現場でせりふを言ってみてもすごく穏やかなんです。『打ち首にしろ』とか酷いこと言っているのに…。
村上:嫌な女で非道なんだけど、 “純度”が高いんですよね。少女のように無垢というか。僕が現場で対面していて『あぁ、これは』と思ったのはその屈託のなさ。そこにこの物語の悲しさがあるんですが、その芝居になのか、それとも関めぐみになのか、そこに程よい湿度と渇きがある。もしこの芝居の湿度がもう少し高かったら、もっと嫌な奴になってたと思う。その加減が絶妙で“ヒール”というよりは“少女”。マリー・アントワネットみたいな感じ。『パン寄こせ、パン寄こせってうるさい! お菓子食べればいいじゃない!』って(笑)。
そうした存在感、いや“異物感” というべきか? そういう意味では村上さんも本作はもちろん、様々な作品で異彩を放っているが…。なんせ、少し前に放送されたTVドラマ(「魔術」TBS系)では、一見、村上さんと分からないインド人の役までこなしているのだから。
村上:日々、何が欲しいのか、どういたいのか、何がいらないのか…そういう無関係なところがキャメラの前に立ったときに見られてるような気がするんですよ。具体的にではなく、映し出されるというか…。
では、関さんから見た村上さんは?
関:滲み出る遊び心とリズム感… 音楽が流れているようでした(笑)。
《シネマカフェ編集部》
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