クリスティン・ベル インタビュー 正統派の殻を破る『バーレスク』“悪徳”の魅力
クリスティーナ・アギレラ、シェールという音楽界におけるスターが、その圧倒的な歌声とパフォーマンスで魅せる映画『バーレスク』。だが、注目はこの2人だけにあらず。絶妙なスパイスを持ったサブキャラクターたちが確かな存在感と共に物語に、ステージに、緩急と彩りを与えてくれている。中でも注目は、海外ドラマファンにはおなじみのこの人、クリスティン・ベル。ドラマ「ヴェロニカ・マーズ」でタイトルロールを射止め日本でも多くの人の知るところとなり、その後も「HEROES/ヒーローズ」に出演。そしていま、最も熱い「ゴシップガール」ではナレーションを担当するなどその評価と人気はうなぎのぼり! そんな彼女が本作では、主人公のアリを目の敵にする先輩ダンサーとして底意地の悪い女の子を好演している。クリスティン自身、ビジュアルも含め今回の役柄をかなり楽しんだようで…。
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「“悪い子”の要素は誰しも持っているもの。私にも? もちろんあるわ!」
アギレラ演じるアリが田舎から一念発起して都会にやって来て夢を掴もうと奮闘するのに対し、クリスティン演じるニッキは典型的ないじめっ子先輩キャラでおまけにアルコール中毒。役柄へのアプローチを彼女はこう説明する。
「“悪い子”の要素というのは誰しも持ってるものだと思うわ。だから、こういう役を演じるときに考えるのは、どうやってその部分を引き出し、引き立てていくかということ。ニッキみたいなタイプは、ただ悪いというよりは不安を抱えているタイプ。きっと周りと見渡せば、幼稚園や公園の砂場で同じようなタイプの子がいたはずよ。みんなの注目を集めたくて“良い子”として頑張っているけど、一度おもちゃを取り上げられると癇癪を起こしてギャアっと本性を出す子。ニッキーってそういう幼稚さを持った女の子なのね。その点を強調していったわ」。
「誰しも」という言葉が出たが、生き馬の目を抜くような激しいハリウッドの世界で女優として活動する中で、、クリスティン自身にもそういう要素が?
「その通り(笑)! この仕事はいつも誰かと比べられながら競争しているようなものだもの、私にもそういう要素はあるわね。でも、それをどういう形で出すかってことが大事なの。この世界で生きる中で“自己愛”というのは確実に必要なものだと思う。周りには綺麗な子、才能のある子はいっぱいいて、あっちにも、こっちにも…って不安になるものだしね。でもそこで、ニッキがストレートに生身の自分を出すのに対して、私自身はなるべく周囲との軋轢を生まない形で競争に身を置くことができていると思うわ」。
その言葉は謙虚さからだけでなく、確実に自分の中にある“何か”にしっかりと自信を持っているからこそ発せられるようにも感じられる。今回の役柄自体は決して観ている人に好かれるタイプはないが、クリスティン自身は演じることを楽しんでるようにも見えたが…。
「そりゃ、すごく楽しかったわよ(笑)! こういう破滅型の人間というのは通常の自分にないものをたくさん持ち合わせているから、やりがいがあるの。これまでにない新しい自分の一面を発見できたというのもあるわ。最初にこのニッキという役をもらったとき、少し私が演じるには官能的過ぎるような気がしたの。これまでの役は——素の自分も含めてそうなんだけど、どちらかというと正統的で、露出もあまり多くなくて、“女”の部分をあまり前面に出すことがなかったし。でも実際にやってみたら、内面に隠されていた“悪徳”の部分が自分でもすごく気に入ったわ。胸を強調する衣裳も含めてすごく楽しくて、一歩新しい道を踏み出した感じよ」。
クリスティーナ・アギレラは…「異星人の肺を持った女!」
今回の役を演じるに当たって、ヴェロニカ・マーズという正統派の主人公の役柄のイメージを覆そうという意識もあったのでは?
「そこまで思いつめるほど、『ヴェロニカ・マーズ』は大ヒットしてないわよ(苦笑)。でも、あの作品もヴェロニカという役も私にとっては本当に本当に大好きで、大切なものなの。いまでもあの役を演じ続けていたいって思うくらいにね。加えてヴェロニカというのは、素の自分にもかなり近かった。いまじゃ取材のためにこんな風に着飾ってるけど、普段はあんな感じよ(笑)。そういう意味で、ヴェロニカのイメージを壊そうとして葛藤する、というよりも自分の本質とは全く違うタイプの役を演じるという意味での苦労はあったわね」。
ちなみにクリスティンも、アギレラも1980年生まれで今年30歳。クリスティーナ・アギレラという、稀有な歌の才能を持った同世代の人物を彼女はこれまでどのように見ていたのだろう? そして、同じ作品に出演しての感想は?
「ひとつ言えるのは、彼女は異星人の肺を持つ女だってこと(笑)! とにかく信じられない才能と肺活量で、常に同じ世代の人たちの中でも先頭を切って走っている人として見てきたわ。そんな彼女と共演するってことに初めはすごくドキドキしてたのよ。ただ、彼女にとっても演じることは初めての経験で不安に思っている部分も多かったみたいで…。だから、演じることに関しては私が“先生”のような役割で、逆に歌の部分に関しては彼女に教えてもらう、ということで良い関係が築けたの。レコーディングを彼女の家にあるスタジオで行ったときは興奮したわ。『あぁ、ここであの魔法のような音が作られるんだわ…』って(笑)。彼女が『こうやってマイクを使って』とか教えてくれたりして、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしながら夢のような時間を過ごせたわ。演技と音楽という面で、ひとつの車に同乗して、2人で代わる代わる運転席に座ってアクセルを踏むような感覚だった。違う世界にいるけれど、共通項を感じながら楽しく仕事ができたわ」。
官能的で退廃的、舞台上で輝き、色褪せ、アルコールと共に堕ちてゆく——そんな“悪女”の魅力をたっぷりと感じてほしい。
《シネマカフェ編集部》
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