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北川景子インタビュー 若き頃の苦悩と挫折、いまは「恵まれた場所にいる」

「ダイエットをして腕とか脚が徐々に細くなっていくと、自分の体が矢沢あいさんの画に近づいていくような気がして。そんな快感、満足感があったんですよね…」。この一言から、女優・北川景子が、どれほど『パラダイス・キス』の世界観に惚れ込んでいるか伝わってくる。これまで少女漫画は「興味がなかった」という彼女だからこそ、なおのこと原作の持つ魅力、パワーを再確認させられる。甘い蜜を求めて花から花へ飛び回る蝶のように、映画・ドラマ・CMと八面六臂に活躍する彼女が、新たに踏み込んだ少女漫画の世界──そこから紐解かれる北川景子の新しい一面に迫った。

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『パラダイス・キス』北川景子 photo:YOSHIKO YODA
『パラダイス・キス』北川景子 photo:YOSHIKO YODA 全 8 枚
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「ダイエットをして腕とか脚が徐々に細くなっていくと、自分の体が矢沢あいさんの画に近づいていくような気がして。そんな快感、満足感があったんですよね…」。この一言から、女優・北川景子が、どれほど『パラダイス・キス』の世界観に惚れ込んでいるか伝わってくる。これまで少女漫画は「興味がなかった」という彼女だからこそ、なおのこと原作の持つ魅力、パワーを再確認させられる。甘い蜜を求めて花から花へ飛び回る蝶のように、映画・ドラマ・CMと八面六臂に活躍する彼女が、新たに踏み込んだ少女漫画の世界──そこから紐解かれる北川景子の新しい一面に迫った。

17歳で芸能界デビュー、自身の経験が役に重なる

「少女漫画はあまり読んだことはなかったんですが、矢沢あいさんの存在は有名なので知っていて、この役を演じるにあたって初めて原作を読ませてもらいました。まず画に驚きましたね。少女漫画というと全員が同じ顔だと思っていたんですけど、パラキスは全員違っていて、ファッションも雑誌から飛び出してきたようなスタイリング。画を見ているだけで楽しい漫画ってあるんだなって」。北川さんがそれまでに抱いていた既成概念を打ち破り、さらに「原作の本質を活かしていこうと思った」と、役作りにおいても新しいアプローチにたどり着いた。
「小説には当たり前だけれど画がないので、小説が原作の映画のときは脚本をオリジナルとして捉えているんです。ただ今回は漫画が原作。原作ファンが抱いている紫(ゆかり)のイメージ、ジョージのイメージがすでに漫画の中にある。そのイメージ(=ビジュアル)にできるだけ近づくことが必要でした。髪型や洋服も忠実に再現されていると思います」。もちろん、キャラクターの見た目に加え、紫やジョージたちが集うアトリエも漫画から飛び出したような空間だ。

「クッションひとつとっても原作のとおり。最初にあのアトリエを見たときはキャスト全員が、わーっ! と感嘆していました(笑)。セットでの撮影は3〜4日と短かったけれど、主要キャストが揃うシーンでもあって。睡眠時間がなくて撮影自体はキツいのに、なんだかキャンプみたいで楽しかったんですよね。また、どのキャラクターを演じるにもダイエットが必要で、みんなで“パラキスダイエット”をしていました。差し入れを我慢したり、皆で支え合って各々のキャラクターに近づこうとしていました」。

映画の中心となる舞台・アトリエから次々と生まれるお洒落な洋服たち。北川さんがこの映画で着た衣装は40着以上に及ぶ。監督からは「洋服を格好良く着こなしてほしい」という強い要望があり、『プラダを着た悪魔』『セックス・アンド・ザ・シティ』のような、見ているだけでワクワクさせられる、テンションが上がる、ポップでカラフルな世界観を目指したそう。モデルとしての経験がある北川さんだからこそ、この映画でファッションがどれだけ大きな役割を担っているかをひしひしと感じ、同時に「初めて雑誌の撮影に行ったときのこと、初めてのファッションショーのウォーキング・リハーサルのことを思い出しましたね」と昔をふり返る。
「モデルとして活動していた当時を思い出したり、失敗した記憶がよみがえってきたりしました。紫の性格は、自分の17歳の頃にも似ていて、共感する部分は多かったですね。似ているのは…受験前の一生懸命頑張っているのに上手くいかないイライラを先生や両親にぶつけたり、学校では先生の言うことを聞かなくちゃいけない、家では両親の言うことを聞かなくちゃいけない、けれど自我が芽生えてきて、自分では大人だと思っているアンバランスなところとか、ですね(笑)」。

優しい男・徳森くん&俺様タイプ・ジョージに「個人的には徳森くんが好き」

北川さんの芸能界デビューは17歳のとき。芸能界に対する憧れはまったくなく、その点もヒロインの紫と重なる。その頃は、何かになりたいというよりも、大学に入ることが自分の夢だと思い込んでいたそうで、そこに向かって努力をするものの「どんどん違う方向に進んでいっているのではないか…?」という不安感、「何かが違うんじゃないか…?」という違和感を感じていたと、過去の自分の心の内を話し出す。
「紫と同じで、大学受験をしようと勉強ばかりしていて、部活もせずに予備校に通っていました。勉強、勉強の日々。それなのに、中学ぐらいまで調子がよかった成績は高校ではなかなか上がらなくて、高校に入ってからというもの、めっきり上手く行かなくなった。勉強ばかりしている生活は、もしかしたら間違いなのかもしれない…、間違ったことを自分の夢だと思い込んでいるのかもしれない…。そんなときにスカウトされたんです。環境が変われば自分の本当の道が開けるとも思っていたので、そのときのスカウトがもしもサーカス団だったら、今頃はサーカス団にいたかもしれないですね(笑)」。

転機を迎えた17歳の少女は、ファッション雑誌「Seventeen」(集英社刊)のモデルとテレビドラマで、同じ日に華々しくデビューする。「これが私の道だったんだ!」と意気揚々とかけ出したが、その先には「挫折」の二文字が待ち受けていた──。
「最初は意外に簡単だなって思っていたんですが、とんでもない! 勉強以上に大変な世界に入ってしまったな…と、大きな挫折を味わいました。そこから救い出してくれたのはファンの方々の存在です。『景子ちゃんのメイクを参考にしています』、『景子ちゃんのファションを見て洋服を買いました』、『ドラマを見て子供たちが元気をもらっています』という温かな言葉が綴られた手紙をもらって、ああ、自分は必要とされているんだ、誰かの役に立っているんだ、恵まれた場所にいるんだと実感して。そのとき、頑張らなきゃ! と思ったんですよね」。

そう語る北川さんの表情はなんとも穏やかで美しい。人の役に立ちたくて、子供の頃はお医者さんになりたかったそうで、そんなかつて抱いた夢は、感動を伝える女優という仕事を通じて叶えられたと言えるだろう。そして、女優のやり甲斐とは何かをたずねて返ってきたこの一言「女優業としてはもちろん、誰かの役に立つことが私の生きるモチベーションなんです」。美しさだけじゃない、スタイルの良さだけじゃない、この人柄が彼女をスターダムに押し上げているのだ。

最後にどうしても聞いておきたかったのは、『パラキス』のキャラクターで好きなタイプは誰なのか?
「個人的には徳森くんが好きですね。紫は徳森くんに片想いをしていて、ジョージと出会って彼に惹かれていくけれど、紫にとってジョージは自分の可能性に気づかせてくれた人、自分が考えたことのない道を開かせてくれた人、人生を変えてくれた人だから気持ちが傾いていたと思うんです。でも、そういう状況抜きで考えたら、私はジョージみたいな人を好きにならないと思う。『自分の可能性を信じなくちゃ何も始まらない』というジョージのセリフは、一番好きなんですけどね(笑)」。

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