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長谷川博己インタビュー 役とともに変化していく自分、素顔は「ない」

柔らかい口調と優しい笑みの中にもどこか“凶暴さ”を感じさせる…役柄のイメージから穿ち過ぎだろうか? だが、「セカンドバージン」に「鈴木先生」と人間のドロドロとした内面を抉り出し、愛憎をむき出しにしたドラマであれだけの存在感を放った男が単に“大人しいいい人”であるはずがない。長谷川博己、34歳。まもなく公開となる映画版『セカンドバージン』で17歳年上の女性との不倫の愛に落ちる鈴木行を再び演じている。映画初出演となった本作について、役柄についてなど語ってもらったが、長谷川さん自身の内面に話が及ぶと「僕自身の性格というものはないと思います」とも。果たしてその言葉が意味するところは——?

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『セカンドバージン』長谷川博己  photo:Naoki Kurozu
『セカンドバージン』長谷川博己  photo:Naoki Kurozu 全 6 枚
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柔らかい口調と優しい笑みの中にもどこか“凶暴さ”を感じさせる…役柄のイメージから穿ち過ぎだろうか? だが、「セカンドバージン」に「鈴木先生」と人間のドロドロとした内面を抉り出し、愛憎をむき出しにしたドラマであれだけの存在感を放った男が単に“大人しいいい人”であるはずがない。長谷川博己、34歳。まもなく公開となる映画版『セカンドバージン』で17歳年上の女性との不倫の愛に落ちる鈴木行を再び演じている。映画初出演となった本作について、役柄についてなど語ってもらったが、長谷川さん自身の内面に話が及ぶと「僕自身の性格というものはないと思います」とも。果たしてその言葉が意味するところは——?

真っ直ぐに貫き通すこと、求められたのは男の“脆さ”

官僚を辞職したのち、経済評論家、IT会社の社長として時代の寵児となる行。出版プロデューサー・るい(鈴木京香)との出会いは彼が初めて知る愛をもたらすが、一方で彼女との出会いによる心の変化がその後の彼の人生の選択にも大きな影響を及ぼすことに。長谷川さんは、常にエリートとして歩んできた行の持つ“弱さ”についてこう語る。
「最初に脚本を読んだときから、ガラスのような脆さがあるという印象はありましたね。大石(静/脚本)さんが(男を)崩したいのかな、と。儚く崩れていくものを求められているのかなと思いました」。

哀しく堕ちていく男——。長谷川さんはそんな行の姿に「男たちへのメッセージを感じた」とも言う。
「実際に演じているときは意識しなかったんですが、観終わって感じましたね。脆さがあると言いましたが、それでも行は愛する女性のために突き進んだ。こうと決めたら動じない、全てが真っ直ぐなんです。それは儚いし、哀しいことではあるけれど、でも信念は突き通したと思う。いまの時代、そういう潔さを持って貫く行のような男はなかなかいないですよね。『男たち、もっとしっかりしろよ』という思いが込められているのかなと思ったんです。特にるいの笑顔を見たときにね」。

演じる上でここまで深く役柄の心情、内面を読み取る一方で、役柄から離れた素の“長谷川博己”について尋ねると「素というものが自分にはないんです。役によって変わっていきたいですね」とこともなげに語る。「分からない」ではなく「ない」というのが興味深いが…。
「毎回、演じた役に引きずられますし、それが自分の経験にもなってる。役として演じつつも演技じゃないんですよね。そこまで役を演じていると、全てが実際に自分が経験したことのように感じられるんです。例えばキレやすい役をやってると、普段の生活の中で急に『何だてめぇこの野郎!』となって『うわ、おれこんなこと言っちゃうんだ?』って気づいたり(笑)。舞台が終わって役がなくなると、自分の精神状態がどこに行っていいか分からなくなって落ち込んだり、不安になったりすることもありますよ。だから次の役にシフトチェンジしないといけない。やっぱりそうなると“普段の生活”ってものがないんですよね。ただ、そうやっていろんな役柄をやって、どんどん体の中に入ってきて血となり骨となっているからこそ、今回の映画版でも、あえて自分でドラマと違うものにしようと思わなくても、また違ったものになるのかな、とも思います」。

決断? 運命? 険しき役者の道に進んだ理由とは…

そんな長谷川さんだが、大学時代までは継続的に演技をしたり、専門的に習うこともなかった。就職の時期になって「俳優業に就職活動して」(長谷川さん)、文学座に研究生として入所して演技の道に進むことに。いったいどんな経緯で就職を控えた大学生が演じることを生業にしようと決意したのか?
「それこそ小学校の発表会でも、中学校で部活の勧誘で女装させられて芝居したときもそうだったんですが、僕は人前でセリフをしゃべるというのは割とすんなりできたんです。人が作った言葉で何かを出す、発散し表現するというのが自然にできた。そこに集中して没頭し、我を忘れるような状態になれたんです。大学で就職するっていう時期に、芝居をやってる知り合いから『役者がひとり逃げちゃったから』と頼まれて演じることになったときもそう。自分にできそうな気がして、それでこの道でやってみようって思ったんです。もちろん、できない部分もたくさんあって(苦笑)、そこで何が必要かを考えて、ちゃんと勉強してみようと」。

文学座で研究生、研修生を経て、準座員から座員へ。どこか飄々とふり返る長谷川さんの口調は覚悟や決断の“重み”を感じさせない。不安はなかったのだろうか?
「ありましたよ、もちろん(笑)。でも30までは好きなことやろうと思って腹決めて入りました。2年目に研修生に上がって、どこまでやれるか分からないけど、ひとつひとつがいい経験になるから、これを仕事にできるように頑張ろうって思っていたときに、ある外国人の演出家のワークショップで準主演の役柄をいただけたんです。そうしたらその公演を見ていた方から別の話をいただいて、そうした繰り返しがつながっていったんです」。
最初に決断し、飛び込んだからこそいまがあるわけだが、その決断の淵でこの世界を諦めていく人の方が圧倒的に多数であるのも事実だ。
「そこで飛び込めるかどうか——それは何をやるにしてもそうですが、やった人勝ちですよね。どこかでそういう決断をしない限り、自分の人生は変わらないですから。ただ、いま考えると、そうするようにしかならなかったのかなとも思うんです」。

最後にもうひとつ。ドラマと映画で2度にわたって鈴木行という男になりきった長谷川さんから見て、女性とはどういう存在?
「やっぱり強いんだなと感じますね。女性はどんな状況でも幸せになる方法を知ってて、どんな状況でも守れる強さがあるんだなと。男は突き進むしかないのかな。僕自身、普段は周りから女性的でサラリとしていると言われることもあります。自分にも女性的な部分はあるなと思いますが、この作品に出ているときは、自分は男だなと感じさせられましたね」。

一見、サラリとしつつも、この天性の演技者の内で燃える荒々しい炎をスクリーンで感じ取ってほしい。



特集「スキャンダラスでちょっと危険なメロドラマ」
http://www.cinemacafe.net/ad/secondvirgin/

《photo / text:Naoki Kurozu》

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