12歳にして名優、ダコタ・ゴヨ 『リアル・スティール』で見つけた新たな夢
「観客を夢中にさせる、才能を超えたマジカルな何かを持った“特別な少年”」──言わずと知れた世界のヒットメイカー、スティーブン・スピルバーグに見そめられ、彼が11年間温め続けてきた作品『リアル・スティール』に大抜擢されたカナダ出身の若き俳優、ダコタ・ゴヨ。透き通った淡いティールブルーの瞳、照れくさそうなのにどこか人懐こい仕草、そして言葉では表現できない人を惹き付ける何かがある! と感じずにはいられない特別なオーラ…。12歳にして名優と絶賛を浴びる“特別な少年”は一体どんな少年なのだろう。
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ダコタ・ゴヨが『リアル・スティール』で演じるのは、最愛の母を亡くし、かつて自分たちを捨てた父と暮らし始める少年・マックス。負け犬ヒーロー的な父・チャーリー(ヒュー・ジャックマン)を、父親として、またボクサーとして再起させる重要かつ難しいキャラクターだ。初めての仕事は5歳の時。以後、様々な子役を演じてきた彼にとって、マックスを演じることは「とても興奮する経験だったんだ!」と目を輝かせる。
「マックスはとても気に入っているキャラクターだよ! これまで演じてきたキャラクターとは全然違ってね、ちょっぴり生意気でぶしつけだけど(笑)、たくましくて自立したところもあるんだ。僕自身はたくさんの人と関わることが好きな性格だからマックスほど自立してはいないけれど…。でも、ビデオゲームが大好きっていうのは共通しているかな。せっかく日本に来たから、秋葉原にも行ってみたいんだ!」。旧型ロボット・ATOMと運命的に出会い、コンピューターを使いこなしてATOMを改造するマックスを演じる姿と、普段ゲームに夢中になっているダコタ・ゴヨの姿が自然と重なって見えるのは彼の演技力あってこそ。マックスというキャラクターをどれだけ理解しているのかは、彼の大人顔負けのコメントからも伝わってくる。
「僕がマックスを好きだなって思うのは、彼の心の内面、感情の部分に惹かれたからなんだ。さっき言ったマックスの性格の中にはチャーリーらしさもあって、自立したところ、たくましいところはチャーリーに似ているし、心の温かさや優しさはきっとお母さんに似たんじゃないかなって。映画の中でチャーリーが(マックスの)お母さんの話をするシーンがあるんだけど、その言葉から温かくて優しい人物(母親)だったっていうのが分かるんだ。あと、人は何もかも一人でするのではなく誰かと一緒にすることも必要だということをマックスがチャーリーに伝えようとしている、そういうマックスも好きなんだよね」。
『リアル・スティール』の魅力を、自分が感じたものを、ただ一生懸命に語る彼の姿を見ていると「かわいい」から「かっこいい」に印象が変わっていく。けれど、ロボットの話題に移ると今度は「やんちゃ」な男の子に! この映画に登場するメインのロボットは19種類がデザインされ、そのうちの4体はなんと実際のロボットとして造られている。それらを初めて現場で目にしたときは「もう、夢のようだったよ! だってロボットは僕ら子供の夢だからね!」と、ダコタ・ゴヨ流のロボット解説が始まる。
「アンブッシュとノイジー・ボーイとATOMは実際にロボットが造られたんだけれど、ノイジー・ボーイはものすごく大きくて、手の部分に装飾があってさ、色もパープルで格好いいんだ。アンブッシュも大きくてゴツくて、僕の大好きなブルーの色だったのも気に入っていた。そしてATOM! 謙虚なATOMはアンブッシュやノイジー・ボーイに比べると体は小さいけれど、心のあるロボットだと感じたんだ。だからワールドプレミアでATOMと再会して、日本の記者会見でもまた会うことができて、本当に嬉しいよ!」。そんなふうに嬉しさを素直に言葉にできるのは、撮影現場が楽しさと興奮に満ちあふれていたからに違いない。
マックスがATOMにボクシングを教えるシーンや一緒にダンスを躍るシーンは、やはり特別な想い出として刻まれていると話す。それまでは全くダンスに興味はなくやったこともなかったが、「ダンスは1週間ぐらい1日2時間程度練習をしたよ。ダンスの中にボクシングのパンチの動きとかあったりして、すごく楽しかった。いままで出来なかったことが出来るようになるのが嬉しくて、いまでは演技と同じぐらいダンスも好きになっちゃったよ!」。すっかりダンスの魅力にはまっているのだとか。もちろん、試合が始まる前のリングでATOMとマックスがダンスを披露するシーンは、観客側も思わず踊りたくなるような、ワクワクするシーンに仕上がっている。ダコタ・ゴヨの見せ場のひとつだ。
マックス役を通じて、様々な体験を味わったダコタ・ゴヨだが、ロボットよりもダンスよりも彼を興奮させたのは、やはりスティーブン・スピルバーグ(製作)の存在。「スティーブン・スピルバーグ作品に出ていること自体、僕にとっては信じられないことなんだ!」と身を乗り出し、小さな身体に秘めた熱く大きな夢を語りだす。それは──「これからも演技も続けていきたいと思っているよ。けれど、いつか監督業にもチャレンジしてみたいと思っているんだ。小さな頃からいろいろな監督と仕事をさせてもらってきた中で、彼らからいろいろなこと…カメラアングルとか映画を作る秘訣とか、どういう見せ方があるのかを教えてもらった。今回の現場でもショーン・レヴィ監督や撮影監督のマウロ・フィオーレ、照明スタッフからいろいろなことを学ばせてもらった。だから(その経験を活かして)僕もいつか監督になって彼らのように映画を撮ってみたいんだ」。
夢はきっと実現する、彼ならきっと…。そんな期待を胸に、まずは『リアル・スティール』でのダコタ・ゴヨの名演をしっかりとその目に焼き付けてほしい。
(text/photo:Rie Shintani)
《シネマカフェ編集部》
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