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シャーリーズ・セロン インタビュー 「絵空事じゃない、本物の女性を演じたい」

永遠の美しさに執着するあまり、義理の娘である王女の命を狙う。グリム童話の「白雪姫」の女王がとる行動に共感を抱くのは難しい。だが、数奇な運命に翻弄される白雪姫を闘うヒロインとして描く『スノーホワイト』でシャーリーズ・セロンが演じた女王・ラヴェンナの心情は、どこか理解できるような気がする。それは何故なのか。来日したシャーリーズに話を聞いた。インタビュー・ルームに集まった記者が全員女性なのを見て、「女子会みたい。こういうの大好きよ」と豪快に笑う彼女は、飾らない調子で本音を語ってくれた。

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永遠の美しさに執着するあまり、義理の娘である王女の命を狙う。グリム童話の「白雪姫」の女王がとる行動に共感を抱くのは難しい。だが、数奇な運命に翻弄される白雪姫を闘うヒロインとして描く『スノーホワイト』でシャーリーズ・セロンが演じた女王・ラヴェンナの心情は、どこか理解できるような気がする。それは何故なのか。来日したシャーリーズに話を聞いた。インタビュー・ルームに集まった記者が全員女性なのを見て、「女子会みたい。こういうの大好きよ」と豪快に笑う彼女は、飾らない調子で本音を語ってくれた。

若さと美貌への強迫観念について「分かる」

女優・シャーリーズの素晴らしさは、ゴージャスな衣裳に身を包んだ威圧的なラヴェンナ、ほぼすっぴんのジャージ姿を披露する『ヤング≒アダルト』で演じたメイビス、という両極端なキャラクターのどちらにも、同じだけのリアリティを持たせるところだ。
「私にとってリアリティはとても重要。俳優として目指すものだし、いつも追究してるわ」。
殊に、非現実的な世界に生きるラヴェンナのようなキャラクターを演じる場合、撮影初日は特別な心持ちだという。
「パニックよ(笑)。撮影初日、というか第1週目はいつも大変ね。いつも『第1週目の分は撮り直してほしい』って冗談で言うくらい。どうやって演じるべきか、楽器を演奏するのに正しいリズムを探っていく感じに似ているわ」。

誰もが知る「鏡よ、鏡」の台詞も、実は初日に撮影したが、これには苦労したという。
「おとぎ話だし、魔法使いだし、と適当にお茶を濁すことは絶対にしたくなかった。でも、どうしたらリアルに伝わるか、悩んだわ。あまりにも有名な台詞でしょ? 『マイ・ネーム・イズ・ボンド。ジェームズ・ボンド』みたいに(笑)。私は、あの鏡はラヴェンナの意識であり、狂気を象徴するものだと思っているの。もしかしたら、自分の望んでいないことを言われるかもしれない。だから、堂々と『鏡よ、鏡』と言う代わりに、ラヴェンナの自信の揺らぎ、恐怖感、不安を出してみたの。そこでリアル感が出たと思う」。

若い娘たちの生気を吸い取ることで不老を保つラヴェンナは、鏡に「スノーホワイトの心臓を口にすれば、永遠の若さと美貌が手に入る」と告げられる。その言葉に取り憑かれ、身を滅ぼしていくラヴェンナの強迫観念について、シャーリーズは「分かる」と言う。
「同意はしないし、正当化もしないけど、理解できるわ。彼女はとても邪悪で、求めるものを手に入れるためには、どんな汚い手段も辞さない。その必死さが、逆に悲劇的なのよ。外見がすべて、という女性は実社会にもいるでしょう。自分の価値を全部外見に賭けている。虚栄心だけじゃなく、とにかく若くいたい、美しくありたいと思っている人たちって本当の幸せを理解していないと思う。私やあなたたちとは違うのよね。『スノーホワイト』は、こうなってはいけない、という警告の物語。クリステン・スチュワートが演じるスノーホワイトは、善い心を持って、平和を求め、人に優しくすることの大切さを体現している。男性の弱さを描いた点も面白いと思うわ。スノーホワイトと共に闘うハンツマンのように強い男が脆い内面を抱えているのよ」。

「いつもドレスを着てる女性なんていないわ」

劇中、鳥の心臓に食らいつく場面もあるが、「あれはブドウだったのよ」とタネ明かし。「セットに行ってみたら、鳥の死骸がプレートの上に置いてあった。“殺しちゃったの!?”と動揺したわ。私、動物が大好きだから、“実行犯はクビよ!”と思いながら、よく見ると、もちろん本物じゃなかった(笑)。とても精巧に作られていたでしょう。たったワンショットのためだけに! 心臓はブドウで作ってあって、血に見立てた赤かぶのジュースに浸してあったの。まあまあ、おいしかったかな(笑)」。

それにしても、本人は竹を割ったように気持ちのいい性格なのに、悪い女を演じると、どうしてこうもはまるのだろう?
「悪は社会で容認されるものじゃないし、誰もが良い行動を取ろうと心がけるけど、役として与えられたなら、自由に悪を演じていいでしょ? だから、すごくカタルシスがあるのよ。特に、そのキャラクターが本物だと思えるときは楽しい。ただ意地悪だったり、わめいたりするだけじゃなく、どうしてこんな行動をとるのか理解できたら、ずっとパワフルに演じられる。“いるいる! こういう人”と思える女性を演じたい。いつもドレスを着てる女性なんていないわ。おしゃれをすればゴージャスになるし、家に帰ればジャージ姿でくつろぐ。絵空事のキャラクターじゃない、本物の女性を演じたいのよ」。

もしも、何でも手に入る鏡があったら…?

実生活では3月に男の子の養子を迎えたばかり。「新米のママなの。母親になって、より大きな疑問を投げかけるようになったわ。人間について、社会について、もっと理解したいと思うようになった。息子のために、子供向けの作品にも出たいわね。いまは、あの子が40歳になるまで観られないような作品にばかり出てるし(笑)、ひどい人間も演じてる(笑)。息子はアニメが好きで、私の声を判別できるから、そういう作品で善人を演じて、『素敵なママ』と思われたい(笑)。でも、女優としてはやっぱり、人間の暗い面に惹かれる。だから、そういう作品もやっていきたいわ」。

最後に、何でも教えてくれる鏡が手に入ったら、どうするか? という質問が出ると、「できるだけ早く捨てる!」と即答。「うちのバスルームの鏡は十分真実を語ってくれるから。もうこれ以上知りたくない(笑)」。

《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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